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幕間
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「大丈夫かな、渡瀬のやつ。トラウマとかにならなければいいけど」
「大丈夫大丈夫! ああ見えて、莉子ちゃんは強い子だよ、きっとね」
力強く如月はそう断言した。どういう根拠でそう判断したのかは知らないが、彼女なりの、渡瀬へのフォローだろうか。
そのまま、僕たちは二人で並んで帰る。高校に入ってからも変わらない、この帰り道。時間が止まってしまっているかのような、同じ光景。
「結局、この一週間で『神様』についての情報は全く手に入ってないな。というより、『神様』が本当に動いているのかも怪しいけど」
「どうなんだろうねー。もしかしたら、いつの間にか『神様』は目的を終えていたりしてね。はっはっは、貴様らは気付くのが遅すぎたのだ! みたいな」
「だとしたら、別に僕たちが何かしなくても達成できる目的だったってことだろ? わざわざ六人に手紙送りつけといてそれはあんまりだなあ」
別にそんなオチでも僕としては問題ないが、どうせならもっと一工夫欲しい。僕らを巻き込んだからには、もっとはっきりと、僕らにも分かる終わりをくれないと困る。
「――だったら、『神様』を当てちゃえばいいんだよ」
「当てる?」
首を傾げる僕に、如月が指を一本立てて、愉快そうに言った。
「そう、みんなの前で推理するの。犯人はお前だー! ならぬ、『神様』はお前だー! ってやつだね」
「……まあそうできたら苦労はしないけどさ。さっきも言ったように、情報が――」
「情報なら、もう出尽くしたよ」
如月は、立てた指をゆっくりとこちらに向け、そうはっきりと言った。まるで、自分には既に答えが出ているとでも言いた気に。
「まさか……お前には、もう『神様』の正体が分かっているのか?」
「確証は出来ない。でも、推測は出来る。その正体も……その、目的も」
ふざけてはいない。彼女の口調は本気だ。自分の中に、一つの答えを持っている。それが、目を見れば伝わってくる。
だが、同時に、その目はどこか悲しく、切ない。
「……誰なんだ。お前の思っている、『神様』は……」
「優君にも、きっと分かるはず。逃げずにみんなとしっかり向き合ってきた、優君なら」
僕が逃げていない?
そんなことはない。僕はいつだって逃げていた。面倒事から、現実から、人間関係から、僕は逃げ続けていた。
「違うよ。優君は、本当はそんな人間じゃないんだ。もっと優しくて、社交的な人なんだよ」
僕という人間を語れる人間は、僕以外にいない。僕が見た僕が、本当の僕だ。僕は僕でしかなく、僕以外の何者でもない。
「優君なら、出来るはず。そんな優君がいたから、今の私があるんだから」
「今の、如月……?」
「ねえお願い。そろそろ目を覚ましてよ、優君。自分を責めないで。悪いのは、全部私なんだから……」
ノイズ。ノイズ。ノイズ。
脳が破壊されそうな感覚。悪いのは如月? 僕? 僕のせいだ。悪いのは僕だ。お前だ。孤独を選んだのはお前だ。リセットしたのはお前だ。全てを壊したのはお前だ……!
記憶が錯綜する。情報が入り乱れる。何もかもが繋がり、何もかもが離れる。一部で生まれ、一部で消え行く。何かが残り、何かが去る。
――神様に、お願いすればいいんだよ!
――神様は、私を試したのでしょうね。
――俺は、神様を憎む。
――私、神様が羨ましかったの。
――神様って、本当にいるんでしょうか。
みんなが、神様を待っていた。神様は、みんなを待っていた。
そこに、神様はいた。
「……そうか、分かった」
『神様』。その正体。その目的。何がしたかったのか、何をさせたかったのか、なぜ僕たちだったのか。
全部、分かった。
気付くと、如月との分かれ道に差し掛かっていた。彼女は首を少し傾けて、切なそうに、微かな笑みを浮かべた。
「そっか。優君にも、分かったんだね」
「ああ。それと……全部、思い出したんだ」
僕は如月に向き合う。しかし、その目を直視することは出来ない。今の僕には、そんな権利は、資格は、ない。
「如月、お前は――」
「それ以上言わないで」
如月は僕の言葉を遮り、背を向けた。笑っているのか、泣いているのか、怒っているのか、それはもう分からない。
僕は、いつだって分かってなかったのだ。
「じゃあね、優君。――バイバイ」
そのまま、如月は振り返らなかった。僕はその背中を、見えなくなるまで見送っていた。
かつて僕が救い、
かつて僕が傷つけた、
あの愛しい背中を。
「大丈夫大丈夫! ああ見えて、莉子ちゃんは強い子だよ、きっとね」
力強く如月はそう断言した。どういう根拠でそう判断したのかは知らないが、彼女なりの、渡瀬へのフォローだろうか。
そのまま、僕たちは二人で並んで帰る。高校に入ってからも変わらない、この帰り道。時間が止まってしまっているかのような、同じ光景。
「結局、この一週間で『神様』についての情報は全く手に入ってないな。というより、『神様』が本当に動いているのかも怪しいけど」
「どうなんだろうねー。もしかしたら、いつの間にか『神様』は目的を終えていたりしてね。はっはっは、貴様らは気付くのが遅すぎたのだ! みたいな」
「だとしたら、別に僕たちが何かしなくても達成できる目的だったってことだろ? わざわざ六人に手紙送りつけといてそれはあんまりだなあ」
別にそんなオチでも僕としては問題ないが、どうせならもっと一工夫欲しい。僕らを巻き込んだからには、もっとはっきりと、僕らにも分かる終わりをくれないと困る。
「――だったら、『神様』を当てちゃえばいいんだよ」
「当てる?」
首を傾げる僕に、如月が指を一本立てて、愉快そうに言った。
「そう、みんなの前で推理するの。犯人はお前だー! ならぬ、『神様』はお前だー! ってやつだね」
「……まあそうできたら苦労はしないけどさ。さっきも言ったように、情報が――」
「情報なら、もう出尽くしたよ」
如月は、立てた指をゆっくりとこちらに向け、そうはっきりと言った。まるで、自分には既に答えが出ているとでも言いた気に。
「まさか……お前には、もう『神様』の正体が分かっているのか?」
「確証は出来ない。でも、推測は出来る。その正体も……その、目的も」
ふざけてはいない。彼女の口調は本気だ。自分の中に、一つの答えを持っている。それが、目を見れば伝わってくる。
だが、同時に、その目はどこか悲しく、切ない。
「……誰なんだ。お前の思っている、『神様』は……」
「優君にも、きっと分かるはず。逃げずにみんなとしっかり向き合ってきた、優君なら」
僕が逃げていない?
そんなことはない。僕はいつだって逃げていた。面倒事から、現実から、人間関係から、僕は逃げ続けていた。
「違うよ。優君は、本当はそんな人間じゃないんだ。もっと優しくて、社交的な人なんだよ」
僕という人間を語れる人間は、僕以外にいない。僕が見た僕が、本当の僕だ。僕は僕でしかなく、僕以外の何者でもない。
「優君なら、出来るはず。そんな優君がいたから、今の私があるんだから」
「今の、如月……?」
「ねえお願い。そろそろ目を覚ましてよ、優君。自分を責めないで。悪いのは、全部私なんだから……」
ノイズ。ノイズ。ノイズ。
脳が破壊されそうな感覚。悪いのは如月? 僕? 僕のせいだ。悪いのは僕だ。お前だ。孤独を選んだのはお前だ。リセットしたのはお前だ。全てを壊したのはお前だ……!
記憶が錯綜する。情報が入り乱れる。何もかもが繋がり、何もかもが離れる。一部で生まれ、一部で消え行く。何かが残り、何かが去る。
――神様に、お願いすればいいんだよ!
――神様は、私を試したのでしょうね。
――俺は、神様を憎む。
――私、神様が羨ましかったの。
――神様って、本当にいるんでしょうか。
みんなが、神様を待っていた。神様は、みんなを待っていた。
そこに、神様はいた。
「……そうか、分かった」
『神様』。その正体。その目的。何がしたかったのか、何をさせたかったのか、なぜ僕たちだったのか。
全部、分かった。
気付くと、如月との分かれ道に差し掛かっていた。彼女は首を少し傾けて、切なそうに、微かな笑みを浮かべた。
「そっか。優君にも、分かったんだね」
「ああ。それと……全部、思い出したんだ」
僕は如月に向き合う。しかし、その目を直視することは出来ない。今の僕には、そんな権利は、資格は、ない。
「如月、お前は――」
「それ以上言わないで」
如月は僕の言葉を遮り、背を向けた。笑っているのか、泣いているのか、怒っているのか、それはもう分からない。
僕は、いつだって分かってなかったのだ。
「じゃあね、優君。――バイバイ」
そのまま、如月は振り返らなかった。僕はその背中を、見えなくなるまで見送っていた。
かつて僕が救い、
かつて僕が傷つけた、
あの愛しい背中を。
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