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沈船村楽園神殿
エピローグ 楽園の神殿
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「わざわざここまでお見送りして下さるなんて」
「いいえ、庚さん。あなた方はこの村の恩人です。このくらいは当然です」
恩人・・・ねえ。
自分の住む家を上から下まで瓦礫の山にされたのに、真っ直ぐそう言ってくれる岬さん
「住む家でしたら、使用人の方々含め村に住む家に当面は居候させていただくことになりそうです」
どの家でも、是非来て欲しいと引く手あまただったそう・・・また人としての格の違いを見せつけられた気が・・・
「? どうしました?」
「いえ、勝手にダメージを受けただけです、お気遣いなく」気遣われると余計つらくなる・・・
「落ち着いたら亜江島祓い所の方々には、今度は観光でこの村に遊びに来て欲しいですね」
私の身の周りが落ち着くことなんてあるんだろうか?
そんなことを話しているとバスが来た。
ちなみに宮上さんと園村さんは先に車で戻ってる。彼への検査などを行うには、様々な手続きが必要だそう。
だから私と宇羅のふたりが、村に残って事後処理をすることになった。
疲れた・・・今回伏せとかないといけないことがいろいろあるから、その辺りに神経使ったから余計に苦労した・・・
「游理さ~ん。バス行っちゃいますよ~!?」
宇羅の声が響く。こいつ本当に元気だな。少しはこっちに分けて欲しい。
まあいいや。これでこの村ともお別れだし。
「じゃあ、岬さん。私たちはこれで失礼します」
「またいつかこの村に来た時にはよろしくお願いしますねっ!」
「ええ。きっとまた会えますよ」
来た時と同じく、バスの中に私たち以外の乗客はいなかった。
あの時はスマホから変な声がして、挙句煙が出るはで大変だった・・・
「! 宇羅」
「何です、藪から棒に奇声出して」
「その、スマホ、そう私のスマホ」
煙出した後マジカル冷蔵庫に入れられたあのスマホ、また宇羅が預かってたはずだけど。
「どう、その、故障とかしてないよね?」
「・・・・・・・・・」
何で実物を取り出すこともせずにだんまりなんだよ、怖いだろ。
「游理さん・・・・きっと経費で落ちますよ! 多分」
「・・・・・・・・・・・・・・あ、そ」
買い換えたばかりだったのに・・・・店頭で散々迷ってやっと手に入れたのに・・・・
「・・・あ、見てください游理さん。湖が見えますよ」
宇羅の声に目を向けると、バスの窓には亥頃湖が広がっていた。
来る時はあの騒ぎで気付かなかったけど、こうして見ると確かに神秘的な湖だな。
「蔵記様」
結局沈船鱗、あの祠の神体は見つからなかった。
幽霊屋敷「沈船」方舟の中で神に祈りを捧げる神殿。彼や彼と一体化した村の人々はその消滅と共に消え去ったんだと思う。
あるいは、
混沌とした世の向こう側、彼岸の楽園にあの人たちは辿り着いたのかも。
「游理さん?」
「・・・・何でもない」
最後に見た湖の光景。
その水面に何か巨大なものの影がうつっていた。
その傍に米粒程の大きさの人が何人も見えた気がしたから。
またいつか沈船村を訪れることになると、私は確信した。
「いいえ、庚さん。あなた方はこの村の恩人です。このくらいは当然です」
恩人・・・ねえ。
自分の住む家を上から下まで瓦礫の山にされたのに、真っ直ぐそう言ってくれる岬さん
「住む家でしたら、使用人の方々含め村に住む家に当面は居候させていただくことになりそうです」
どの家でも、是非来て欲しいと引く手あまただったそう・・・また人としての格の違いを見せつけられた気が・・・
「? どうしました?」
「いえ、勝手にダメージを受けただけです、お気遣いなく」気遣われると余計つらくなる・・・
「落ち着いたら亜江島祓い所の方々には、今度は観光でこの村に遊びに来て欲しいですね」
私の身の周りが落ち着くことなんてあるんだろうか?
そんなことを話しているとバスが来た。
ちなみに宮上さんと園村さんは先に車で戻ってる。彼への検査などを行うには、様々な手続きが必要だそう。
だから私と宇羅のふたりが、村に残って事後処理をすることになった。
疲れた・・・今回伏せとかないといけないことがいろいろあるから、その辺りに神経使ったから余計に苦労した・・・
「游理さ~ん。バス行っちゃいますよ~!?」
宇羅の声が響く。こいつ本当に元気だな。少しはこっちに分けて欲しい。
まあいいや。これでこの村ともお別れだし。
「じゃあ、岬さん。私たちはこれで失礼します」
「またいつかこの村に来た時にはよろしくお願いしますねっ!」
「ええ。きっとまた会えますよ」
来た時と同じく、バスの中に私たち以外の乗客はいなかった。
あの時はスマホから変な声がして、挙句煙が出るはで大変だった・・・
「! 宇羅」
「何です、藪から棒に奇声出して」
「その、スマホ、そう私のスマホ」
煙出した後マジカル冷蔵庫に入れられたあのスマホ、また宇羅が預かってたはずだけど。
「どう、その、故障とかしてないよね?」
「・・・・・・・・・」
何で実物を取り出すこともせずにだんまりなんだよ、怖いだろ。
「游理さん・・・・きっと経費で落ちますよ! 多分」
「・・・・・・・・・・・・・・あ、そ」
買い換えたばかりだったのに・・・・店頭で散々迷ってやっと手に入れたのに・・・・
「・・・あ、見てください游理さん。湖が見えますよ」
宇羅の声に目を向けると、バスの窓には亥頃湖が広がっていた。
来る時はあの騒ぎで気付かなかったけど、こうして見ると確かに神秘的な湖だな。
「蔵記様」
結局沈船鱗、あの祠の神体は見つからなかった。
幽霊屋敷「沈船」方舟の中で神に祈りを捧げる神殿。彼や彼と一体化した村の人々はその消滅と共に消え去ったんだと思う。
あるいは、
混沌とした世の向こう側、彼岸の楽園にあの人たちは辿り着いたのかも。
「游理さん?」
「・・・・何でもない」
最後に見た湖の光景。
その水面に何か巨大なものの影がうつっていた。
その傍に米粒程の大きさの人が何人も見えた気がしたから。
またいつか沈船村を訪れることになると、私は確信した。
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