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第3章
16.俺より強いやつだけ
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一触即発の空気の中。
クロエの煽るような言葉を受け、ギルバートは机に乗せていた足を下ろすと、ゆっくり立ち上がった。
逆立った茶髪を掻き上げると、数歩歩き、床に落ちていた自分の捨てた骨を拾い上げる。
その刹那、
ダンッ!
骨を握りしめた右拳を、そばにあった机の上に叩き下ろした。
鈍い音が響き、その衝撃で机の天板はひび割れ、台の部分がひしゃげてしまった。
ゆっくりとギルバートが拳を開くと、手の中の骨も粉々に砕け、さらさらと落ちていった。
全員が急な彼の暴力に驚き、耳を塞いだり口をあんぐり開けていたが、至近距離のクロエは微動だにせずギルバートを見つめている。
「気に食わねぇなぁ、魔王令嬢のお嬢ちゃん。俺に指図か? ああ?」
ギルバートはこめかみに青筋を浮かべ、目を見開いてクロエを睨みつける。
クロエは、毅然と返事をする。
「わたくしにはクロエという名前があります。そう呼んでいただけますか」
「はっ! 前から気に食わなかったが、アンタ生意気なんだよ」
彼は頑なにクロエの名を呼ばない。魔王令嬢と茶化し、馬鹿にしている様子のギルバート。
それは、俺はアンタを認めていない、という反骨精神の表れなのだろう。
「学園の備品を壊すのはやめていただきたいですわ」
拳を打たれ、ボロボロになった机はもう使い物にならないだろう。
掃除当番が備品室から予備の机を持ってこねば、と仕事が増えたことにクロエはうんざりする。
「学園での獣人クラスの素行不良が目に余ります。
クラス長のあなたが始終そんな態度なので、助長させているのでしょう」
ギルバートの取り巻きのジャガーやワニ、ミノタウルスの獣人たちでさえ、クロエの歯に絹着せない言い方に、肝を冷やしているように見えた。
怒り心頭のギルバートは、半袖の制服から見えるたくましい腕を組む。
「オヤジが魔王ってことにあぐらをかいたただの甘ちゃんが、偉そうにしてるんじゃねぇ。
ローランのアホがアンタの言うこと聞いてるらしいが、俺はそうはいかねぇぞ」
霧散する魔力を体に留め、魔力をおやつ代わりにあげることで、無邪気な妖精族のクラス長、ローランはクロエを認めたが、俺は違うという強い意志を感じた。
「俺が従うのは、俺より強いやつだけだ」
ギルバートはクロエの顔を覗き込み、鋭いフェンリルの牙を見せつけ、凶暴に笑った。
しかし、クロエもそれに合わせて不敵に笑う。
「それでは、私があなたに勝てば、従ってくれるのですね。
行列の割り込みもせず、弱いもの虐めもせず、ゴミもゴミ箱に捨てると」
そのクロエの煽るような言い回しに、黙って教室の端で聞いていたレヴィンが思わず吹き出していた。
子供でもできることをやっていない、不良軍団が情けないとでも言わんばかりに。
「やってやるよ。テメェにできるもんならな!」
牙を見せつけギルバートが吠える。
「それでは、これ以上物を壊されたら困りますので、中庭で決着をつけましょう」
クロエは窓の外の中庭を指差し、獣人族の委員長に宣戦布告を叩きつけた。
クロエの煽るような言葉を受け、ギルバートは机に乗せていた足を下ろすと、ゆっくり立ち上がった。
逆立った茶髪を掻き上げると、数歩歩き、床に落ちていた自分の捨てた骨を拾い上げる。
その刹那、
ダンッ!
骨を握りしめた右拳を、そばにあった机の上に叩き下ろした。
鈍い音が響き、その衝撃で机の天板はひび割れ、台の部分がひしゃげてしまった。
ゆっくりとギルバートが拳を開くと、手の中の骨も粉々に砕け、さらさらと落ちていった。
全員が急な彼の暴力に驚き、耳を塞いだり口をあんぐり開けていたが、至近距離のクロエは微動だにせずギルバートを見つめている。
「気に食わねぇなぁ、魔王令嬢のお嬢ちゃん。俺に指図か? ああ?」
ギルバートはこめかみに青筋を浮かべ、目を見開いてクロエを睨みつける。
クロエは、毅然と返事をする。
「わたくしにはクロエという名前があります。そう呼んでいただけますか」
「はっ! 前から気に食わなかったが、アンタ生意気なんだよ」
彼は頑なにクロエの名を呼ばない。魔王令嬢と茶化し、馬鹿にしている様子のギルバート。
それは、俺はアンタを認めていない、という反骨精神の表れなのだろう。
「学園の備品を壊すのはやめていただきたいですわ」
拳を打たれ、ボロボロになった机はもう使い物にならないだろう。
掃除当番が備品室から予備の机を持ってこねば、と仕事が増えたことにクロエはうんざりする。
「学園での獣人クラスの素行不良が目に余ります。
クラス長のあなたが始終そんな態度なので、助長させているのでしょう」
ギルバートの取り巻きのジャガーやワニ、ミノタウルスの獣人たちでさえ、クロエの歯に絹着せない言い方に、肝を冷やしているように見えた。
怒り心頭のギルバートは、半袖の制服から見えるたくましい腕を組む。
「オヤジが魔王ってことにあぐらをかいたただの甘ちゃんが、偉そうにしてるんじゃねぇ。
ローランのアホがアンタの言うこと聞いてるらしいが、俺はそうはいかねぇぞ」
霧散する魔力を体に留め、魔力をおやつ代わりにあげることで、無邪気な妖精族のクラス長、ローランはクロエを認めたが、俺は違うという強い意志を感じた。
「俺が従うのは、俺より強いやつだけだ」
ギルバートはクロエの顔を覗き込み、鋭いフェンリルの牙を見せつけ、凶暴に笑った。
しかし、クロエもそれに合わせて不敵に笑う。
「それでは、私があなたに勝てば、従ってくれるのですね。
行列の割り込みもせず、弱いもの虐めもせず、ゴミもゴミ箱に捨てると」
そのクロエの煽るような言い回しに、黙って教室の端で聞いていたレヴィンが思わず吹き出していた。
子供でもできることをやっていない、不良軍団が情けないとでも言わんばかりに。
「やってやるよ。テメェにできるもんならな!」
牙を見せつけギルバートが吠える。
「それでは、これ以上物を壊されたら困りますので、中庭で決着をつけましょう」
クロエは窓の外の中庭を指差し、獣人族の委員長に宣戦布告を叩きつけた。
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