数学オタクの転生賢者

文壱文(ふーみん)

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第一章 数学の賢者

7歳の洗礼と【積分魔法】①

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「グラル……そろそろ出発するわよ?」

 プリムラはグラルにそう呼びかけると、ディクスもその声に反応して貴重品等を確認し、グラルの身支度が終わると同時に玄関のドアを開けて目の前に停まっている馬車に乗り込む。

「それではグラル様の洗礼のため王都へ向かいますがよろしいですかディクス様?」
「ああ、もちろんだ。まあ、私も同伴することになっているから聞かなくても良かったのだがな……」
「そんな! 冗談でも恐れ多いのでやめていただけると助かるのですが……」

 見るとディクスの口元がニヤリと歪んでおり、からかっているのは誰の目にも明白だ。

「護衛の者達も準備が出来たようなので、出発します!!」
「分かった。よろしく頼む」

 雇われた護衛の冒険者の準備が終わった。武器にと皮の鎧を身につけている。御者さんがディクスに「いつでも出発できます」という旨の内容を伝えると、ディクスは同じく馬車に乗っているグラル、メリク、プリムラの三人を確認した。
 そして馬車に繋がれている二頭の馬を御者さんが走らせる。

──こうしてグラルの洗礼のため、数日に渡る馬車の旅が始まったのだった。



※※※



 エフダッシュ領から王都アークゲートまでは馬車で凡そ5日程要する。ただし、移動だけで見れば4日であるので、これは馬を休める時間を含めての所要時間だ。

 そして馬車の旅を続けること2日目でアクシデントが起きた。ディクス一行は森の中を進んでいたのだが、アクシデントは寄りによって視界の悪くなってしまうところで起きてしまった。

「襲撃だ!! 護衛の者は剣を抜け!」

──数人の盗賊による襲撃だった。

「金目のものは全部置いていきな!! そうすれば命だけは助けてやるからよぉ~!!」

 盗賊の中で最も体格の良い者が他の盗賊を取り仕切っているのか、グラル達の乗る馬車に警告をするがその顔は卑しく歪んでおり、はと言ってはいるが、どのような形で生き残るかまでは分からない。

──子供であれば奴隷として売られているかもしれないし、女であればそれはとても悲惨な目に遭うこととなるだろう。
 どちらにせよ、生きているということを諦めたほうがましに見える未来が訪れることには変わりはなかった。

「おいっ! 護衛の者はどうした!!」

 更に悪いことに、護衛の冒険者の姿が一人もおらず、もぬけの殻だったのだ。

「護衛がいなくて悲しいのかなぁ~? おいお前ら! 出てこい!!」
「「「「おう!!」」」」

 木の裏から数人の冒険者──今は盗賊だが、間違いなく自分達を護衛していたはずの冒険者の顔にディクスは目を見開く。

「お前ら! 殺っちまえ!! パーティーの始まりだ!」
「「「「うおおおおおおおおおおお!!」」」」

 盗賊たちは雄叫びを上げて馬車の中へ入ろうと曲刀を携えながら駆け出す。

「ッ……不味い! 逃げろ皆!! これは盗賊団規模の連中だ!」

 いち早く気がついたディクスは御者と自分の家族に伝えるが時は既に遅し。

「……囲まれている、だと!?」

 木々の裏から次々に曲刀を構えた盗賊が現れて馬車を包囲する。

(俺はどうすれば……!)

 グラルはまだ洗礼を受けていない。であるから当然、【積分魔法】も授けられてはいない。グラルは己の無力さで唇を噛み締めながら近づいてくる盗賊たちを睨んだ。

『今回だけ、特例的に“先行貸与”させてあげましょう。葛木一也さん──いえ、グラル……貴方の【積分魔法】を一時的に使用可能アンロックにしました。思う存分、倒しちゃって下さい! 私、女神ピタラスはこの世界の学問を発展させるために存在しているのですから……! それではまず受け取ってから、“ステータス”と唱えてみて下さいね?』

 グラルの周りで赤、白、黄、青、緑、紫など、様々な色の光の粒子が渦を巻いてやがてグラルの中に取り込まれる。

「……【ステータス】」

────────────────────

グラル・フォン・インテグラ─Lv12

HP:498/512
MP:3087/3087
SP:315/319

称号:【Ke∑@nNj1D4a】【エフダッシュ辺境伯次男】【転生者】【数学の探求者】【数学を極めし者】

固有魔法:【積分魔法】

使用可能魔法:【積分魔法(不定積分)】

────────────────────

 グラルの視界に自分の能力値が表示される。現状として使うことができるのは不定積分のみであるようだ。称号欄には文字化けしているものがあり、それが恐らくピタラスの言っていた【賢者】というものだろう、そしてレベルは経験──すなわちあらゆる選択肢の中から行動アクションを選ぶことで上昇するのだろう、グラルは予想を立てた。

 逆にそうでなければ最初からレベルが12であることの説明がつかないのだ。

────────────────────

【積分魔法(不定積分)】:
魔力を消費して積分を行い、次元を上げる要素を追加する
このとき、魔力の出力によって追加される要素能力は変化する。

────────────────────

 【積分魔法(不定積分)】の説明を読んだグラルは窮地を脱するために【不定積分】を行う。

「……よし、使ってみるか! 【不定積分】!!」

 試しに使ってみると、グラルの視界内に別のウインドウが表示される。

────────────────────

∫(___)dx=(???)

※積分したいものを空欄に入力してください。

────────────────────

「……いくぞ、【積分実行】!!」

 グラルは空欄に「自分の身体能力」と入力した。すると、積分が実行されてが一つ追加された。

 積分とは元を辿れば関数の次元を一つ上へと上げることである。
 言い換えれば、要素を加えるということである。

 例えば、y=xのグラフを積分する場合、式は“y=インテグラルxdxデルタエックス”となる。
 このとき次元を上げたいから、xの次数が一つ上がって“2”となる。そして“2”の逆数である“1/2”を掛けるのである。

 因みに、インテグラルという記号は積分をすることで面積が求められるということから、Surface表面積という英単語の“S”の形を変化させたものである。
 また、“dx”はx座標の区間または定義域の変化量を示す。



──閑話休題、グラルは「自分の身体能力」を関数に見立てて積分を実行。

 そしてグラルの身体能力に要素が一つ追加される。グラルに追加された要素──それは、【疾風迅雷】という言葉だった。
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