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「お客様……ありがとうございました。私はもう大丈夫ですので、皆様の元か御帰りになってもよろしいですよ」


俺は、ソファーの横の椅子に座っている男に視線を向けた。驚いた!!

    コイツ……なんだ!?パッと見気付かなかったが、男前だ!!こんなキャバクラに来ないでも、そこら辺で女なんか湧いて出てきそうな、色気のある男だな。これはモテる……こんな男の近くは嫌だな、確実に細身の俺は引き立て役に早変わりだ。

    だからかぁ………さっき女共の叫び声…嫌にデカかったんだよな。

又、いびられるじゃないか……すれ違う度に足を踏まれたり、ブスって小声で囁かれたり、後ろでクスクス笑われたりと、何が気に入らないのか色々小細工してくれる。後で男だとバラしてやろうと内心思ってたんだが、体調不良でこのまま帰ろっと~

    まあ女じゃないし、気にはしないが…女の嫌な面を体験させて貰うと、理想がボロボロ崩れていく。結婚できるのか俺……心配だ。


「おい!固まってるが、大丈夫か?お前何でこんなところで働いてるんだよ?会社的にダブルワークダメなんじゃないのか?」

「はい???はいいー???」

「お前水木託也だろう」

「えーーーーーーーーーーーーーっ
ち、違います」

「無理だろう。ちなみに俺の事わかるか?」

「???????????」


だ、誰だろう?わかんねえ~これって下手に発言するとヤバイヤツだよな!


「じゃあヒントな」


その男は、手を合わせて輪っかにして、眼の周りを囲った。眼だけを見ろということか?俺は男の鋭い眼だけを見た……


「あーーー斉木さん!?」

「当たりだよ。先週末、深夜まで俺と2人っきりで過ごしてたのに、忘れるなんて酷いな」

「だって!工場内は落下物が異物混入の原因だから、全身専用服で固めて、帽子も二重でマスクして、基本的に眼だけしか出てないじゃないか!年齢も顔も殆どわかんねえよ!!あれは!」


俺はある事に気付いた。


「何で、俺がわかったの?確か斉木さんも完全防備姿しか見た事無いよね?」

「あー俺は何度か見た事あるから!車降りて更衣室迄の間、楽しそうに歌ってスキップしながら歩いてるだろう。多分誰も居ないと思ってたんだろうが、三階に有る休憩室から良く見えるんだよ。俺はお菓子の構想を練る時、その窓から外を見てると、考えがまとまるんだ。可愛いものもみえるしな」

「……………………………消えたい……」

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