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第8章 マッチングアプリ
サンライトで撮影
しおりを挟むケビンに協力してもらい、相談所に登録している人たちをコールで早速呼び出し、マッチングアプリ用の顔の画像を撮ることに。
ギルドは午後臨時休業とし、
「みなさん、一番お気に入りの服、髪型にしてギルドまで来てくださいね!」
とコールで伝えると、ギルドの前は結婚相談所の会員の姿で行列ができた。
みんな、自分の一張羅を着ておめかしをしているようだ。
顔や肌が明るく見えるよう、日当たりが良く、後ろが白い壁の場所に椅子を置き、そこに座ってもらって前に立つケビンがサンライトを唱える方法だ。
アリサはアドバイザーとして、会員近くでアドバイスをする。
「いいですよ。顎を引いて、はい、笑顔で!」
「少し前髪を上げましょうか。あ、目をつぶってしまったので、もう一回!」
写真スタジオのアシスタントのように、一番良い姿で写れるように声をかける。
しかし、すぐ終わるかと思った写真撮影が、これまたなかなかうまくいかない。
「不特定多数に顔を見られるんでしょ?
……ちょっと顔を隠してもいい?」
口元を布で隠して撮りたいと申し出て来る女性。
現代日本で、マスク姿の写真をマッチングアプリに上げる感じだろうか。
目を化粧で盛れば可愛く見えるし、プライバシーも確保できるということなのだろう。
しかし、出会った男性がイメージと違った、となってしまうことは避けたい。
「コンプレックスはあると思いますが、ちゃんと顔全体を撮ってください」
ごねる女性を説得するのには時間が掛かってしまった。
「なあ、今の俺のプロフィールに載ってる画像を使ってくれないか?」
斧使いの男性は、新しく撮るのではなく、昔撮った画像を使いたいとのこと。
「どれどれ……えっ?」
彼が表示したプロフィールを見てみると、細いスタイルで、髪も伸ばしている。
今目の前にいる男性の、おそらくは10年以上前の画像だ。
今は少しお腹も出ており、髪も薄くなっている。
「……自分の全盛期の写真を使いたいお気持ちはわかりますが、あくまでも今の自分を愛してくれる人を探すためなので、新しく撮りましょう」
やんわりと伝えるが、この頃の自分に自信があるらしく、これを使ってくれと何度も駄目押しされた。
「俺サンライト使えるから、自分で撮ってもいいか?」
魔法使いの男性は、初期魔法なら余裕で使えると、白い壁の前で自分でサンライトを唱えていた。
「よし撮れた。これ使ってくれ!」
画像を見せてもらうと、ななめ45度から目を見開いてキメキメのドヤ顔をしており、かなりの光量のため、顔の凹凸が消えてのっぺりしてしまっている。
「うーん、自撮りの角度はナルシストっぽく見えますし、光で皺を飛ばしすぎです!」
自分がこの写真を見ても、絶対にコールには応じないよ、とアリサは頭を抱える。
(ああ、異世界でも、コンプレックス隠し・昔の写真・盛りまくりの写真を使いたがるのね……!)
現実世界でもあるあるのマッチングアプリの写真にダメ出しをして行くアリサ。
結婚相談所では、お見合い写真のように、正装しプロの写真家にプロフィール写真を撮ってもらうのだが、誰でも気軽に参加できるマッチングアプリは、一番自分がよく見える写真を使うことができるので、なかなかカオスである。
もちろん、見た目が全てではないのだが。
想像していた相手と、実際に会った相手の容姿が全然違ったら、がっかりするのも当たり前だ。
「みんな、要望がすごいな……。
まあ、少しでもよく見られたいと言う気持ちはわからないでもないが」
ケビンが会員たちの要求に呆気に取られている。
「ええと、みなさん!
角度をつけず正面から撮り、髪などで顔が隠れていない、直近三ヶ月以内のものでないとダメにしますね!」
会員たちから、ブーイングやがっかりした声が上がる。
(まるで免許証かパスポートの写真規定みたいね……)
アリサは自分の言った言葉に苦笑いするが、公的証明の写真は理に適ってるなぁと思っていた。
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