悪役令嬢と七つの大罪

美雨音ハル

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本編

第19話 アリスの心配事

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「他の子供たちも、シスターも一緒だったし、そんなにさみしくなかった。でもね、やっぱりすんごい貧乏だったんだよね、うちの孤児院」

 院長先生がいい人でさ、とアリスは続けた。

「どんな子どもも引き取るの。だからいつも孤児院は人でいっぱい。でもお金は全然ないの」

 ロザリアは自分とは全く違う境遇の、それでもどこか自分と似ている部分を持つ少女の話に耳を傾けた。

「だから私ね、将来魔導士になって、いっぱいお金を稼ぐんだ! それでお金持ちになるのが夢なの! 魔導士って、女性でも活躍できる職業だからさ!」

 そしたら、孤児院の人たちにももっといい環境を用意してあげられるし! と意気込んでいう。

「お金を稼げるなら、ちょっとくらい辛いことがあったって、頑張れる。お金のため! って思ったら、力も湧いてくるわけ!」

 意外なアリスの告白に、ロザリアは目を丸くした。

「……なんて、やっぱり不純すぎるよね」

 えへへ、とアリスは頬をかいて笑った。

「……ううん、そんなことない」

 ロザリアは首を振った。

「私なんかより、ずっと立派だわ。アリスは……アリスはすごいわ」

 ロザリアは心から思った。
 この子は、なんて強い子なのだろう、と。
 アリスは照れたように笑った。

「えっと、それでね、私が何を言いたいかっていうと……別に目的がなんだろうが、それは個人のかってというか、好きにすればいいんじゃないかなって」

 アリスはそういって笑った。

「幸いなことに、この学園に逃げ込んだら、六年はでられないからさ。時間なんていくらでもあるし。悩む時間だけなら、いっぱいあるよ」

「きゅん!」

「ほら、真白も言ってる」

 子犬は何も知らずに、しっぽを振り回して、ロザリアの頬をなめた。

「っくすぐったい……」

 ロザリアはアリスの話を聞いて、少しだけ元気が出た。

「それに、あんなひどい人たちのことで悩むなんて、時間の無駄! もっと楽しいこと考えよう」

 そういってアリスは笑った。
 ロザリアも、こくんと頷いた。

「ありがとう、アリスちゃん。ちょっと元気でたよ」

「……そっか。ならよかったよ」

 ほっぺを舐めてくるもふもふ犬を引き離して、ふとつぶやく。

「それにしても……この犬、なんだか変じゃない?」

 ロザリアがそうつぶやくと、アリスはぎく、と身を強張らせた。

「手足が大きいし、前よりかなり大きくなってるような……?」

 そうなのだ。
 前回みたときよりも、明らかに真白の体が大きくなっている。
 子犬の成長は早いといえども、なんだかこの成長スピードはおかしい。
 だって、もう子犬とは思えないほどに大きくなっているのだ。
 しかも足が大きくて、爪も鋭いような……。
 顔も狼みたいに鋭くなってきたし……。
 
「それに、なんだか背中がおかし……」

 ロザリアはぎょっとしてしまった。
 真白の背中がなんだかぼこっとしているな、と思っていたら、その部分に翼のようなものが生えていたからだ。

「え!? なんか生えてる!?」

 ロザリアが驚いていうと、アリスがきまづそうに指と指を突き合わせた。

「それが……なんだかこの子、成長スピード異常だし、背中に翼があるしで、なんか普通の犬じゃないっぽいんだよね……」

 確かに、犬に翼は生えない。
 ロザリアは重くなった真白を抱きながら、なんとも言えない気持ちになった。

「もしかしてこの子って……」

 この先は言いたくない。
 アリスも同じようだった。

「まあ、もうちょっと大きくなってから考えようかな、なんて……」

 はは、と乾いた笑みをこぼす。

「魔獣、なんじゃ」

「言わないで~!」

 アリスは耳を塞いでぶんぶん頭を振る。

「でも魔獣だったら、早く先生に言わないと」

「だって、そんなことしたら処分されちゃうかもだよ……」

「確かに」

 魔獣というのは、普通の獣よりも知能や攻撃力が高い獣のことだ。人々が魔力を持つように、動物たちの中にも生れながらにして魔力が高いものがいる。そういう動物は、大抵はずる賢くなり、人を襲って食べ物などを奪おうとする。
 調教次第では、人の良きパートナーになることもあるので、魔獣が出たらまずは魔獣管理局に報告しなければならないのだ。
 そこから処分するかどうか決まるらしい。

「なんとか隠して、休みの日にどこか遠くへ逃がしにいく……?」

「そ、そうだよね」

 アリスは真白と離れるのがよほど辛いらしく涙目になっている。

「きゅぅううん?」

 真白はしっぽを振って、首を傾げていた。

「ま、まあ、また今度考えよう」

 ロザリアは慰めるようにアリスにそういった。

「そだね……」

 ロザリアに、また心配事が増えてしまったのだった。 
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