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第一章 数学の賢者
グラル、学院に入学する②
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グラルはエルドとエリスの二人に要素をプレゼントして遂に先生と生徒としての関係は終わりを迎え、グラルはエルドとエリスの旅立ちを見送った。
「ありがとうございました!」
グラルは少し言葉を丁寧なものにして、礼を言うと二人はエフダッシュ伯の馬車で門まで送られたのだった。
※※※
「さて、もう少しで試験か……!」
グラルはふと、他の転生者たちを思い浮かべた。
「もしかすれば、四人に会えるかもしれない」とも考えたが、国も恐らく違えば当然通う教育機関も異なるはずだと結論づけて、試験の事だけを考えられるように頭の中からそれらを追い出した。
ロンバルド王立総合学院に通うためには、当然寮暮らしになるのだが、まずはロンバルド王国まで移動しなければならないのだ。
「どうしたものか……。なんとか楽に移動できればいいんだけどな」
いくら【賢者】の称号が魔法に秀でていたとしても、グラルはまだこの世界の童話などに登場する転移魔法などは使うことができない。
そもそもの話、転移魔法に関する資料が少ないのだ。
グラルがまだ【賢者】の称号がもたらすものを上手く扱えていない以上、陸地を進むことを強いられてしまう。
ここで問題となるのが、目的地が国内ではなく国外であるということだ。
国外からロンバルド王立総合学院に入学する生徒も少なくはないが、そこまでの道のりで親が貴族であるならば、貴族同士の交流というものが生じてしまうのだ。
流石にそれを無視して通るのは何とも外聞が悪くなってしまう。
つまり、グラルはディクスが貴族当主としての交流を避けて楽に辿り着くためにその手段がないか考えていたのだ。
「空は間違いなく敵とみなされて矢の雨が降りそそぐだろうしな。っ、そうか……これがあるじゃねぇか!!」
ふと、稲妻がグラルの脳内を迸る。
「【積分魔法】で付与したい対象を限定して選択肢を減らせばいいんじゃねぇか……!」
【積分魔法】を使う際に、付与するものの対象として二つのものにまたがって付与するとしたら──それは“通話”や“通信”などといった何かを繋ぐものが要素として追加されるはずである。
そう、考えたグラルは早速二枚の手鏡を用意してその二つを一つの対象として【積分魔法】を用いて積分を実行した。
「よし、成功だ……!」
二枚の手鏡に付与された要素は【シャッフル】。
その言葉通り、ものを入れ替える要素である。そしてできた手鏡の情報がグラルの視界に表示された。
────────────────────
次元の手鏡
攻撃力:E
耐久力:B
備考:【シャッフル】─二点間の座標を交換する。
────────────────────
「思ったよりも強い要素になってんな。まあ、これで何とかなるだろ」
グラルは「あとは片方の手鏡を別の場所へ置くことができれば……」と呟いて、円を描くように同じ場所を歩き回る。
そして導き出された答えは、“馬車とエフダッシュ伯爵領をこの手鏡で行き来することを繰り返してロンバルド王国へ向かう”というものだった。
「という訳で父さん、この鏡で馬車とここを行き来しまくれば貴族の面倒事もやらずにロンバルド王国まで行けるぞ」
「なるほどな。だが、それはいかんぞ」
「何でだよ?」
「貴族たるもの、そのような卑怯なことをする訳にもいかないのだ」
何とディクスは楽して向かうことの出来るところで、それを断ったのだ。
勿論、これはグラルが勝手にやったことであり、それをディクスが知るはずもないので断られても仕方のないことなのだが、グラルの口元はいつもの笑みではなく完全なる無駄足であったことの悔しさから歪められていた。
「そんなら仕方ねぇか。これはどこかに保存しておくか!!」
グラルは悔しさを表に出さずに、愉快そうに笑っただけだった。
そして数日後、グラルはロンバルド王国へ向かうこととなり父親であるディクス、母親であるプリムラ、そして妹であるメリクから盛大な見送りを受けて旅立つこととなるのだった。
──ロンバルド王立総合学院へ入学するために。
「ありがとうございました!」
グラルは少し言葉を丁寧なものにして、礼を言うと二人はエフダッシュ伯の馬車で門まで送られたのだった。
※※※
「さて、もう少しで試験か……!」
グラルはふと、他の転生者たちを思い浮かべた。
「もしかすれば、四人に会えるかもしれない」とも考えたが、国も恐らく違えば当然通う教育機関も異なるはずだと結論づけて、試験の事だけを考えられるように頭の中からそれらを追い出した。
ロンバルド王立総合学院に通うためには、当然寮暮らしになるのだが、まずはロンバルド王国まで移動しなければならないのだ。
「どうしたものか……。なんとか楽に移動できればいいんだけどな」
いくら【賢者】の称号が魔法に秀でていたとしても、グラルはまだこの世界の童話などに登場する転移魔法などは使うことができない。
そもそもの話、転移魔法に関する資料が少ないのだ。
グラルがまだ【賢者】の称号がもたらすものを上手く扱えていない以上、陸地を進むことを強いられてしまう。
ここで問題となるのが、目的地が国内ではなく国外であるということだ。
国外からロンバルド王立総合学院に入学する生徒も少なくはないが、そこまでの道のりで親が貴族であるならば、貴族同士の交流というものが生じてしまうのだ。
流石にそれを無視して通るのは何とも外聞が悪くなってしまう。
つまり、グラルはディクスが貴族当主としての交流を避けて楽に辿り着くためにその手段がないか考えていたのだ。
「空は間違いなく敵とみなされて矢の雨が降りそそぐだろうしな。っ、そうか……これがあるじゃねぇか!!」
ふと、稲妻がグラルの脳内を迸る。
「【積分魔法】で付与したい対象を限定して選択肢を減らせばいいんじゃねぇか……!」
【積分魔法】を使う際に、付与するものの対象として二つのものにまたがって付与するとしたら──それは“通話”や“通信”などといった何かを繋ぐものが要素として追加されるはずである。
そう、考えたグラルは早速二枚の手鏡を用意してその二つを一つの対象として【積分魔法】を用いて積分を実行した。
「よし、成功だ……!」
二枚の手鏡に付与された要素は【シャッフル】。
その言葉通り、ものを入れ替える要素である。そしてできた手鏡の情報がグラルの視界に表示された。
────────────────────
次元の手鏡
攻撃力:E
耐久力:B
備考:【シャッフル】─二点間の座標を交換する。
────────────────────
「思ったよりも強い要素になってんな。まあ、これで何とかなるだろ」
グラルは「あとは片方の手鏡を別の場所へ置くことができれば……」と呟いて、円を描くように同じ場所を歩き回る。
そして導き出された答えは、“馬車とエフダッシュ伯爵領をこの手鏡で行き来することを繰り返してロンバルド王国へ向かう”というものだった。
「という訳で父さん、この鏡で馬車とここを行き来しまくれば貴族の面倒事もやらずにロンバルド王国まで行けるぞ」
「なるほどな。だが、それはいかんぞ」
「何でだよ?」
「貴族たるもの、そのような卑怯なことをする訳にもいかないのだ」
何とディクスは楽して向かうことの出来るところで、それを断ったのだ。
勿論、これはグラルが勝手にやったことであり、それをディクスが知るはずもないので断られても仕方のないことなのだが、グラルの口元はいつもの笑みではなく完全なる無駄足であったことの悔しさから歪められていた。
「そんなら仕方ねぇか。これはどこかに保存しておくか!!」
グラルは悔しさを表に出さずに、愉快そうに笑っただけだった。
そして数日後、グラルはロンバルド王国へ向かうこととなり父親であるディクス、母親であるプリムラ、そして妹であるメリクから盛大な見送りを受けて旅立つこととなるのだった。
──ロンバルド王立総合学院へ入学するために。
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