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序曲
第1話
しおりを挟む大きな爆発は身体を引き裂く感覚をもたらすが、その痛みを感じることはない。
死を悟った僕が死ぬ直前に思ったことだ。
そして今。
死んだと思った僕はベッドで知らない女の人に抱かれている。
豊満な身体つきがもたらすやら……柔らかさを身に感じながらとても困惑している。
頭で考えてるはずなのに噛んでいることからそのことが伝われば幸いだ。
抱かれている。もちろんいやらしい意味じゃない。
だって僕は赤ん坊なんだから。
僕を腕に抱きかかえている女性は眠っている。
周りを見れば部屋の扉には侍女が立っている。部屋自体もなかなか凝った装飾にあふれている。
筋肉のない腕を掲げれば、指が〇ークビッツよりも小さく、二の腕はまるで手羽元みたい。
食べ物で例えるとカニバリズムみたいだよね。僕の心はカーニバってるし、頭は状況にフェスティバっている。
というかもうこの人、母親ではないだろうか?こんな幼い赤子を他人に預けるような親だったら、なんか嫌だし。
「あら?起きたのね」
「……───」
身じろぎをしたせいか、母さんを起こしてしまった。
これ幸いと声を出そうと思ったが、残念なことに掠れた息しか出なかった。
「ステラたちを呼んできてもらえる?」
「かしこまりました」
「……?」
侍女は母さんに声を掛けられると部屋を出ていく。
ステラたち?誰を呼びに行ったんだろう?
「これから会うのはあなたの家族。ステラお姉ちゃんとグエスパパよ」
「私はママのノウア。よろしくねクラウス」
息子に自己紹介する母親は珍しいと思いながら、家族の到着を待っていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
魔力、それは普遍的なエネルギー。
この世界には魔力が存在する。炎の球を打ち出すとか氷の柱を飛ばすとかそういうのじゃない。
身体や武具に魔力を付与して戦うというずいぶんアナログなやり方で、物理が主体。そう言った戦い方をするものたちを包括して《魔剣士》と呼称されている。
マルクス王国エテルナ領が僕の家。
そんな我がエテルナ家は田舎貴族ではあるものの、マルクス王国領に属し先祖代々王国を守護する魔剣士である騎士を輩出してきた。
父さんも若い頃は王都で騎士をやっていたみたいだが、そういう貴族はめちゃくちゃありふれているみたいで特別珍しいことはないみたい。
ただこのエテルナ家には一つ、例外がいる。
それはステラ姉さんだ。
なんでも武の才能にあふれているとかで、マルクス王族の長女と比べられていたとかで注目を集めていた。
そんな優秀な姉ともなると、どうしても姉弟で比べられることが多くなりその反動で僕はやさぐれてしまい無事家出……
することもなく、平々凡々な弟人生を送っていた。
今も良く「クラウスはお姉ちゃんと比べるとまだまだだな!」とか「もう少し鍛錬を増やしたらどうだ?」とか父さんに言われるが、実際には何の意味もない。
なぜなら、僕の方が強いから。
この世界はまだ発展途上だ。文化も文明も戦い方である武術さえも。
僕の身体は子どもだが頭脳はまぁまぁ大人、それに前世の地球時代ではパイロットだったし。
ゆえに文明が先鋭化した前世の記憶がある僕にとってこの世界で生きることは、これ以上ない大きなアドバンテージになる。
でもそんなことを言ったところで信じてもらえないし、言うつもりもない。
大体実力をあけすけにするリスクが大きすぎる。
まず家を継がされる。面倒だ。
第二に注目を浴びる。面倒だ。
第三に実験対象になる。嫌だ。
第四に国から脅威とみなされる。家族にまで被害が行くだろう。
などなど考えれば悪いこと尽くしの人生になってしまう恐れがある。
でもこの世界には魔力が、僕には前世での知識がある。
それを有効に使わない手はない。
バレないように生きるのはそう難しいことではない。優秀な姉さんがいるならなおのこと。
それに赤子として覚醒した時から魔力を効率的に扱うことだけを考えて生きてきた。
まったく未知のエネルギー。人の力では可能にできないことをいともたやすく可能にする魔力。
魅力的だった。人間は集団で生きているが、魔力さえあれば一人で群に打ち勝つことも可能だ。
だから徹底的に考えた。どうすれば最大効率で最大効果を発揮できるのかと。
寝ることもなく考え、母乳を飲みながらも思索し、訓練の最中も思案した。
そして見つけ出した答えがある。あまりにも感覚的だから言葉で説明するのは難しいが、とにかく爆発的な魔力を抽出することに成功したのだ。
その時考え付いた魔力論理を人に向かって試したことがある。
その結果がどうなったか。
なんと!大の大人をみじん切りにできたのだ。
みんなも、ぜひ魔力のある世界に転生して魔剣士として生きてみてほしい。
効率的な魔力の使い方さえ覚えれば齢6歳でも本物の剣を握り、人間をミンチ肉にできるから。
でもたまには本気でぶつかり合える人間も欲しいよね。
そのためにはまずいろんな人を集めて組織を作ってみるのもいいかもしれない。
しかしその時は今ではない。強くなるためには魔剣士としての実戦を積まなければならない。
ということで僕は今、盗賊狩りをしている。
「へェ↑エー↓ボォ↑ーイ!!アーユーマザファ〇ー!!!????」
「なんだこのガキ!?グワァァ!!」
「殺せ殺せ!!」
どんな時でも生きていれば、ぱぁっとやりたい時が来る。そんな時には彼らが一番だ。
「イエエエェェェェェェェェッッ↑!!!! ハッ↑ッハ↓!!! ベイビィィヤァァ↑!!!」
「なにやってんだおめぇら!!こんなクソガキさっさと殺せ!!」
魔力を推進力に転用すれば、なんてことはない彼らには反応できない速度で移動できる。
「ウ"ィ"ィ"ィ"ィ"ィ"ィ"ィ"ン"!!!!!」
「は、はやすぎる!!おいつk───」
「Fooooooo!!!! アイゴッっィット!!!」
「うわぁ!!助けてくr───」
「ダボォキル!!」
───高速移動による首切りはいつだって気分がいい。最高だ。血しぶきに当たらないようにするのも楽しい。
「みんなやられちまった……なんなんだおまえ……なんなんだよ!!」
初めてこんなことを聞かれた。
なら答えてあげよう。
「それはなベイビー!!あんたの親の〇〇〇〇と〇〇〇〇さ!!だから死んだお前の〇〇でベリホッなうまうまミートボール作ってやるぜ!!ンーーマッ""!!」
「ヒッ……!頼む助けてくr───」
「───イ"ェ"ア"ア"ア"ア"!!!!」
最後の盗賊を殺したところで、一息をつく。
「ふぅ、少しやりすぎたし、しばらくはもういいかな……んっん、喉痛いや」
面白いけど、自分でもなに言ってるの分からなくなってくるからもうやらない。多分。
「次は落ち着いて……逆になにもしゃべらないでやってみるのもいいかもしれない」
少し休憩してから金品をいただいて、今夜の相手を探しに行こう。
もちろん飛行して。
「ウ"ィ"ィ"ィ"ィ"ィ"ィ"ィ"ン"!!!」
8888888888888888888888888888
「九人かな」
空の上から魔力を薄く広範囲に広げる魔力ソナーを使い、人数を把握する。
僕の足元には七人の盗賊たちが、使われることのなくなった廃村で焚火を囲んでいる。
魔剣士が剣での戦いに制約されるこの世界、剣術はまだまだ未発達。前世にはあった銃器がない以上、革新的な戦い方は平和な平時では生まれないのだろう。
僕は圧倒的な有効打となるであろう、技の理論開発とその体得にじっくり時間をかけた。
今のところ、本気の技を使えるような相手には会敵してないけど。
様々な武術を組み合わせた剣術「シン・マケン」で間に合ってしまうのは残念としか言いようがない。
「『当たり』だといいな」
《当たり》とはそこそこの本気を出せそうな相手を指す言葉。
「行くか……」
僕は急降下による自然落下と魔力を高圧に噴射することで推進する。
ヒュッ、と風切り音が鳴りそのあとゴトリと7人の首が落ちる。
今回は静かに一瞬で刈り取る。
「完璧。やったぜ」
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