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第9章
1話 オバちゃんの異変
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ライデルとユズリの息子がスクスクと育ち、可愛い盛りの5歳を迎えた。
人間、年を取ると1年なんてあっという間である。
コロコロコロコロ坂道を転がるように、毎日が過ぎて行く。
自分の年齢なんて数えるのも難儀で――ワザと忘れるともいう――役所などで「あれ? 私、幾つだっけか?」と用紙の記入に困るお年頃。
そんなこんなで気づけば、リコの異世界生活も5年の月日が流れていた。
――そんな頃である。
ルカとルイの耳に、ヨーク村から嫌な知らせが飛び込んできた。
突然、リコが倒れたと言う。
二人は焦る気持ちを抑え、アスワドと共にリコのもとへと急いだ。
リコの家に着き、ノックをせずにいきなりドアを開けるルカたち。
すると、のんびりお茶を飲んでいたであろうリコが、驚いて椅子から飛び上がった。
「ぶはっ! い、いきなりどうしたの!」
いつもと変わらない元気そうなリコ。
一体どういうことかと、ルカたちは顔を見合わせた。
そこでルイが代表して、リコに尋ねる。
「リコ。ワタシたち、リコが倒れたって聞いて飛んで来たのだけど……」
「ん? あーそのこと。大丈夫、大丈夫! ちょっと最近、疲れやすくてさー。年の所為かなーって! あはははは!」
のほほんと笑うリコに、ルイは目くじらを立てた。
「年の所為って――リコ! 本当に大丈夫なの? よく見れば、また痩せたみたいじゃない!」
「え? そうかな?」
リコは、ムギュッとお腹の肉を掴み確認する。驚くことにウンザリするほどあった肉の厚みが、少しなくなっていた。
「おっ! 本当だ! ラッキー!」
「リコッ!」
益々、目くじらを立てるルイ。
そこに畑仕事を終えたケツァルとネーヴェが帰って来た。
「なんじゃお前たち、来てたのか!」
「皆さん、いらっしゃい!」
ケツァルたちのこれまた呑気な挨拶が、ルイの怒りの火に油を注いだ。
「ケツァル! ネーヴェ! 一体、これはどういうこと! リコは倒れたんじゃないの! なのに当の本人はどこ吹く風だし、アンタたちはアンタたちで――」
「――まぁまぁ、ルイさん。少し落ち着いてください」
目を皿にして捲し立てるルイを、ネーヴェがやんわりと止める。
「それに関しては、当然私たちも心配していますよ。しかしリコさんが、そんなに心配されると余計に気分が鬱になると怒るのです。ですから……私たちは普段通りの生活をしてるのですよ」
リコを見ながら、困り顔で説明するネーヴェ。
リコが「だって本当にそうなんだもん」と口を尖らす。
ルイは「はぁ」と溜息を吐き、怒りを一旦静めた。そして、諭すように口を開く。
「リコ……そんな子供みたいに拗ねないの。倒れたって聞けば、誰だって心配するでしょう? リコは私たちにとって、かけがえのない存在なのよ。ねぇ、リコ。本当に大丈夫なの?」
我が子のようなルイに諭され、リコは少し気恥ずかしくなる。
(いい大人がみっともないね。子供に心配をかけるなんて。そう言えば……娘にも「母さんは子供みたいなところがある」ってよく白い目で見られていたっけ。よし! これからは恥ずかしくないようにしっかりしなくちゃね!)
リコはそう反省して、ルイに頷いた。
「うん、平気だよ。年甲斐もなく村の子供たちと全力で遊んで、きっと疲れが出たんだと思う。心配かけてごめんなさい。あと……飛んで来てくれたのにふざけた態度を取ってごめんね」
素直に謝るリコ。
そんなリコに、ルカとアスワドが声をかける。
「リコさん、元気そうで安心したよ。でも……体をもっと労ってね。これだけは本当に本当にお願いだよ!」
「そうですよ。リコさんの全力は人間の域を超えてるのですから。ご年齢も考えて程々にしてくださいね!」
「うん、分かった。ありがとうね。ルカ、アスワド」
リコの殊勝な態度に、目を剥くアスワド。
彼は例の如く、リコになじられたいが為に、ワザと生意気を言ったのであった。それなのにその目論見が、大きく外れてしまったのである。
「リ、リコさん! ど、どうなさったのですか!」
「ん? 何が?」
「何が? ……じゃありません! 普段のリコさんであれば、私を辛辣な言葉でいたぶる筈です。ありがとうなんてそんな言葉――ウガッ!」
リコが突如、アスワドの頭を両手でガシッと鷲掴みにした。そして、グイッと自分の顔に引き寄せる。
「あのさー、アスワド。今日はあなたの中で、私がどんな人間なのかをじっくりと聞かせてもらおうか。長~い一日になりそうだね。そう思わない? アスワド……」
リコは、地獄の支配者の如くニンマリと微笑んだ。
その後、リコの家からアスワドの悲鳴が絶え間なく聞こえたと言う。
偶然、家の前を通りかかったライデル曰く、その悲鳴はどこかイキイキとしていて、かなり嬉しそうであった……と。
いつも通り、アスワドの馬鹿な言動によって、この一件は騒がしく閉幕を迎える。
だが――その数日後、リコがまた倒れた。
人間、年を取ると1年なんてあっという間である。
コロコロコロコロ坂道を転がるように、毎日が過ぎて行く。
自分の年齢なんて数えるのも難儀で――ワザと忘れるともいう――役所などで「あれ? 私、幾つだっけか?」と用紙の記入に困るお年頃。
そんなこんなで気づけば、リコの異世界生活も5年の月日が流れていた。
――そんな頃である。
ルカとルイの耳に、ヨーク村から嫌な知らせが飛び込んできた。
突然、リコが倒れたと言う。
二人は焦る気持ちを抑え、アスワドと共にリコのもとへと急いだ。
リコの家に着き、ノックをせずにいきなりドアを開けるルカたち。
すると、のんびりお茶を飲んでいたであろうリコが、驚いて椅子から飛び上がった。
「ぶはっ! い、いきなりどうしたの!」
いつもと変わらない元気そうなリコ。
一体どういうことかと、ルカたちは顔を見合わせた。
そこでルイが代表して、リコに尋ねる。
「リコ。ワタシたち、リコが倒れたって聞いて飛んで来たのだけど……」
「ん? あーそのこと。大丈夫、大丈夫! ちょっと最近、疲れやすくてさー。年の所為かなーって! あはははは!」
のほほんと笑うリコに、ルイは目くじらを立てた。
「年の所為って――リコ! 本当に大丈夫なの? よく見れば、また痩せたみたいじゃない!」
「え? そうかな?」
リコは、ムギュッとお腹の肉を掴み確認する。驚くことにウンザリするほどあった肉の厚みが、少しなくなっていた。
「おっ! 本当だ! ラッキー!」
「リコッ!」
益々、目くじらを立てるルイ。
そこに畑仕事を終えたケツァルとネーヴェが帰って来た。
「なんじゃお前たち、来てたのか!」
「皆さん、いらっしゃい!」
ケツァルたちのこれまた呑気な挨拶が、ルイの怒りの火に油を注いだ。
「ケツァル! ネーヴェ! 一体、これはどういうこと! リコは倒れたんじゃないの! なのに当の本人はどこ吹く風だし、アンタたちはアンタたちで――」
「――まぁまぁ、ルイさん。少し落ち着いてください」
目を皿にして捲し立てるルイを、ネーヴェがやんわりと止める。
「それに関しては、当然私たちも心配していますよ。しかしリコさんが、そんなに心配されると余計に気分が鬱になると怒るのです。ですから……私たちは普段通りの生活をしてるのですよ」
リコを見ながら、困り顔で説明するネーヴェ。
リコが「だって本当にそうなんだもん」と口を尖らす。
ルイは「はぁ」と溜息を吐き、怒りを一旦静めた。そして、諭すように口を開く。
「リコ……そんな子供みたいに拗ねないの。倒れたって聞けば、誰だって心配するでしょう? リコは私たちにとって、かけがえのない存在なのよ。ねぇ、リコ。本当に大丈夫なの?」
我が子のようなルイに諭され、リコは少し気恥ずかしくなる。
(いい大人がみっともないね。子供に心配をかけるなんて。そう言えば……娘にも「母さんは子供みたいなところがある」ってよく白い目で見られていたっけ。よし! これからは恥ずかしくないようにしっかりしなくちゃね!)
リコはそう反省して、ルイに頷いた。
「うん、平気だよ。年甲斐もなく村の子供たちと全力で遊んで、きっと疲れが出たんだと思う。心配かけてごめんなさい。あと……飛んで来てくれたのにふざけた態度を取ってごめんね」
素直に謝るリコ。
そんなリコに、ルカとアスワドが声をかける。
「リコさん、元気そうで安心したよ。でも……体をもっと労ってね。これだけは本当に本当にお願いだよ!」
「そうですよ。リコさんの全力は人間の域を超えてるのですから。ご年齢も考えて程々にしてくださいね!」
「うん、分かった。ありがとうね。ルカ、アスワド」
リコの殊勝な態度に、目を剥くアスワド。
彼は例の如く、リコになじられたいが為に、ワザと生意気を言ったのであった。それなのにその目論見が、大きく外れてしまったのである。
「リ、リコさん! ど、どうなさったのですか!」
「ん? 何が?」
「何が? ……じゃありません! 普段のリコさんであれば、私を辛辣な言葉でいたぶる筈です。ありがとうなんてそんな言葉――ウガッ!」
リコが突如、アスワドの頭を両手でガシッと鷲掴みにした。そして、グイッと自分の顔に引き寄せる。
「あのさー、アスワド。今日はあなたの中で、私がどんな人間なのかをじっくりと聞かせてもらおうか。長~い一日になりそうだね。そう思わない? アスワド……」
リコは、地獄の支配者の如くニンマリと微笑んだ。
その後、リコの家からアスワドの悲鳴が絶え間なく聞こえたと言う。
偶然、家の前を通りかかったライデル曰く、その悲鳴はどこかイキイキとしていて、かなり嬉しそうであった……と。
いつも通り、アスワドの馬鹿な言動によって、この一件は騒がしく閉幕を迎える。
だが――その数日後、リコがまた倒れた。
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