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第9章 個人レッスン
ナイトマジック
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朝食を食べ終わり、侍女が食器を片づけると、広くなった部屋をあらためて見回す。
本棚の前のサイドテーブルに、何やらオセロのような盤が置いてあるのに気がついた。
「これはなんですか?」
「『ナイトマジック』だ。知らないのか?」
どうやらこの世界では一般的なボードゲームのようだ。
騎士の馬を模した駒と、魔法使いの杖の駒が複数あり、盤に対面で並べるようだ。
「ルビオ王子が好きだって言っていたのは、このボードゲームですか」
出会った初日、プロフィールを聞いた際に確かボードゲームが趣味と言っていた。
その趣味を邪魔しない女がいい、というモラハラ発言もしていたが。
「ルールを教えてやろう。やってみるか?」
「へえ、面白そう!」
ルビオが簡単にルールを説明する。騎士と魔法使いは動ける範囲や行動が違い、数字の書かれたカードを引き、そこに書かれた数だけ動くことができるという。
(チェスや将棋の異世界版て感じね)
早速始めて、アリサはルールを頭で思い出しながら馬の駒を動かす。
ルビオがカードを引き、5と書かれていたので5回分魔法使いを動かしていくと、アリサの馬の駒がいとも簡単に奪われてしまった。
「あー! ちょ、ちょっと待って!」
「ふふん、待ったなしだ。
やり直しも禁止だぞ」
「じゃあもうちょっと、考える時間をください!」
「カードの数字も時の運だ。長考は意味がない」
そう言われるが、盤を眺めながら顎に手を当て考えるアリサ。頭から煙が出てしまいそうだ。
ゲームは進み、何度もルビオに挑んでは、結局駒を取られ負けてしまう。
カードの数字分、一つの駒を何マス動かしてもいいし、数字の分の数の駒を1マスずつ動かしてもいい。一つの駒で進撃し攻撃もできれば、多くの駒で壁を作り防御もでき、なかなか奥深い。
「あーまた負けた! ルビオ王子強いなぁ」
「途中負けるかと思った、そなたも筋が良い」
「よーしもう一回!」
「ほう、かかってこい」
ルビオは本当にこのゲームが好きなようで、いつもの不敵な笑みでは無く、リラックスして楽しそうに笑っている。
(もしかしたら、結婚相手どころか気の許せる友人もあまりいないのかしら。
王子様って、大変ね)
いつも気難しい表情をしているのは、位が高い生まれだからこその悩みがあるのだろう。
年相応の青年のように笑うルビオを見て、アリサはそういうところを女性にもっと見せればいいのに、と心の中で声をかけた。
ゲームもひと段落したので切り上げる。
「昼食まで時間がある、王宮を案内しよう」
ルビオの提案に、アリサは同意し、赤い絨毯の敷かれた王宮の廊下を二人並んで歩く。
歩いている人たちは、王子の姿を見つけるとそっと壁際に寄り頭を軽く下げる。
それが当たり前でというように、ルビオは開いた道をまっすぐと進む。
自分より年上の大臣や執事、騎士や侍女が皆頭を下げるので、その度にアリサは日本人特有の謙虚さでペコペコと会釈していたら、ルビオに怪訝な顔をされた。
「わあ、すごい綺麗な庭園ですね」
案内された場所は、赤や黄色の色とりどりの花が咲き誇っている、美しく整えられた庭だった。
「諸国から取り寄せた珍しい植物もある。
いい香りだろう」
あたりは甘い花の蜜の香りに包まれていて、深呼吸をすると胸いっぱいに広がる。
アリサは花に包まれた素敵な庭園で、しゃがみ込み、白い小さな花を見つめていた。
「すごく癒されますね、こんなところに住めるなんて、羨ましいなぁ」
ふと出たアリサの言葉に、ルビオは少しだけ曇らせた。
「私もお気に入りの場所だ。
……王宮内は、気が休まらぬことが多い。ここなら誰も来ないしな」
ため息混じりに言い、ガーデンテラスの椅子に座るルビオ。
本棚の前のサイドテーブルに、何やらオセロのような盤が置いてあるのに気がついた。
「これはなんですか?」
「『ナイトマジック』だ。知らないのか?」
どうやらこの世界では一般的なボードゲームのようだ。
騎士の馬を模した駒と、魔法使いの杖の駒が複数あり、盤に対面で並べるようだ。
「ルビオ王子が好きだって言っていたのは、このボードゲームですか」
出会った初日、プロフィールを聞いた際に確かボードゲームが趣味と言っていた。
その趣味を邪魔しない女がいい、というモラハラ発言もしていたが。
「ルールを教えてやろう。やってみるか?」
「へえ、面白そう!」
ルビオが簡単にルールを説明する。騎士と魔法使いは動ける範囲や行動が違い、数字の書かれたカードを引き、そこに書かれた数だけ動くことができるという。
(チェスや将棋の異世界版て感じね)
早速始めて、アリサはルールを頭で思い出しながら馬の駒を動かす。
ルビオがカードを引き、5と書かれていたので5回分魔法使いを動かしていくと、アリサの馬の駒がいとも簡単に奪われてしまった。
「あー! ちょ、ちょっと待って!」
「ふふん、待ったなしだ。
やり直しも禁止だぞ」
「じゃあもうちょっと、考える時間をください!」
「カードの数字も時の運だ。長考は意味がない」
そう言われるが、盤を眺めながら顎に手を当て考えるアリサ。頭から煙が出てしまいそうだ。
ゲームは進み、何度もルビオに挑んでは、結局駒を取られ負けてしまう。
カードの数字分、一つの駒を何マス動かしてもいいし、数字の分の数の駒を1マスずつ動かしてもいい。一つの駒で進撃し攻撃もできれば、多くの駒で壁を作り防御もでき、なかなか奥深い。
「あーまた負けた! ルビオ王子強いなぁ」
「途中負けるかと思った、そなたも筋が良い」
「よーしもう一回!」
「ほう、かかってこい」
ルビオは本当にこのゲームが好きなようで、いつもの不敵な笑みでは無く、リラックスして楽しそうに笑っている。
(もしかしたら、結婚相手どころか気の許せる友人もあまりいないのかしら。
王子様って、大変ね)
いつも気難しい表情をしているのは、位が高い生まれだからこその悩みがあるのだろう。
年相応の青年のように笑うルビオを見て、アリサはそういうところを女性にもっと見せればいいのに、と心の中で声をかけた。
ゲームもひと段落したので切り上げる。
「昼食まで時間がある、王宮を案内しよう」
ルビオの提案に、アリサは同意し、赤い絨毯の敷かれた王宮の廊下を二人並んで歩く。
歩いている人たちは、王子の姿を見つけるとそっと壁際に寄り頭を軽く下げる。
それが当たり前でというように、ルビオは開いた道をまっすぐと進む。
自分より年上の大臣や執事、騎士や侍女が皆頭を下げるので、その度にアリサは日本人特有の謙虚さでペコペコと会釈していたら、ルビオに怪訝な顔をされた。
「わあ、すごい綺麗な庭園ですね」
案内された場所は、赤や黄色の色とりどりの花が咲き誇っている、美しく整えられた庭だった。
「諸国から取り寄せた珍しい植物もある。
いい香りだろう」
あたりは甘い花の蜜の香りに包まれていて、深呼吸をすると胸いっぱいに広がる。
アリサは花に包まれた素敵な庭園で、しゃがみ込み、白い小さな花を見つめていた。
「すごく癒されますね、こんなところに住めるなんて、羨ましいなぁ」
ふと出たアリサの言葉に、ルビオは少しだけ曇らせた。
「私もお気に入りの場所だ。
……王宮内は、気が休まらぬことが多い。ここなら誰も来ないしな」
ため息混じりに言い、ガーデンテラスの椅子に座るルビオ。
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