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第一章
第27話
しおりを挟む食事をしてから装備などの準備が終わった時刻は大体夕飯時の後ろくらい。
「今の時間帯から目撃情報が多くなる。ゴーストは路地などを探すんだ」
屋根からまだ活気のある街道を指でなぞりながら、僕とミツキ、いや───
「被害者は今のところ騎士連合と魔剣士協会に仕事上かかわりのある人間に限られているが、住民にまで及ぶ可能性は捨てきれない」
「了解」
───『メビウス』と『ゴースト』は通り魔捜索の作戦を練っていた。
「ゴーストには人目につかない方が良いとおもったが、なにか質問ある?」
「大丈夫です」
口調はダメだ。取ってつけたような芝居はやっぱり僕には向いてない。ゴーストには悪いが人間、自然体が一番。
「私は王都の中心部から探す」
でも、せめて一人称は変えてみた。
「わかりました」
「それの使い方はわかる?」
「はい問題ありません。今まで大変重宝させていただきましたから」
ゴーストは自身の胸に右手を当てる。
すると、手の当てた場所からみるみる服の色が変わり、青と白を基調とした爽やかで清廉な制服から、にらみつけるような黒と暗い赤に変化していく。
そう、この制服は魔力を流すと色が変わるのだ。
変化していく過程を見るのは僕のお手製というひいき目を抜いても、とても良い。
僕もそれをしっかりと見ながら、魔力を流す。
最初は魔剣士の意匠だった服も瞬く間に腿にまで伸び、濃紺を基調とする空色の線が入ったフードの付きジャケットに変化する。
そして仕上げに顔を隠すためのヘルメットとフードを被る。
「……さすがです」
褒めてくれるゴーストに手を上げて返礼する。
本当はこういう風に形も変えられるんだけどゴーストにはまだ難しいみたい。
これで準備は万端。
……僕はこの一週間を振り返る。
やりたくもないパトロールに付き合わされ、けれど一学生が非効率のもどかしさにも提言できるはずもなく、ただ王都のお散歩に付き合わされていたこの7日間。
だが、これですべてが変わる。
今夜は決戦。
犠牲になった時間を、奪われた自由を、そして大切な学生生活を忘れてはならない。
「では行こう」
取り戻そう、僕の放課後を。
「今夜は私たちの初陣だ───」
勝ち取ろう、自由の時間を。
「───行動開始」
学生生活は僕のものである。
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