数学オタクの転生賢者

文壱文(ふーみん)

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第一章 数学の賢者

7歳の洗礼と【積分魔法】②

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 追加された要素言葉は【疾風迅雷】。
 つまり、高い機動力が追加されたグラルは移動に予備動作はあるが、目で追えない速度で盗賊の一人の背後に回る。

「少し借りるぞ……!」

 曲刀の予備として腰の革ベルトに身につけていた短剣を引き抜いて一度離脱する。

「こい! 【不定積分】!」

────────────────────

∫(___)dx=(???)

※積分したいものを空欄に入力してください。

────────────────────

 グラルは空欄に「今、手に持っている短剣」と入力すると、積分を実行した。

「よし、【積分実行】!!」

 そして、短剣に要素が一つだけ追加されて、短剣が淡く光る。

『【幸運招来】が追加されました。それにより、“盗賊の短剣”の名称が変更されました』

 盗賊の持っていた短剣が幸運を招く短剣ラックインバイターとなり、その情報が【積分魔法】のウインドウの上に表示される。

────────────────────

幸運を招く短剣ラックインバイター

攻撃力:B
耐久力:C

備考:【幸運招来】──幸運を次々と呼び、装備している者を出世させる。

────────────────────

「何だよそれは……! よし、その短剣も奪っちまえ!!」

 盗賊のリーダーがそう命令すると、盗賊が一斉にグラルの元へと迫る。

「元々お前らの短剣なんだけどな……! それにすら気がつかないなんてな、ひょっとしてお前ら馬鹿だろ」
「はあ!? それならその短剣は俺たちのものだろうが!!」
「盗賊に泥棒扱いをされたくはねぇな……! つーか泥棒はどっちだよ、明らかにお前らが泥棒……いや、盗賊だろうが。これでお前ら盗賊は馬鹿という仮説が確信に変わったぞ」

 グラルにしても前世で散々由香里に「馬鹿なのっ!?」と言われていたので大概だが、グラルの場合──「天才と馬鹿は紙一重」であり、盗賊は「ただの馬鹿」である。
 盗賊になり果てるにしても、自分の能力を最大限に活用する力が無かったから盗賊にまで堕ちた。ただそれだけに過ぎなかった。

「くっ……このガキ、言わせておけば!」

 今ので頭にきたのだろう、盗賊たちは奪うこと関係なしにグラルへと襲いかかる。
 しかし、その攻撃がグラルに命中することは無かった。

「ここで……! 幸運を招く短剣ラックインバイターの効果発動だ……! 俺の運気を上昇させる!!」

 某、青眼ブルーアイズが登場するアニメ作品の如き口調でグラルは幸運を招く短剣ラックインバイターの能力を言ってのけた。

 そして盗賊たちの攻撃は誰かが転んだのをきっかけに、数学的帰納法ドミノ倒しの要領で失敗に終わる。

「今度はこっちの番だな……っ!」

 【疾風迅雷】の言葉通りにグラルは神がかった動き、そして速さで盗賊たちの睾丸を次々と蹴り上げていく。
 7歳の身体で有効なダメージを与えるには急所を狙わざるを得ない。

──そして蹴り上げられた盗賊たちは悶絶し、それを見ていた御者とディクスは顔を真っ青にしていた。
 御者もディクスも揃って太腿の上の方を押さえている。

「グラル……盗賊に慈悲は無いというのは激しく同意するが、いくらなんでも急所を狙うのは余り誉められたことではないぞ……?」

 盗賊に慈悲は無い。
 しかし、同性の者からすれば、何か言いたくもなるのだろうがグラル本人はそのようなこともお構い無しに盗賊たちを無力化していく。

は、どうすりゃいいんだ……?」

 盗賊はまだ死んではいないので、ここで捕まえておかなければ後で問題となる。
 かと言って、このまま縛って王都へ運んだとしても、王都へ向かう目的が7歳の洗礼である以上、盗賊を乗せて向かうのも世間体が悪くなってしまう。

「それならば縛って木にくくりつけておけば良いと思われます。幸い、この周辺は木が多いですし……」

 グラルが困惑していると、御者が助け舟を出してくれていた。

 御者の話によると、この一帯は朝方に霧が濃くなる時間があり、遭難する者も多いという。
 だから商人たちは正午頃にこの森を抜けるために、綿密に予定を組んでいることが一般的であるようだ。

 そのため、御者としてそれなりの経験を積まなければ一人前とは認められないと口にしていた。

「わかった。それじゃ、その通りにしてみるか……!」

 グラル達、家族揃って盗賊を縛り始める。
 ただし、メリクは何も行動していない。まだ5歳の子供に盗賊を縛ることをさせるというのも酷というものである。

 因みに、メリク本人は「何事もやってみないと分からないです!」と言って聞かなかったのだが、流石にディクスがそれを許さなかったのだ。
 最後には「みんなみんな酷いです!」と言ってぶうたれていた。

 木に縄で縛られた盗賊たち全員をくくりつけると、ディクスが口を開いた。

「それでは引き続き王都まで頼む。……それとグラル、後で話がある」
「畏まりました。ディクス様」
「……分かった」

 そして盗賊たちとの騒動は終わりを迎え、グラルたちは三日後に無事に王都へ辿り着いたのだった。
 そして同時に、グラルの秘密が今にも暴かれてしまいそうで、首の皮が一枚だけ繋がった状況でもあった。
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