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第一章
第23話 見えないものに、価値がある話
しおりを挟む「お昼の件だけど、なんで来たの?」
「そう怒る必要ないじゃない。あなたがどんな学生か、昨日のあなたと同じように見に行っただけよ」
「いや怒ってはないけど」
「なら、どうしてこっちに来たの?」
「たしかにそうか……いや、ここに来なきゃ会えないでしょ」
放課後、イリスのいる体育館にまで足を運んでしまった。理由は会話の通り。今日は警備の騎士に止められることなく入れたから、イリスがいる限り、多分ここは顔パス状態かもしれない。
「それにしてもどうしてこんな大きい場所で練習するの?1人だけならもっと小さいところでやればいいのに」
1人、型の練習を黙々とこなすイリスに疑問を投げかける。答えるとは思わないけど、とりあえず聞いてみる。
「王族は権威の象徴、だから他の人たちとは一線を画す必要があるの。あなたには言ってもわからないでしょうけど、王族は象徴であると同時に権威であることを強いられるの。自らも、外からも」
答えるのか、しかも結構真面目に。
「そういうものなんだ」
「それにここは…ティファレト姉さまが鍛錬していた場所だから」
「……」
それが本心ならそういえばいいのに、そう言おうか迷ったけど、彼女の表情と声が淋しそうだったからやめた。
「それにしても…なんであなたに言ったのかしら」
「もしかして、僕に気があるんじゃな──うぉっと!」
「面白い冗談なこと」
眼前に迫りくる剣先は冗談の返しにしては危険すぎる。
「ところで、お昼のあの子、結構良い子じゃない。大切にしなさいよ、あなた友人少なそうだもの」
「わかってるよ。セレシアは大切な友人だからね」
「あら?私一言も女子の方だとは言ってないけど?」
「ギードも良い奴だけど、セレシアには及ばないよ」
「ふぅん…それもそうね」
ギード、お前はどこまでもそう言う奴なんだ。残念だな…
「…セレシアって子、あなたは食べ物に夢中で知らないでしょうけど、私とずっと話してみたかったらしいわ。それが今日で終わりだなんて、あの子には悪いことしたかもね」
「あれ、明日は来ないの?」
「え?」
驚いた顔でこちらに振り返るイリス。本当に慮外な意見だったらしい。
「これから毎日来るかと思ったんだけど、あれ違った?」
「あなたって…なんだか」
「うん?」
「やっぱり、気の抜ける人間ね」
「どういう意味?」
「いえ…何でもないわ。今日のところは帰ってもらえる?私、もう上がるから」
まだ始まったばっかりだし、剣術指南とやらも来るみたいだから一目見たかったんだけど。
「えー、今日は僕もうすこし──」
「──いいから早く出なさい!……あと───」
体育館から追い出されながらも抵抗する僕にかけられた言葉。
「───あなたの弁当に入ってたあれ、見たことないものだったけど美味しかったわよ」
「……」
僕はおとなしく部屋に戻るしかないのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
今日も列車に揺られ、学生寮にまで戻る。
そして自分の部屋、その扉の前に立ち察知する。自室に誰かがいることを。
「ふむ、これは…ミツキか」
覚えていた魔力から不審者でないことを確認してそのまま部屋に入り、扉を閉める。
「おかえりなさい」
すると、閉めたと同時にベッドからミツキが飛び起きる。
…なんでそこにいるんだ?
「ああ、ただいま…戻った。それで、なにかあるのか?」
気さくに言おうとして留まる。
今日は彼女からここに来たのだ、何か報告したいことがあるに違いない。
……あれ、ミツキと最近気さくに話したことあったっけ?
それはともかく、今日のミツキも僕お手製の制服にサイドテールだ。似合っていて大変よろしい。
「ええ、さっそくですが、今回報告したいのは王国にある『クロージャー』の拠点で活動が見受けられたこと。昨日の件も引き続き調査していますが、おそらくその対処だと思われます」
「『クロージャー』?…そうか、なるほど」
「いまのところ『ナンバーズ』が動く気配はないですが、注意が必要。奴らはその気になれば『アーティファクト』すら持ち出す。きっと、あなたはすべてをお知りになられているとは思いますが、念のため」
「なるほど…そうか…ふぅむ」
いきなりどうした?クロージャーとかナンバーズとか聞いたことない…
というかそんなこと調査してって頼んだっけ?ぱぁーとできるような調査を頼んでたんだけど、もしかして彼女なりのジョーク?ロールプレイングの遊びとか?
…なら、こちらも全力で応えるべきだろう!
「我々に対する脅威度はそれほどでもないだろう。仮にナンバーズが動いたところで所詮はクロージャー。いくらでもバックアップはある。イシューは私にアサインしろ。仮に…そうだな、アーティファクトあたりがこう…なんだ?作用したエビデンスがあれば、タスクは私のカバレッジだ…昨日の件もまとめてな!」
どうだ!適当な言葉で会議を踊らせる無能な社会人の真似は!自分でも何言ってるかわからないけど!
そもそも我々が2人っていうのも滑稽じゃないか。相手の人数もわからないし…あれ?これ適当なこと言ったのバレる?
「……」
黙っているミツキを見れば、口角を上げ表情としては笑っている。これは…どっちだ?
ミツキは唐突に、片膝を床につき、頭を下げる。制服のスカートのままで。
「すべては御心のままに」
「……」
…下着見えてるよ。とは言わない、紳士だから。
焦ったがどうやら対応を見るに、これで良かったらしい。
十分な時間を置いて主従?ロールプレイを堪能させる。
「──さて、今日も時間はある、また一緒に何か食べる?」
「本当?一緒に食べたいです」
ミツキは嬉しそうに言ってくれる。
そういえば彼女は調査中もちゃんと食べているのだろうか。
「せっかくだし今日は外にする?」
「中がいいです……」
中がいいらしい。昨日もそうだったが、外食は食べ飽きたということだろうか?食べてるならいいんだけど。
「そうか、中ね。なら───」
「───あの、よろしければ…『ちんじゃおろうす』が、いいです……」
まさかの昨日と同じメニュー。ミツキがいた時には必ず食べてる気がする。
「じゃあ食材の買い出しに行ってくるから待ってて」
「はい!」
元気よく笑顔に返事するミツキ。
……僕の明日の弁当にもまた入れるから少し多めに買っていこうかな。
僕はその後、ミツキと夕食を共にしたのだった。
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