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第2章
11.芳醇でジューシー
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「ご確認なさい。あなたの魔力はもう消えていかないでしょう?」
ローランを抱きしめていたクロエは、そっと腕を離すと、彼に真正面から問いかけた。
さっきまで霧のようだったローランの魔力は、クロエの紐で抑えられ、塊になって彼の周りに留まるようになった。
レヴィンの魔力のように、ローランの周りに固まっているのだ。
「す、すごい……!しかもなんか、力がみなぎる気がする……!」
「元々の魔力の総貯蔵量は多いようです。魔力を留めておけたら、今より一層強くなれるでしょう」
信じられないと、ローランは自分の体の周りの魔力を見て驚いていた。
生まれてからずっと、空腹で仕方なかった。食べても食べても魔力がそのまま消えていってしまうからだ。その理由と原因を突きとめ、解決してくれたのだ。
昨日学園に来たばかりの、魔王の娘が。
クロエはローランに視線を向けられたので、ゆっくりと微笑む。
「きっとこれで、魔法石の食事だけでも満足すると思いますわよ。
保健室送りされる生徒もいなくなるでしょう」
「うん、ありがとうクロエちゃん……!」
ローランは涙目になりながら、クロエの手を握りぶんぶんと力強く振り感謝を表した。
長年の飢餓感を満たすことができて、ローランは嬉しそうだ。
教室にいた他の悪魔たちは、一瞬でクラスの問題児の悪癖を解決してしまった魔王令嬢の手腕に驚いていた。
特に近くで全てを見ていたレヴィンは、
(魔力を紐状に練り、相手の体に巻きつけるなんて、10年修行してやっとできるようなことなのに……!)
と、繊細な魔力操作と膨大な力量、洗練されたスキルがないとできないことを一瞬でやってのけた彼女に驚き、ゆっくりと眼鏡を押し上げた。
「でも、魔法石での食事で足りるとは思うんだけど、味が美味しくないし飽きるんだよね…」
無尽蔵に魔力を欲し、常に腹ペコだと言う問題が解決したのはいいが、グルメなローランは味にもこだわりたいようだ。
クロエはー、うーん、と顎に手を当てて暫し思案したが、
「ではこれはいかがでしょう? 一日誰も保健室送りにしなかったら、放課後、ご褒美に私が魔力を差し上げますよ」
「ええ、クロエちゃんの魔力を?」
「はい。お口に合うかはわかりませんが。試しに召し上がってみますか?」
にっこりと美しく笑うと、クロエは自分の手のひらに魔力を固めた玉を置き、ローランに差し出した。
「じゃあお言葉に甘えて、味見を……。いただきまーす」
怖い物知らずのローランは、さっき魔力の紐で結ばれたりとてんやわんやした相手の魔力だというのに、すぐに口を開けて吸い込んだ。
もぐもぐ、と咀嚼をして飲み込む。
「―――!?」
ローランの翡翠の目が、大きく見開かれた。
「おいしい……! 甘くて、芳醇で、ジューシーで……!こんなおいしい魔力、初めて食べたよ!」
「あら、そうでしたか」
「これが毎日食べられるなら、もう他の人の魔力なんていらない!」
すっかり味の虜になってしまったのか、ローランは頬を赤らめ、うっとりとした顔で魔力を食べ続ける。舌なめずりをし、頬をさすり、至極幸せそうだ。
まるで熟した甘い果実を食べているような感想を言い、夢中で食べているローラン。
横のレヴィンは、クロエの魔力に圧倒されていたが、ふと彼女と目が合うと、
「一件落着、ですわね」
と微笑みかけられたのだった。
ローランを抱きしめていたクロエは、そっと腕を離すと、彼に真正面から問いかけた。
さっきまで霧のようだったローランの魔力は、クロエの紐で抑えられ、塊になって彼の周りに留まるようになった。
レヴィンの魔力のように、ローランの周りに固まっているのだ。
「す、すごい……!しかもなんか、力がみなぎる気がする……!」
「元々の魔力の総貯蔵量は多いようです。魔力を留めておけたら、今より一層強くなれるでしょう」
信じられないと、ローランは自分の体の周りの魔力を見て驚いていた。
生まれてからずっと、空腹で仕方なかった。食べても食べても魔力がそのまま消えていってしまうからだ。その理由と原因を突きとめ、解決してくれたのだ。
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「きっとこれで、魔法石の食事だけでも満足すると思いますわよ。
保健室送りされる生徒もいなくなるでしょう」
「うん、ありがとうクロエちゃん……!」
ローランは涙目になりながら、クロエの手を握りぶんぶんと力強く振り感謝を表した。
長年の飢餓感を満たすことができて、ローランは嬉しそうだ。
教室にいた他の悪魔たちは、一瞬でクラスの問題児の悪癖を解決してしまった魔王令嬢の手腕に驚いていた。
特に近くで全てを見ていたレヴィンは、
(魔力を紐状に練り、相手の体に巻きつけるなんて、10年修行してやっとできるようなことなのに……!)
と、繊細な魔力操作と膨大な力量、洗練されたスキルがないとできないことを一瞬でやってのけた彼女に驚き、ゆっくりと眼鏡を押し上げた。
「でも、魔法石での食事で足りるとは思うんだけど、味が美味しくないし飽きるんだよね…」
無尽蔵に魔力を欲し、常に腹ペコだと言う問題が解決したのはいいが、グルメなローランは味にもこだわりたいようだ。
クロエはー、うーん、と顎に手を当てて暫し思案したが、
「ではこれはいかがでしょう? 一日誰も保健室送りにしなかったら、放課後、ご褒美に私が魔力を差し上げますよ」
「ええ、クロエちゃんの魔力を?」
「はい。お口に合うかはわかりませんが。試しに召し上がってみますか?」
にっこりと美しく笑うと、クロエは自分の手のひらに魔力を固めた玉を置き、ローランに差し出した。
「じゃあお言葉に甘えて、味見を……。いただきまーす」
怖い物知らずのローランは、さっき魔力の紐で結ばれたりとてんやわんやした相手の魔力だというのに、すぐに口を開けて吸い込んだ。
もぐもぐ、と咀嚼をして飲み込む。
「―――!?」
ローランの翡翠の目が、大きく見開かれた。
「おいしい……! 甘くて、芳醇で、ジューシーで……!こんなおいしい魔力、初めて食べたよ!」
「あら、そうでしたか」
「これが毎日食べられるなら、もう他の人の魔力なんていらない!」
すっかり味の虜になってしまったのか、ローランは頬を赤らめ、うっとりとした顔で魔力を食べ続ける。舌なめずりをし、頬をさすり、至極幸せそうだ。
まるで熟した甘い果実を食べているような感想を言い、夢中で食べているローラン。
横のレヴィンは、クロエの魔力に圧倒されていたが、ふと彼女と目が合うと、
「一件落着、ですわね」
と微笑みかけられたのだった。
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