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第9章 個人レッスン
気がつくと王宮
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* * *
ゆっくりとアリサが目を開くと、自分の部屋とは違う高い天井が目に入った。
シャンデリアの照明がキラキラと輝いている。
「ここは……?」
静かに半身を起こすも、まだ頭がズキズキと痛んだ。
広くて綺麗な部屋に引っ越したばかりだが、そんな自分の部屋とは桁違いの、ゴージャスな空間だった。
キングサイズのベッドはふかふかで、まるで雲の上に寝ているようだ。
「ガーネット王国の王宮の部屋、かしら……?」
ゲーム内のイベントで、城に呼ばれ魔物を倒しに行くというものがあったが、その時のスチルの背景に似ている気がしたのだ。
コンコン、と扉をノックする音が響いた。
返事をすると、外からルビオが顔を覗かせた。
「起きたか」
ルビオはアリサの姿を確認すると、ベッド脇の椅子に座った。
「ルビオ王子、私は……」
「個室で面談の最中に、立ちくらみを起こして倒れたんだ。
ケビンはギルドの客相手で手が離せなそうだったから、私が自分の家で介抱をした」
起こったことを単刀直入に伝えてくれる。
隣の部屋のケビンが慌てて医者を呼んだが、疲労からくる貧血のためゆっくり休んで栄養を取るが良いと言われたそうだ。
手の空いているルビオが馬車を呼び、自分の家であるガーネット城へとアリサを連れて来たのだという。
「そう、だったんですね。
それはご迷惑をおかけしました」
アリサが頭を下げるが、ルビオは首を振る。
「謝る必要はない。繁盛している結婚相談所を、休みもなく一人で回しているのだから疲労が溜まっていたのだろう。
無理をせずゆっくり休んでいけ」
運命の相手を探せと怒り狂っていた王子も、さすがに病人の前では優しいようだ。
「ありがとうございます。
そういや、この前一日休んだのいつだっけ……」
土日も婚活イベントが昼と夜の部開催され、ギルドが休みの日も結局書類の整理や掃除で店で仕事をしていたのだ。
アリサの精神的疲労を一番溜めた張本人は、間違いなく目の前にいるルビオなのだが、今日は珍しく心配しているようだった。
「最近顔色が悪かった。
この前、ゆっくり休むように言っただろう」
ふう、と息を吐いてルビオが顎に手を置く。
(そういえば魔物コンが終わった時、心配してくれていたわね……)
疲れたので二次会には行かないと断ったルビオが、振り向きざまに声をかけてくれていた。
意外と人の機微に気がつくルビオを見直したのだった。
ぐうううぅぅ。
広い部屋に、アリサのお腹の音が響き渡る。
「す、すみません。お腹減りまして……」
時間を見たら夕方だ。
お昼を食べ損ねて寝ていたアリサは、気がつくと空腹だった。
ルビオは最初目を丸くしていたが、お腹を押さえ恥ずかしそうに呟くアリサに、口の端を吊り上げた。
「ずいぶん大きな腹の虫だ。
よい、早めの夕飯としよう。シェフに持ってこさせる」
「え、いいんですか」
「構わん。病人はゆっくり休んでいろ」
そう言うと、ルビオは自分のマップを開き、お抱えのシェフに直接コールでメッセージを送っているようだった。
マップ上には、ルビオのものと思われる緑のハートマークが光っているのを、アリサは横目で見た。
「すぐに持ってくるそうだ」
「ありがとうございます!」
「……あと、マッチングアプリとやらから、早く私を辞めさせろ」
アリサの視線に気がついたのか、ルビオが緑のハートマークと、自分のプロフィール画像を指差して忌々しそうに言った。
「えー、せっかく人気ランキング一位なのにもったいないですよ?」
「……今すぐそなたを城から追い出しても構わないのだぞ」
「わ、わかりましたよ!」
ルビオの脅しに、家から遠い城内に一人で放り出されても困ると、すぐにマップフレンドの退会方法を教えた。
ゆっくりとアリサが目を開くと、自分の部屋とは違う高い天井が目に入った。
シャンデリアの照明がキラキラと輝いている。
「ここは……?」
静かに半身を起こすも、まだ頭がズキズキと痛んだ。
広くて綺麗な部屋に引っ越したばかりだが、そんな自分の部屋とは桁違いの、ゴージャスな空間だった。
キングサイズのベッドはふかふかで、まるで雲の上に寝ているようだ。
「ガーネット王国の王宮の部屋、かしら……?」
ゲーム内のイベントで、城に呼ばれ魔物を倒しに行くというものがあったが、その時のスチルの背景に似ている気がしたのだ。
コンコン、と扉をノックする音が響いた。
返事をすると、外からルビオが顔を覗かせた。
「起きたか」
ルビオはアリサの姿を確認すると、ベッド脇の椅子に座った。
「ルビオ王子、私は……」
「個室で面談の最中に、立ちくらみを起こして倒れたんだ。
ケビンはギルドの客相手で手が離せなそうだったから、私が自分の家で介抱をした」
起こったことを単刀直入に伝えてくれる。
隣の部屋のケビンが慌てて医者を呼んだが、疲労からくる貧血のためゆっくり休んで栄養を取るが良いと言われたそうだ。
手の空いているルビオが馬車を呼び、自分の家であるガーネット城へとアリサを連れて来たのだという。
「そう、だったんですね。
それはご迷惑をおかけしました」
アリサが頭を下げるが、ルビオは首を振る。
「謝る必要はない。繁盛している結婚相談所を、休みもなく一人で回しているのだから疲労が溜まっていたのだろう。
無理をせずゆっくり休んでいけ」
運命の相手を探せと怒り狂っていた王子も、さすがに病人の前では優しいようだ。
「ありがとうございます。
そういや、この前一日休んだのいつだっけ……」
土日も婚活イベントが昼と夜の部開催され、ギルドが休みの日も結局書類の整理や掃除で店で仕事をしていたのだ。
アリサの精神的疲労を一番溜めた張本人は、間違いなく目の前にいるルビオなのだが、今日は珍しく心配しているようだった。
「最近顔色が悪かった。
この前、ゆっくり休むように言っただろう」
ふう、と息を吐いてルビオが顎に手を置く。
(そういえば魔物コンが終わった時、心配してくれていたわね……)
疲れたので二次会には行かないと断ったルビオが、振り向きざまに声をかけてくれていた。
意外と人の機微に気がつくルビオを見直したのだった。
ぐうううぅぅ。
広い部屋に、アリサのお腹の音が響き渡る。
「す、すみません。お腹減りまして……」
時間を見たら夕方だ。
お昼を食べ損ねて寝ていたアリサは、気がつくと空腹だった。
ルビオは最初目を丸くしていたが、お腹を押さえ恥ずかしそうに呟くアリサに、口の端を吊り上げた。
「ずいぶん大きな腹の虫だ。
よい、早めの夕飯としよう。シェフに持ってこさせる」
「え、いいんですか」
「構わん。病人はゆっくり休んでいろ」
そう言うと、ルビオは自分のマップを開き、お抱えのシェフに直接コールでメッセージを送っているようだった。
マップ上には、ルビオのものと思われる緑のハートマークが光っているのを、アリサは横目で見た。
「すぐに持ってくるそうだ」
「ありがとうございます!」
「……あと、マッチングアプリとやらから、早く私を辞めさせろ」
アリサの視線に気がついたのか、ルビオが緑のハートマークと、自分のプロフィール画像を指差して忌々しそうに言った。
「えー、せっかく人気ランキング一位なのにもったいないですよ?」
「……今すぐそなたを城から追い出しても構わないのだぞ」
「わ、わかりましたよ!」
ルビオの脅しに、家から遠い城内に一人で放り出されても困ると、すぐにマップフレンドの退会方法を教えた。
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