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8.雪part2
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「……雪か?今、場所送ったからさっそく向かってくれ。」
顔を洗って着替えを済ませた雪の耳にはめられたイヤホンから、少し疲れの滲む低い声が流れてくる。
結局朝ごはんは食べられずじまいだ。
退魔師は、魔物の場所や外部に漏れてはいけない機密情報などを、「テレパシー」を使って相手に伝えることができる。
雪は、はい、と声に応えると、意識を集中させるために目を閉じた。
仕事着である白のワンピースに着替えた彼女の髪色が、みるみる水色に変化していく。
それと同時に彼女の周囲が青白く光り始めた。
ひらひらとはためくワンピースの裾が、ひときわ大きくなびいた瞬間、雪の体はふっと消えた。
次の瞬間、雪の姿は、海岸にあった。
彼女の目には、一体の「魔物」の姿が映っていた。
海だからだろうか。
魚のような、人のような、何とも言えないフォルムをした生き物が今にも彼女に飛びかからんとしている。
魔物は後ろ足、と呼ぶにはお粗末だが、足に力を籠めた。
その巨体が地面にめり込み、地面が大きく揺れるような、地震のような感覚が雪を襲う。
次の瞬間、魔物は雪の方へと、巨大な魚の鱗のようなかけらを大量に飛ばしてきた。
雪は一歩も動くことなく、手をさっと前にかざす。
彼女の目が青く光った。
不意に吹いた風が彼女のワンピースをふわっとなびかせる。
次の瞬間、彼女めがけて飛んできた鱗に、薄い氷がピキピキと音を立てて覆い始める。
それと同時に鱗は垂直にボトボトと地面に落下していった。
地面に落下した大量の鱗をに当たることなく、雪はふっと宙に浮いた。
そのまま魔物の方へ一直線に向かっていく。
魔物は大きな口を開けて、ギラギラと光る無数の鋭い歯で彼女を迎え撃とうとしている。
彼女はそれに臆することなく迷わずに突き進んでいく。
そして魔物に触れるか触れないかという距離まで彼女が接近したとき、魔物が突然はじけ飛んだ。
白い砂浜がみるみるうちに赤黒く染まっていく。
周囲に散らばった大量の肉片を横目に見ながら、雪は耳に手を当てた。
「あのー、倒したんですけど。おなかすきました。ご飯食べたいです。」
はぁ、というため息がイヤホンの向こう側から聞こえてくる。
「あのね、今日出動している退魔師は君だけじゃないんだよ。わがまま言うんじゃないよ。」
その言葉に、雪の目がカッと見開かれる。
その瞳は、すでに黒に戻っていた。
「それ、本気で言っているんですか!?私、朝5時半にたたき起こされて、上級の魔物1体倒したんですよ?ステーキの5枚くらい奢ってくれてもいいじゃないですか。」
「わかったわかった。今から向かわせる処理班の誰かに、お金渡すから、みんなで朝飯食べて来ていいよ。」
雪の熱意に押されたのか、ため息交じりの声がそう告げる。
「ほんとですか!?ありがとうございます!!」
雪は嬉しそうにその場で小さくガッツポーズをした。
顔を洗って着替えを済ませた雪の耳にはめられたイヤホンから、少し疲れの滲む低い声が流れてくる。
結局朝ごはんは食べられずじまいだ。
退魔師は、魔物の場所や外部に漏れてはいけない機密情報などを、「テレパシー」を使って相手に伝えることができる。
雪は、はい、と声に応えると、意識を集中させるために目を閉じた。
仕事着である白のワンピースに着替えた彼女の髪色が、みるみる水色に変化していく。
それと同時に彼女の周囲が青白く光り始めた。
ひらひらとはためくワンピースの裾が、ひときわ大きくなびいた瞬間、雪の体はふっと消えた。
次の瞬間、雪の姿は、海岸にあった。
彼女の目には、一体の「魔物」の姿が映っていた。
海だからだろうか。
魚のような、人のような、何とも言えないフォルムをした生き物が今にも彼女に飛びかからんとしている。
魔物は後ろ足、と呼ぶにはお粗末だが、足に力を籠めた。
その巨体が地面にめり込み、地面が大きく揺れるような、地震のような感覚が雪を襲う。
次の瞬間、魔物は雪の方へと、巨大な魚の鱗のようなかけらを大量に飛ばしてきた。
雪は一歩も動くことなく、手をさっと前にかざす。
彼女の目が青く光った。
不意に吹いた風が彼女のワンピースをふわっとなびかせる。
次の瞬間、彼女めがけて飛んできた鱗に、薄い氷がピキピキと音を立てて覆い始める。
それと同時に鱗は垂直にボトボトと地面に落下していった。
地面に落下した大量の鱗をに当たることなく、雪はふっと宙に浮いた。
そのまま魔物の方へ一直線に向かっていく。
魔物は大きな口を開けて、ギラギラと光る無数の鋭い歯で彼女を迎え撃とうとしている。
彼女はそれに臆することなく迷わずに突き進んでいく。
そして魔物に触れるか触れないかという距離まで彼女が接近したとき、魔物が突然はじけ飛んだ。
白い砂浜がみるみるうちに赤黒く染まっていく。
周囲に散らばった大量の肉片を横目に見ながら、雪は耳に手を当てた。
「あのー、倒したんですけど。おなかすきました。ご飯食べたいです。」
はぁ、というため息がイヤホンの向こう側から聞こえてくる。
「あのね、今日出動している退魔師は君だけじゃないんだよ。わがまま言うんじゃないよ。」
その言葉に、雪の目がカッと見開かれる。
その瞳は、すでに黒に戻っていた。
「それ、本気で言っているんですか!?私、朝5時半にたたき起こされて、上級の魔物1体倒したんですよ?ステーキの5枚くらい奢ってくれてもいいじゃないですか。」
「わかったわかった。今から向かわせる処理班の誰かに、お金渡すから、みんなで朝飯食べて来ていいよ。」
雪の熱意に押されたのか、ため息交じりの声がそう告げる。
「ほんとですか!?ありがとうございます!!」
雪は嬉しそうにその場で小さくガッツポーズをした。
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