雪の華

おもち

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10.記憶

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「はぁー!?記憶を消すー!?」
 
 涼太のいたコテージから100メートルほど。
 急に歩みを止めて涼太を切り株に腰掛けさせた処理班の行動に彼は疑念を抱いた。
 どうしてこんなところで止まったのか、彼の質問に返答した女の処理班の言葉に耳を疑う。
 
 ちょっと待ってくれ。
 つまり、魔物や魔法に関わる事実を人間に知られてはいけないから、俺の記憶を消す……と。

 たしかに、過去に俺以外にもこのような状況に遭遇するような人間がいたとしても何らおかしくはない。しかも、SNSが発展しているこのご時世に魔法界が知られていないのだ。
 ……という事は、それ相応の処置がなされているという事なのだろう。

 でも……。
 ここで、はい分かりましたと引き下がれるほど、俺の「魔法」に対する憧れはちっぽけじゃない。
 
 「ちょっと待ってくれ。」
 そう言って、顔をぐっと上げる。
「俺は、魔物が見えたんだ。そんな人間は珍しいだろ。もしかしたら、君たちの役に立てるかもしれないのに、ここでみすみす記憶を消してしまうのは、いい選択とは言えないんじゃないか。」
 
 「魔物が見えたというのは、我々も知っていますよ。ですが、そのような人間で我々と協力関係にある人間は他にもいます。」
 そう言うと、彼女は彼の額に右手をかざす。
 抵抗しないようにするためだろう。
 男2人は涼太の腕を腕を掴んで身動きを封じていた。

 身動きの取れない中、必死に抵抗しようとガサゴソ動くが、それもむなしく視界がぼやけ始めた。
 だんだんと薄れていく意識。
 
 こんなところで終わってたまるか。

 なんとか意識を保とうと頭をフル回転させるが、視界はどんどん白一色に染まっていく。

 もうだめだ。

 フッと意識が途切れた。
 その瞬間、バチッと火花のはじけるような音が鼓膜を震わせた。
 それと同時に意識が戻り暗闇に浮かぶ処理班の彼女の驚いたような、困惑したような表情が目に飛び込んできた。
 彼女の右の手の平からは、不自然に湯気とも煙ともとれるようなものが上がっており、シューっという音があたりに響いていた。
 
 
 
 
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