悪役令嬢と七つの大罪

美雨音ハル

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本編

第10話 本当のこと

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「……ま! ……さま!」

「……う」

「ロザリア様!」

 ほっぺたを何かに舐められているようなくすぐったさを感じて、ロザリアはハッと目を覚ました。

「大丈夫ですか、ロザリア様!」

「きゅぅううん!」

 聞き覚えのある声と、聞いたことのない鳴き声。
 ロザリアはぼんやりする目をこすった。
 視界がはっきりしてくると、薄暗い教室の天井と、アリスの顔、そしてもふもふ真っ白な何かが、自分を覗き込んでいるのが見えた。

「え……?」

 ロザリアはぎょっとして、慌てて身を起こした。
 その瞬間、ズキリと頭が痛む。

「あ、急に動かない方がいいです。もしかしたら、脳震盪起こしちゃったのかも」

 顔をしかめるロザリアに、アリスが横になっていることを勧める。
 ロザリアは首を振って、大丈夫、と答えた。

「私、一体何を……」

 そう呟いて、ハッとあたりを見回す。

「そうだ、あの男は……!」

 先ほどまで対峙していた不気味な男のことを思い出して、ロザリアは慌てた。
 けれどアリスは不思議そうな顔で首をかしげた。

「男? 男なんていませんでしたよ」

「本当に? 私、さっき、視界が真っ白になって、そうしたらそこで、みたことのない男にあった気がしたの……」

 アリスは眉を寄せた。

「すごく大きな物音がして、慌てて来てみたら、天球儀が壊れていて、ロザリア様が倒れていたんです。人は他に誰もいなかったような……」

「……」

「きっと頭をぶつけちゃったんだと思うんですけど……」

 ロザリアは頭をさすった。
 大きなたんこぶができている。
 そして目の前に転がる、先ほどまで宙に浮いていた天球儀たち。
 時刻は夕方のまま。
 オレンジ色の光が室内に満ちている。

 心配そうなアリス。

「きゅぅううん」

 そして、謎の真っ白もふもふわんこ。

「っていうか、これは一体……」

 ──どういう状況なの?
 
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