蒼穹の魔剣士 ~異世界で生まれ変わったら、最強の魔剣士になった理由~

神無月

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第一章

第38話

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「あ。王女様みーつけた」  

 気の抜けた少女の声が前触れもなく廊下に響き渡る。

「本当はあの子が良かったんだけどなぁ。まぁいっか」

 気配を感じさせることなく侵入してきた黒外套にフードの少女に、男は警戒をしながら見据える。

「……誰だお前?」

「あれ、もしかしてお取り込み中?……もしやこれがデート、ってやつ?……ぁ」

 ルークの問いかけを意に介さず、少女は口元だけを覗かせ口角が上げて笑っていたが男に組み敷かれ下着が露になったイリスに視線を動かす素振りを見せると、ある一点に集中する。

「………王女様、意外とおっぱい大きい。ウチより弱いくせにおっぱいが大きいなんて生意気、やっぱ殺そうかな」

 支離滅裂な言動とは裏腹に声音は真剣そのもの。

「なんなんだお前、ふざけやがって。どこから入ってきた?」

「まだわからないの?欲に溺れたお馬鹿さん」

 ルークは疑問をそらし続ける少女に苛立ちながら立ち上がり、その動きでやっと少女はルークを認識するがすぐにイリスに顔を向ける。

 そして少女はクリーム色の髪がフードにつられてふわりと舞った後、剣を掲げ宣言する───

「───わたしたちは『メビウスの使徒』」

 その一瞬だけ、まるで別人のように凛とした雰囲気を纏う少女。

 緩急のついた雰囲気を纏う得体のしれない少女を横目にルークは廊下の外にある自身の剣に目を向け、ゆっくりと檻の外へ向かう。

「王女様、あんたを攫った偽物とは訳が違うから覚えておいてね、って……あれ、寝てる?もしかして気持ち良すぎて失神しちゃってる?おーい」

 依然としてルークを無視し、少女が檻の中にいるイリスに近づいてしゃがむ。

「死ねッ……!」

 ルークはその一瞬を見逃さず、イリスに気を取られている無防備な少女の身体目掛けて剣を突こうとする。

「───ん?」

「なにッ!?くっ……!」

 だが───切りかかったはずのそれは空振り。まるで見抜いていたかのように難なく避け、更に反撃までしてきた少女。それに対して反応が遅れたルークは頬を剣が掠り、血が垂れる。

「ビックリした、いきなり襲ってくるなんて礼儀がなってないなぁ。ウチらの偽物を語るだけあるね」

「ちッ、なめやがって」

 フワフワした印象だった少女は先ほどとは打って変わって今度こそしっかりとルークを視界に捉え、剣吞なプレッシャーを与えてくる。

 ルークは頬から流れる血を手で擦る。

「こういうのをヒ・レ・ツっていうんでしょ。ならさ、堂々とかかってきなよ」

「……後悔すんなよ?」

 少女は剣を構えながらルークを笑うように挑発しそれに乗ったルークは剣を構え、魔力をアーティファクトに注ぎ増幅させる。

「そんなに魔力使うとその身体持たないよ?」

「関係ねぇよ。お前を殺して、アイリスを壊せればそれでいい」

「ふーん」

 カツ、カツ……と剣先を地面に当てて考え込む少女をよそに、ルークが纏う魔力は莫大に変化していく。

「へぇ。それ、そんな機能があったんだ。面白いね」

「あぁ!すごいだろ!?てめぇなんざ、ひと捻りだ!」

「あはっ……やってみれば?」

 少女は目を細め、冷たい声で言い放つ。

「お望みなら、なッ!」

 ルークは目にもとまらぬ速さで接近し切りかかる───

「───ふーん、こんなもんか」

「なにっ!?」

 だが、少女は容易く受け止め、呆れたようにため息を吐く。

「まだそんなものじゃないでしょ、アーティファクトの力」

 少女は弾き返して、距離を取らせる。

「見せてよ、本当の力。こんなんじゃウチにすら勝てないよ?」

「ちッ……」

 ルークは傍に倒れるイリスを一瞥すると、ゆっくりと息を吐く。

「お前に勝ちたいという気持ちが勝るなんてな、俺としても意外だ。これは騎士としての誇り……はっ!そんなもんありゃしねぇ。なら魔剣士としての意地?わからねぇ……ここまで俺を突き動かすのは……一体なんだ?」

「なに独り言いってんの?」

「なんでもねぇよ。なんでもねぇ、が……てめぇが本気でやりたいなら上でやろう。そっちの方が見栄えが良いだろ?」

「うーん……」

 少女は思案の様子を見せる。

 だが、すぐにニヤリと笑うと、

「いいねぇ。なら先行ってよ」

 剣を鞘に納めて肩を竦める。

「安心してよ。後ろからずぶり、なんてつまんないことはしないからさ」

「…………」

 ルークは首肯することもなく、部屋を出ていく。

 一人残された少女は未だ気絶したままのイリスを眺める。

「まさかナンバーズのお兄さんを探してたらこんな面白いのを見つけちゃうなんて、ラッキー。ちょっとは楽しめそうかな?アーティファクト持って帰ったらリーダーもさすがに許してくれるよね!」

 そしてルークが向かった地上である天井に視線を移す。

「……でもあれがソルジャーだったら───ウチが絶対殺す」

 無邪気な少女の声音は、その実冷徹さを匂わせていた。

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