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1巻
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鈴虫が鳴く薄闇の中、その男は立っていた。
細い小川が流れる土手べりで、松の木の幹に背中を預け、腕を組んでいる。
黒く長い髪を一つに結い、藍色の羽織を着ており、夜風がその髪と裾を揺らしていた。
男は一人静かに月を見上げていたが、ふと川へ視線を落とし、川の中の大きな岩の影を見つめる。
幹から体を離し、草履の足で音もなく川へと歩むと、手を伸ばしてその岩に引っかかっている細い棒を拾い上げた。
冷たい水に濡れたそれは、鼈甲の簪だった。
花の飾りがついており、若い娘が髪を彩るためのものだろう。
男は長い指でその簪を撫でる。
「――ここにいたのか」
切れ長の目をそっと細め、ずっと探していた宝物を見つけたかのように、大切そうにそれを袂へとしまった。
彼の低い呟きは誰にも届かず、川のせせらぎにかき消されてしまう。
そうして踵を返すと、藍色の羽織を翻し、その簪の持ち主の元へと向かったのだった。
第一章 疫病神の本懐
「強く気高い子になりなさい、綾子。どんなに辛いことがあっても、笑顔でいるのよ」
幼い頃、母はそう言って私の髪を撫でた。
私の黒い髪を、椿油を染み込ませた櫛で梳かしながら、母は優しく囁いた。
「大きくなったら、どんな人のお嫁さんになるのかしら。楽しみね」
日の当たる縁側に二人で座り、細い指で私の髪を編み上げ、娘の将来を心から楽しみにしている母。
そんな母の嬉しそうな顔を見ながら、大人っぽく髪を結ってもらえた嬉しさから、手鏡を持ったまま母に抱きついてしまった。
母は裕福な商家の父の元に嫁ぎ、その美しさと器量の良さから、老若男女に愛される人であった。
透けるような白い肌には藤柄の着物がとても似合っていて、落ち着いた話し方や立ち居振る舞いは、女中たちがみな憧れている。
そんな母を私は大好きだったし、誇りであった。
母のように、みんなから愛される女性になりたい、と幼心に思ったものだ。
そんな私が十歳になった頃、ある変化が起こった。
「綾子ちゃん、甘い柿が生りましたよ。一緒に食べようねえ」
庭で鞠で遊んでいた私は、柿を剥いて持ってきてくれた祖母の丸い背中の後ろに、黒い影を見たのだ。
不気味な影をじっと見つめていると、影もこちらを見ているかのような、そんな薄ら寒い気持ちになるのに、どうしてか目が離せない。
どうかしたの? と不思議そうに手招きする祖母に何も言えず、剥いてくれた柿を食べたのだが、そばで蠢く黒い影に気を取られ、味が少しもしなかったのを覚えている。
「おばあちゃんの後ろに、黒い影がいるの。ずっとついてるよ」
その晩、湯浴み上がりに母に髪を梳いてもらっている時、何の気なしに話してみた。
不気味で気持ち悪いことをわかってもらいたかっただけなのだが、母は櫛を持つ手を止め、はっと息を呑んだ。
「綾子。それは他の人の前では、絶対に言っては駄目よ」
私の正面に回り込んできた母は、両肩を掴み、私の瞳を覗き込んで真剣な声で言う。
「わかった? 他言無用よ」
普段優しい母の剣幕に、私は驚き慌てて首を縦に振った。
じっと心配そうに私を見る母の目に映った、不安げな自分の顔。
「ああ、なんてこと。恐ろしい……!」
母はそう呟くと、震える腕で私を強く抱き締めた。
普段優しい母が、眉を顰め、唇を引き締め顔を歪めているのを見るのは初めてで、私は何かすごく悪いことを言ってしまったのかと悲しくなり、それ以降、黒い影のことは口にしないようにした。
母がすぐに医師を手配し祖母を診てもらうと、病が見つかり、祖母はその後あっけなく逝ってしまった。
腎臓に石があったらしい。
床に伏せた祖母は、ずっと背中が痛い、背中が痛いとうわごとのように呟いていた。
白い布を顔に被せられ、冷たくなり布団に横たわる祖母の姿の前で臨終だと手を合わせる医師の言葉に、親族は皆涙していたが、私はあの日、柿を剥いてくれた祖母の背中に纏わりついていた黒い影のことがずっと忘れられなかった。
つい最近まで元気に家事をしていた祖母が、痩せ細って苦しみながら亡くなってしまったことが、恐ろしくてたまらなかった。
啜り泣く声が響く和室で、隣に正座する母の顔を盗み見たところ、母は私に向かって小さく首を横に振る。
『何も言うな』と、伝えているようだった。
祖母の死以降、不思議な影が見えるようになってしまった。
それはいつも見えるわけではないのだが、ある日は町に出た時、気のいい店の主人の足に影が纏わりついているのが見えた。
子供を身籠った若い女性の、大きなお腹の周りに影があったこともある。
母に手を引かれながら、「口に出してはいけない」という約束を守り、私は不気味に思う気持ちを呑み込んでいた。
するとしばらくして、店主は膝が悪かったせいで庭木の剪定中に屋根から落ち、亡くなったという話を聞いた。
若い女性の子供は、生まれた時に産声をあげなかったらしい。
黒い影は、死の世界へと誘う悪霊なのではないか。
死の気配に近寄り、纏わりつく影が恐ろしくて、いつしか私は外へ出ることさえ億劫になってしまった。
祖母の死から一年後、母は法事のため京都の実家に帰省することになった。
幼い私に長旅は大変だろうと、一人で行く代わりにお土産を買ってくると約束してくれた。
あまり外に出たがらない私に、気を遣ったのかもしれない。
翌朝早く、戸を開けた音で私が目をこすりながら布団から起き上がると、出かける身支度を済ませ風呂敷を持った母は笑顔で手を振ってきた。
「じゃあね、綾子。お土産楽しみにしててね」
寝ぼけていたので見間違いか、夢との狭間ならばよかったのだが。
久々の帰省に心を躍らせているのか、上機嫌に父に手を引かれ馬車に乗る母の頭から胸にかけて、大きな黒い渦が取り巻いていたのだ。
「お母、さん……!」
私は咄嗟に声をあげるも、他言してはいけないと言われた手前、父や女中たちが軒先に集まっている状況で言っては駄目だという思いが一瞬よぎってしまった。
言葉を呑み込むと、母はもう一度笑顔で手を振り、小気味よく蹄の音を響かせて馬車は出発してしまった。
そして嫌な予感は的中する。
母は、その夜冷たくなって帰ってきた。
季節の変わり目で、突如夕立ちが降った日だった。
ちょうど足元の悪い砂利道の崖近くを通っていた時、興奮した馬が足を滑らせ、馬車が横転したらしい。
乗っていた母は馬車の中から振り落とされ、崖の下へと落ち、強く頭を打ったという。
屋敷へと運ばれてきた母の亡骸を見て、私は泣き崩れた。
穏やかな祖母も、優しい母も、二人とも死んでしまうなんて。
「黒い影が頭の周りにいたの……! 私が、私がお母さんに伝えていれば!」
額から血を流し、錦織の着物を着た母親に縋りつきながら、私はわんわんと泣いた。
「おばあちゃんの背中にも見えたの。そしたらすぐに死んじゃった……!」
絶対に言ってはいけないと言われていたことを口にした途端、後から後から悔しさが湧き上がってくる。
背中についた影を見て、すぐに祖母を医者に連れていけば助かったのか?
頭に黒い渦が巻いていた母に、行かないでと言えばよかったのか?
幼い私にはわからなくて、でも悔しい気持ちと、ひとりぼっちになってしまった寂しさが、どうしようもなく胸を埋め尽くしていたのだ。
そうやってわんわんと泣く私を抱き締めて、髪を撫でてくれる人はもういなくなってしまった。
裕福な商家の主である父は、母を愛してはいたが、母亡き後はいつまでも独り身ではいけないという周りからの後押しもあり、後妻を迎えた。
ちょうど病で夫を亡くしたばかりだった後妻には、私の二つ下の女の子の連れ子もいて、私には義理の母と義理の妹ができた。
それから私は、「疫病神」と呼ばれるようになった。
優しかった祖母と母の亡き後、私の居場所など、この屋敷にはない。
私に関わった人間はみんな死んでしまう、不吉な疫病神だと。
* * *
桶の中の襦袢を水につけ、擦り洗う。
額からは汗が流れ、指先はあかぎれをして見るからに痛々しい。
綾子は袖をたくし上げ、ごしごしと桶いっぱいの着物を水につけ、洗っていく。
篠宮家の屋敷の裏、広い庭の端で、人目から隠れるようにしゃがみ込み、洗濯に精を出している。
額の汗を拭った時、後ろから影が落ちたので綾子は振り返った。
「まだ洗濯してたの? もう日は高く昇ってるじゃない」
鼻で笑い、綾子を見下ろしてくるのは、義妹の絹江だ。
蝶々柄の明るい色の着物を着て、肩まで伸びた焦茶色の髪を靡かせて悠然と立っている。紅を引いた唇と、その下の口元のほくろが印象的な利発そうな少女だ。
綾子の母が他界し、父が後妻と再婚してから八年の時が経ち、綾子は二十歳、絹江は十八歳に成長していた。
「……すみません、汚れが落ちなくて」
両親や義妹だけでなく、女中や使用人の服や布、全てが桶に入れられているため、一人では洗うだけでもなかなか骨が折れる。
「言い訳なんて聞きたくないのよ!」
絹江は顔を顰め、桶の前にしゃがんでいる綾子の肩を強く押す。
ばしゃん、と水音が響き、洗い物の入った水桶と共に綾子が体勢を崩し地面に横たわる。
「あーあ、また汚れちゃったじゃない。水汲んできて洗い直しなさいよ」
せっかく綺麗に洗ったのに、再び泥がついた洗い物を見て、絹江は忌々しそうに言い放つ。
綾子は無言のまま、ゆっくりと立ち上がると、絹江に小さく会釈をして桶を持ち水汲み場へと向かった。
後妻の娘である絹江にとって、前妻の娘である義理の姉の綾子は邪魔な存在だった。
いつも暗い顔でぼんやりとしているのも苛つくし、絹江はこの家の財産をいずれ全て自分のものにしたいと思っていたからだ。
堂々として、女学校でも中心的な存在の絹江にとって、不吉な義姉など、鬱陶しくて仕方がない。
ふと、地面に簪が落ちているのが目に入った。
絹江は膝を折りそれを拾うと、後生大事に綾子がいつもつけているものだと気がついた。突き飛ばして転んだ時に、髪から落ちてしまったのだろう。
「ふん、疫病神の分際で、ずいぶん立派な簪つけてるじゃない」
絹江は物珍しそうにその鼈甲の簪を眺めた後、しかし自分の持っているものの方が立派だと鼻で笑うと、通りかかった女中に話しかけた。
「これ、いらないから川にでも捨てといてちょうだい」
そう言って、桶を持って惨めに水仕事へ向かう綾子の背中を見てせせら笑った。
* * *
どこに落としてしまったのだろうか。
絹江に突き飛ばされ、再び桶に水を汲み一から洗濯物を洗い終えた後、裏庭の草を刈り、屋敷の床掃除も終え一息ついたところで、ようやく綾子は自分の髪に簪がついていないことに気がついた。
亡き母の形見であるそれは、たった一つの自分の宝物だ。
裏庭も、屋敷の床も、歩いた場所は全て探したが、見つからない。
血相を変えて探し物をしている綾子に、女中たちは不審そうな目を向けるだけ。
「ない……どこにも……」
絹江に聞こうと思ったけれど、昼過ぎから彼女は女学校の友人たちと遊びに行ってしまったらしい。
掃除の後、塵取りの屑と共に捨ててしまったのか、それともきらりと輝く簪が落ちているのを見て、好奇心旺盛な野鳥が咥えて飛んでいってしまったか。
見つかる可能性は低いが一縷の望みを懸けて、綾子は町中へ出て聞き込みをしようと思った。
ちょうど店じまいをしようとしていた反物屋の女主人に、店先で話しかける。
「あの、簪を見ませんでしたか。鼈甲で、椿の飾りのついた……」
額に汗を浮かべ、小走りで息の上がった綾子を見て、最初は心配そうに話を聞こうとしていたが、綾子の顔を見ると頬を引き攣らせた。
「ひぃ! 篠宮家の、疫病神……!」
女主人は恐ろしそうに声を漏らすと、慌てて店の中に入って戸を閉めてしまった。中から頑丈な鍵をかける音が響き渡る。
綾子は唖然とし、女主人から浴びせられた言葉に酷く心を痛めた。
よろめく足で次の店の軒先に行くが、その店主の中年男性も眉根を寄せ、しっしと手で追い払うし、幼子を抱えた若女将は背中を向け、視線も合わせずそそくさと家の中へ入ってしまった。
篠宮家の長女が体のどこかに黒い影を見たら、その者は死んでしまう。
悪評が町中に轟いている綾子の話を聞く者など、誰もいなかった。
* * *
数刻、綾子は一人で町中を探し回ったが、結局簪は見つからなかった。
草履の足の指の付け根から血が滲み痛んだため、よろよろと覚束ない足取りで綾子は篠宮家の屋敷へと戻った。
正面の門からではなく、ぐるりと奥に回った裏門から入り、裏庭のさらに端にある、藁葺き屋根の納屋の扉を開ける。
明かりもなく、隙間風が吹くその納屋が、綾子の寝床であった。
篠宮は代々裕福な商家で、手入れの行き届いた池や庭園、檜の香りのする縁側を持つ瓦屋根の立派な屋敷に住んでいるというのに、綾子は一人、この湿気た薄暗い納屋の中で過ごしているのだ。
まるでその存在さえも、人目を憚るかのように。
井草で編まれた薄いござの上に、疲れ果てた体で座り込む。
ひび割れた皿の上に、塩むすびが二つだけ置かれている。
綾子の夕餉だ。彼女は屋敷の中で食事をとることを許されておらず、朝晩、女中が粗末な食事を持ってくるのだった。
置かれて時間が経っているため、蟻が数匹たかっている。
それを払い、冷えた隙間風が吹くおんぼろの納屋で一人、綾子は塩むすびを口に含む。
咀嚼し塩気のある米を呑み込んだ時、ぽろり、と涙が一筋流れた。
涙は後から後から流れてくる。
外からは、絹江の声だろうか。楽しげな若い女性の笑い声と、話し声もする。
きっと絹江と義母が仲良く食事をしているのだろう。その輪に入れない綾子は、薄暗い納屋でひとりぼっちだ。
父親は買付などで忙しなく地方を飛び回っており、月の半分以上家にいない。
血のつながった娘が、後妻とその連れ子からいびられていることに気がついていないわけはないだろうが、前妻を事故で亡くし、娘に疫病神という悪評がついてしまい、汚名返上のため休みもなく必死に仕事をしていて、家のことに構っていられないのだろう。
この家に、綾子の味方など一人もいないのだ。
納屋には綾子の背より高い場所に一つ小さな窓があり、そこから月の光が射し込んでいた。
無気力に壁に背を預け、ぼんやりとその月明かりを眺めながら、簪をつけた自分を優しく褒めてくれた祖母と母の笑顔と、頭を撫でる手の温かさを思い出す。
ああ、こんなことなら。
二人の代わりに、私が死ねばよかったのにな。
寒い隙間風に肩を震わせながら、綾子は呆然とそんなことを思った。
裕福な家庭に生まれても、下女以下の下働きをし、ぼろぼろの納屋で寝起きし、人目につけば疫病神と吐き捨てられる。
そんな人生に何の意味があるのだろうか。
月明かりが涙で滲む。
『――きたいか』
どこからか声が聞こえた。
それは、窓のあたりから聞こえた気がした。砂嵐のように聞こえ辛いが、耳を澄ませると次ははっきりと聞こえる。
『お前も……母と祖母のいる場所に……行きたいか』
小さな窓から、闇に紛れて靄が入ってきた。
それは納屋に入るとどんどん広がり増えていき、壁中を覆い尽くすような大きな霧となる。
細い小川が流れる土手べりで、松の木の幹に背中を預け、腕を組んでいる。
黒く長い髪を一つに結い、藍色の羽織を着ており、夜風がその髪と裾を揺らしていた。
男は一人静かに月を見上げていたが、ふと川へ視線を落とし、川の中の大きな岩の影を見つめる。
幹から体を離し、草履の足で音もなく川へと歩むと、手を伸ばしてその岩に引っかかっている細い棒を拾い上げた。
冷たい水に濡れたそれは、鼈甲の簪だった。
花の飾りがついており、若い娘が髪を彩るためのものだろう。
男は長い指でその簪を撫でる。
「――ここにいたのか」
切れ長の目をそっと細め、ずっと探していた宝物を見つけたかのように、大切そうにそれを袂へとしまった。
彼の低い呟きは誰にも届かず、川のせせらぎにかき消されてしまう。
そうして踵を返すと、藍色の羽織を翻し、その簪の持ち主の元へと向かったのだった。
第一章 疫病神の本懐
「強く気高い子になりなさい、綾子。どんなに辛いことがあっても、笑顔でいるのよ」
幼い頃、母はそう言って私の髪を撫でた。
私の黒い髪を、椿油を染み込ませた櫛で梳かしながら、母は優しく囁いた。
「大きくなったら、どんな人のお嫁さんになるのかしら。楽しみね」
日の当たる縁側に二人で座り、細い指で私の髪を編み上げ、娘の将来を心から楽しみにしている母。
そんな母の嬉しそうな顔を見ながら、大人っぽく髪を結ってもらえた嬉しさから、手鏡を持ったまま母に抱きついてしまった。
母は裕福な商家の父の元に嫁ぎ、その美しさと器量の良さから、老若男女に愛される人であった。
透けるような白い肌には藤柄の着物がとても似合っていて、落ち着いた話し方や立ち居振る舞いは、女中たちがみな憧れている。
そんな母を私は大好きだったし、誇りであった。
母のように、みんなから愛される女性になりたい、と幼心に思ったものだ。
そんな私が十歳になった頃、ある変化が起こった。
「綾子ちゃん、甘い柿が生りましたよ。一緒に食べようねえ」
庭で鞠で遊んでいた私は、柿を剥いて持ってきてくれた祖母の丸い背中の後ろに、黒い影を見たのだ。
不気味な影をじっと見つめていると、影もこちらを見ているかのような、そんな薄ら寒い気持ちになるのに、どうしてか目が離せない。
どうかしたの? と不思議そうに手招きする祖母に何も言えず、剥いてくれた柿を食べたのだが、そばで蠢く黒い影に気を取られ、味が少しもしなかったのを覚えている。
「おばあちゃんの後ろに、黒い影がいるの。ずっとついてるよ」
その晩、湯浴み上がりに母に髪を梳いてもらっている時、何の気なしに話してみた。
不気味で気持ち悪いことをわかってもらいたかっただけなのだが、母は櫛を持つ手を止め、はっと息を呑んだ。
「綾子。それは他の人の前では、絶対に言っては駄目よ」
私の正面に回り込んできた母は、両肩を掴み、私の瞳を覗き込んで真剣な声で言う。
「わかった? 他言無用よ」
普段優しい母の剣幕に、私は驚き慌てて首を縦に振った。
じっと心配そうに私を見る母の目に映った、不安げな自分の顔。
「ああ、なんてこと。恐ろしい……!」
母はそう呟くと、震える腕で私を強く抱き締めた。
普段優しい母が、眉を顰め、唇を引き締め顔を歪めているのを見るのは初めてで、私は何かすごく悪いことを言ってしまったのかと悲しくなり、それ以降、黒い影のことは口にしないようにした。
母がすぐに医師を手配し祖母を診てもらうと、病が見つかり、祖母はその後あっけなく逝ってしまった。
腎臓に石があったらしい。
床に伏せた祖母は、ずっと背中が痛い、背中が痛いとうわごとのように呟いていた。
白い布を顔に被せられ、冷たくなり布団に横たわる祖母の姿の前で臨終だと手を合わせる医師の言葉に、親族は皆涙していたが、私はあの日、柿を剥いてくれた祖母の背中に纏わりついていた黒い影のことがずっと忘れられなかった。
つい最近まで元気に家事をしていた祖母が、痩せ細って苦しみながら亡くなってしまったことが、恐ろしくてたまらなかった。
啜り泣く声が響く和室で、隣に正座する母の顔を盗み見たところ、母は私に向かって小さく首を横に振る。
『何も言うな』と、伝えているようだった。
祖母の死以降、不思議な影が見えるようになってしまった。
それはいつも見えるわけではないのだが、ある日は町に出た時、気のいい店の主人の足に影が纏わりついているのが見えた。
子供を身籠った若い女性の、大きなお腹の周りに影があったこともある。
母に手を引かれながら、「口に出してはいけない」という約束を守り、私は不気味に思う気持ちを呑み込んでいた。
するとしばらくして、店主は膝が悪かったせいで庭木の剪定中に屋根から落ち、亡くなったという話を聞いた。
若い女性の子供は、生まれた時に産声をあげなかったらしい。
黒い影は、死の世界へと誘う悪霊なのではないか。
死の気配に近寄り、纏わりつく影が恐ろしくて、いつしか私は外へ出ることさえ億劫になってしまった。
祖母の死から一年後、母は法事のため京都の実家に帰省することになった。
幼い私に長旅は大変だろうと、一人で行く代わりにお土産を買ってくると約束してくれた。
あまり外に出たがらない私に、気を遣ったのかもしれない。
翌朝早く、戸を開けた音で私が目をこすりながら布団から起き上がると、出かける身支度を済ませ風呂敷を持った母は笑顔で手を振ってきた。
「じゃあね、綾子。お土産楽しみにしててね」
寝ぼけていたので見間違いか、夢との狭間ならばよかったのだが。
久々の帰省に心を躍らせているのか、上機嫌に父に手を引かれ馬車に乗る母の頭から胸にかけて、大きな黒い渦が取り巻いていたのだ。
「お母、さん……!」
私は咄嗟に声をあげるも、他言してはいけないと言われた手前、父や女中たちが軒先に集まっている状況で言っては駄目だという思いが一瞬よぎってしまった。
言葉を呑み込むと、母はもう一度笑顔で手を振り、小気味よく蹄の音を響かせて馬車は出発してしまった。
そして嫌な予感は的中する。
母は、その夜冷たくなって帰ってきた。
季節の変わり目で、突如夕立ちが降った日だった。
ちょうど足元の悪い砂利道の崖近くを通っていた時、興奮した馬が足を滑らせ、馬車が横転したらしい。
乗っていた母は馬車の中から振り落とされ、崖の下へと落ち、強く頭を打ったという。
屋敷へと運ばれてきた母の亡骸を見て、私は泣き崩れた。
穏やかな祖母も、優しい母も、二人とも死んでしまうなんて。
「黒い影が頭の周りにいたの……! 私が、私がお母さんに伝えていれば!」
額から血を流し、錦織の着物を着た母親に縋りつきながら、私はわんわんと泣いた。
「おばあちゃんの背中にも見えたの。そしたらすぐに死んじゃった……!」
絶対に言ってはいけないと言われていたことを口にした途端、後から後から悔しさが湧き上がってくる。
背中についた影を見て、すぐに祖母を医者に連れていけば助かったのか?
頭に黒い渦が巻いていた母に、行かないでと言えばよかったのか?
幼い私にはわからなくて、でも悔しい気持ちと、ひとりぼっちになってしまった寂しさが、どうしようもなく胸を埋め尽くしていたのだ。
そうやってわんわんと泣く私を抱き締めて、髪を撫でてくれる人はもういなくなってしまった。
裕福な商家の主である父は、母を愛してはいたが、母亡き後はいつまでも独り身ではいけないという周りからの後押しもあり、後妻を迎えた。
ちょうど病で夫を亡くしたばかりだった後妻には、私の二つ下の女の子の連れ子もいて、私には義理の母と義理の妹ができた。
それから私は、「疫病神」と呼ばれるようになった。
優しかった祖母と母の亡き後、私の居場所など、この屋敷にはない。
私に関わった人間はみんな死んでしまう、不吉な疫病神だと。
* * *
桶の中の襦袢を水につけ、擦り洗う。
額からは汗が流れ、指先はあかぎれをして見るからに痛々しい。
綾子は袖をたくし上げ、ごしごしと桶いっぱいの着物を水につけ、洗っていく。
篠宮家の屋敷の裏、広い庭の端で、人目から隠れるようにしゃがみ込み、洗濯に精を出している。
額の汗を拭った時、後ろから影が落ちたので綾子は振り返った。
「まだ洗濯してたの? もう日は高く昇ってるじゃない」
鼻で笑い、綾子を見下ろしてくるのは、義妹の絹江だ。
蝶々柄の明るい色の着物を着て、肩まで伸びた焦茶色の髪を靡かせて悠然と立っている。紅を引いた唇と、その下の口元のほくろが印象的な利発そうな少女だ。
綾子の母が他界し、父が後妻と再婚してから八年の時が経ち、綾子は二十歳、絹江は十八歳に成長していた。
「……すみません、汚れが落ちなくて」
両親や義妹だけでなく、女中や使用人の服や布、全てが桶に入れられているため、一人では洗うだけでもなかなか骨が折れる。
「言い訳なんて聞きたくないのよ!」
絹江は顔を顰め、桶の前にしゃがんでいる綾子の肩を強く押す。
ばしゃん、と水音が響き、洗い物の入った水桶と共に綾子が体勢を崩し地面に横たわる。
「あーあ、また汚れちゃったじゃない。水汲んできて洗い直しなさいよ」
せっかく綺麗に洗ったのに、再び泥がついた洗い物を見て、絹江は忌々しそうに言い放つ。
綾子は無言のまま、ゆっくりと立ち上がると、絹江に小さく会釈をして桶を持ち水汲み場へと向かった。
後妻の娘である絹江にとって、前妻の娘である義理の姉の綾子は邪魔な存在だった。
いつも暗い顔でぼんやりとしているのも苛つくし、絹江はこの家の財産をいずれ全て自分のものにしたいと思っていたからだ。
堂々として、女学校でも中心的な存在の絹江にとって、不吉な義姉など、鬱陶しくて仕方がない。
ふと、地面に簪が落ちているのが目に入った。
絹江は膝を折りそれを拾うと、後生大事に綾子がいつもつけているものだと気がついた。突き飛ばして転んだ時に、髪から落ちてしまったのだろう。
「ふん、疫病神の分際で、ずいぶん立派な簪つけてるじゃない」
絹江は物珍しそうにその鼈甲の簪を眺めた後、しかし自分の持っているものの方が立派だと鼻で笑うと、通りかかった女中に話しかけた。
「これ、いらないから川にでも捨てといてちょうだい」
そう言って、桶を持って惨めに水仕事へ向かう綾子の背中を見てせせら笑った。
* * *
どこに落としてしまったのだろうか。
絹江に突き飛ばされ、再び桶に水を汲み一から洗濯物を洗い終えた後、裏庭の草を刈り、屋敷の床掃除も終え一息ついたところで、ようやく綾子は自分の髪に簪がついていないことに気がついた。
亡き母の形見であるそれは、たった一つの自分の宝物だ。
裏庭も、屋敷の床も、歩いた場所は全て探したが、見つからない。
血相を変えて探し物をしている綾子に、女中たちは不審そうな目を向けるだけ。
「ない……どこにも……」
絹江に聞こうと思ったけれど、昼過ぎから彼女は女学校の友人たちと遊びに行ってしまったらしい。
掃除の後、塵取りの屑と共に捨ててしまったのか、それともきらりと輝く簪が落ちているのを見て、好奇心旺盛な野鳥が咥えて飛んでいってしまったか。
見つかる可能性は低いが一縷の望みを懸けて、綾子は町中へ出て聞き込みをしようと思った。
ちょうど店じまいをしようとしていた反物屋の女主人に、店先で話しかける。
「あの、簪を見ませんでしたか。鼈甲で、椿の飾りのついた……」
額に汗を浮かべ、小走りで息の上がった綾子を見て、最初は心配そうに話を聞こうとしていたが、綾子の顔を見ると頬を引き攣らせた。
「ひぃ! 篠宮家の、疫病神……!」
女主人は恐ろしそうに声を漏らすと、慌てて店の中に入って戸を閉めてしまった。中から頑丈な鍵をかける音が響き渡る。
綾子は唖然とし、女主人から浴びせられた言葉に酷く心を痛めた。
よろめく足で次の店の軒先に行くが、その店主の中年男性も眉根を寄せ、しっしと手で追い払うし、幼子を抱えた若女将は背中を向け、視線も合わせずそそくさと家の中へ入ってしまった。
篠宮家の長女が体のどこかに黒い影を見たら、その者は死んでしまう。
悪評が町中に轟いている綾子の話を聞く者など、誰もいなかった。
* * *
数刻、綾子は一人で町中を探し回ったが、結局簪は見つからなかった。
草履の足の指の付け根から血が滲み痛んだため、よろよろと覚束ない足取りで綾子は篠宮家の屋敷へと戻った。
正面の門からではなく、ぐるりと奥に回った裏門から入り、裏庭のさらに端にある、藁葺き屋根の納屋の扉を開ける。
明かりもなく、隙間風が吹くその納屋が、綾子の寝床であった。
篠宮は代々裕福な商家で、手入れの行き届いた池や庭園、檜の香りのする縁側を持つ瓦屋根の立派な屋敷に住んでいるというのに、綾子は一人、この湿気た薄暗い納屋の中で過ごしているのだ。
まるでその存在さえも、人目を憚るかのように。
井草で編まれた薄いござの上に、疲れ果てた体で座り込む。
ひび割れた皿の上に、塩むすびが二つだけ置かれている。
綾子の夕餉だ。彼女は屋敷の中で食事をとることを許されておらず、朝晩、女中が粗末な食事を持ってくるのだった。
置かれて時間が経っているため、蟻が数匹たかっている。
それを払い、冷えた隙間風が吹くおんぼろの納屋で一人、綾子は塩むすびを口に含む。
咀嚼し塩気のある米を呑み込んだ時、ぽろり、と涙が一筋流れた。
涙は後から後から流れてくる。
外からは、絹江の声だろうか。楽しげな若い女性の笑い声と、話し声もする。
きっと絹江と義母が仲良く食事をしているのだろう。その輪に入れない綾子は、薄暗い納屋でひとりぼっちだ。
父親は買付などで忙しなく地方を飛び回っており、月の半分以上家にいない。
血のつながった娘が、後妻とその連れ子からいびられていることに気がついていないわけはないだろうが、前妻を事故で亡くし、娘に疫病神という悪評がついてしまい、汚名返上のため休みもなく必死に仕事をしていて、家のことに構っていられないのだろう。
この家に、綾子の味方など一人もいないのだ。
納屋には綾子の背より高い場所に一つ小さな窓があり、そこから月の光が射し込んでいた。
無気力に壁に背を預け、ぼんやりとその月明かりを眺めながら、簪をつけた自分を優しく褒めてくれた祖母と母の笑顔と、頭を撫でる手の温かさを思い出す。
ああ、こんなことなら。
二人の代わりに、私が死ねばよかったのにな。
寒い隙間風に肩を震わせながら、綾子は呆然とそんなことを思った。
裕福な家庭に生まれても、下女以下の下働きをし、ぼろぼろの納屋で寝起きし、人目につけば疫病神と吐き捨てられる。
そんな人生に何の意味があるのだろうか。
月明かりが涙で滲む。
『――きたいか』
どこからか声が聞こえた。
それは、窓のあたりから聞こえた気がした。砂嵐のように聞こえ辛いが、耳を澄ませると次ははっきりと聞こえる。
『お前も……母と祖母のいる場所に……行きたいか』
小さな窓から、闇に紛れて靄が入ってきた。
それは納屋に入るとどんどん広がり増えていき、壁中を覆い尽くすような大きな霧となる。
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