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本編
第30話 選択
しおりを挟む『このままでいいのか?』
ふとロザリアの脳内に、男の声が響いた。
夢にいつも出てくる、あの男の声だ。
ロザリアは気がつくと、いつもの闇の中に立っていた。
玉座には、退屈そうに男が座っている。
──だって、私じゃ何もできない。それならいっそ、このままここを去ったほうが……。
ロザリアは拳を強く握った。
『お前は本当にそれでいいのか?』
男はなおも問いかける。
ロザリアは顔を上げて、叫んだ。
「私は、好きで学園に来たわけでも、魔導士になりたいわけでもない! 好きで公爵の子どもに生まれたわけでも、こんな顔になったわけでも!」
『……』
「どうして!? どうして私ばかりこんなひどい目にあうの!?」
怒りの矛先をどこへ向ければいいかわからなくて、ロザリアは絶叫し続けた。
「どうして私はあの男の子どもに生まれてきたの! どうして人は生まれてくる環境を選べないの! どうして大人は誰も助けてくれないの!?」
どうして人は生まれや顔で人を差別するの。
どうしてみんな、私を悪役だと決めつけるの。
どうしてアリスは裏切ったの?
どうして、どうして。
「いやっ! もういやぁあっ!」
ロザリアは絶叫して、暗闇の中でくずおれた。
地面に拳を叩きつけて、涙を流す。
「みんな……周りが悪いんだわ! 私のせいじゃない!!!」
だって、みんなは幸せそうだ。
ごく普通に、笑って暮らしているではないか。
何も悩みなどない、というように。
ロザリアが不幸なのは、生まれてくる環境がひどかったからなのだ。
この状況を変えるにはもう、一度全てをまっさらにしないといけないのだ。
「周りが変われば、私だって……」
ロザリアは声を上げて泣いた。
泣いて、泣いて、涙が枯れるまで。
一体どれほどそうしていただろうか。
『見ろ』
男はロザリアにそう告げた。
ロザリアが顔を上げると、あの闘技場に戻っていた。
「あ……」
アリスと目があった。
アリスは泣いていた。
ごめんなさい
「え……?」
アリスの唇が震えるようにそう紡いだ。
ごめんなさい、ごめんなさい……。
(アリスちゃん……?)
アリスの目はうつろだった。
それから彼女も、地面にくずおれる。
(まさか……)
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