《完結》僕は棄てたのだ。

皇子(みこ)

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姉の話(現実バージョン)

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僕は暖かな場所に居るの? ぬくぬくしてる? ふわふわしてる? ドクドク安心する音が聞こえる? 起きたくないよ……

 きっと起きたら何時もの冷たい布団の中で、ひとりだ……

 夢ならこのまま夢の中に住みたいな。何年も、誰とも話さないなんて事は、いつものことだ。いつの日か、自分の声も忘れちゃったよ。

    このまま。この暖かな世界のまま終われたらいいのに。お願い、目よ覚めないで、もう少し……もう少しだけ、お願いします。神様がいるなら願いを聞いて。


「起きろ楓、泣きながら寝るな。目覚めたら良いもの見してやるから、目を開けろ」


僕は、声を聞いて直ぐに目を開いた。


「おはよう楓」


目を開けると、隼人さんが満面の笑みを浮かべて、僕にキスしてくれた。僕は嬉しくて、隼人さんが消えてしまわない様に、力いっぱい力いっぱい抱きついた。


「なかなか朝から嬉しい挨拶だな、愛してるよ」


隼人さんは優しく頭を撫でてくれた。僕が安心して、力を抜く迄ずっーと。


「おはようございます……ありがとう隼人さん」


僕は、恥ずかしくて。朝からなんて事を……


「可愛いなあ楓は。あのな、少しだけ真面目な話をしてもいいか?」

「はい」

「今日は金曜日だな、本当なら楓は中学校だろ。義務教育だからな、行かなければ行けないとは思うんだが、俺の個人的な感情から言わせて貰うとな、今迄の学校には行かせたくないんだ。

    以前の楓の雰囲気とか見ても、明らかに違和感あった筈だろ、なのに学校は何も動かなかった。

 少し調べれば色々な事が解明した筈だろ、家庭環境が悪ければ別に暮らすなり何なりの事も出来た筈なんだよ。勝手に決めて悪いが、中学は別の場所に転校させるからな。

     今の綺麗になった姿を見せたく無いのもあるしな。楓が減るし、ストーカなんかになられても困るしな。

 俺の経験上、サーっと姿をくらませた方が後々面倒な事にはならないと思うんだよ。

    家族には透が上手い事やると思うから安心しろ。会わないで済む様にはさせるから。まあ後の話は、後日透からの連絡待ちだな。あいつは優秀な奴だから大丈夫だ」

「はい。隼人さんありがとうございます。僕もあの学校は……僕の態度や何かしらの問題点があったのかもしれませんが、3年間嬉しい事も良かった事も何も無かったですし、ここ1年話しかけられた事ないですから、何も未練はありません」


暖かなベッドに凭れて間近に視線を合わせての話は、何を言われるのかと心配したのだけど、始終僕の事を考えてくれている話で、とても嬉しい内容だった。

 隼人さんは頭を撫でてくれた。隼人さんの撫でてくれる手は大きくて暖かくて大好き。


「後な、俺の事も話しても良いか」

「隼人さんの事知りたいです」

「そうか……あのな、俺は天涯孤独だと言っただろう、両親は俺が10歳姉貴が20歳で海外の小型機の飛行機事故で亡くなってな、俺達姉弟は日本で留守番してたんだよ。

    両親は、結構な資産家でな、父親に兄弟は居なかったんだ。保険金もあったし、親戚連中は俺を保護したがったってわけだ。

 金目当てでな、10歳の俺に自分の娘を婚約者に仕立てようとした奴も居たしな。あの時はめっちゃくちゃだったぞ!

    俺は10歳にして、人間が魑魅魍魎になった所を見たな。

   姉貴はその前から、家を出て美容師を目指しててな、才能もあって注目されていたんだよ。

 本当なら美容師の勉強なり色々やりたい事が有った筈なのに、俺を見兼ねて引き取って面倒みてくれたんだ。 

 姉と弟だから当たり前だとは思わなかったな……姉貴には感謝してるんだよ。学校行事や色々な準備等、結構手を煩わせたよ。

   その姉貴は、俺が18歳になりこれからは姉貴の人生自由に生きてくれよって言った次の日、事故で亡くなったんだ……

 俺はな……その後、抜け殻の様な状態で透達には結構心配かけたと思うんだが、なかなか復帰できなくてな。

 あの当時はむしゃくしゃして自分を抑えられなくて、無茶ばかりして生傷が絶えなかったな。

   そんな時、姉貴の大事にしてた美容院が、経営が成り立たない状態になって大黒柱だった姉貴が抜けて、お客も離れていくし経営手腕も見事だった姉貴が居ないと途端に、経営も悪化してたんだ。

   俺は、姉貴が残した姉貴にとっては子供みたいに大切にしてた美容院を、俺が継がないと、と言っても、俺は免許なぞないからオーナーとして、色々改革していったら当たってさ。

 透が税金対策に他の店もやってみろって言うからやるとスムーズに進むんだよ。で、親の遺産や姉貴の遺産俺の資産でこんな感じだ。

 けどな、人間不信は続行状態で裏の裏まで見ようとしちまうんだよ。見たくないんだがな。気になるんだよ。そしてそれを感付いちまうんだよ。やってられねえよ。

    姉貴が居た時は結構普通だったんだが、一番信頼していた人を無くした時何かが壊れたんだろうな。

    ありがとうよ、楓。お前を一目見た時俺はコイツなら信じられる大丈夫だって変な自身が湧き出てきて。

 押せ押せで少し強引だったかも知れないが気持ちは本当だ。お前と生きて行きたいんだよ」


「隼人さん嬉しいです。何も無い僕に」

「俺も空っぽだ、空っぽ同士で何か埋まるさ、なっ」


幸せな朝を迎えた。
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