オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~

鉄 主水

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第1章

5話 オバちゃんの疑問

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 早速リコとケツァルは、ダンに連れられ村長の家へと向かった。

「ん?」

 道すがら、足を止めて何かをジッと見つめるリコに、ケツァルが問いかける。

「リコよ、どうかしたのか?」

「うーん……別にどうってことはないんだけど……」

 煮え切らない態度のリコ。
 ケツァルもその方向に目を遣る。すると、そこには畑仕事をしている女子供の姿があった。

「あの者たちがどうした? 畑仕事をしているだけではないか」

「んー、そうなんだけど……。最初はね、子供がお手伝いをして偉いなって感心してたの。でもさ、転んでバケツを倒しても、母親たちは知らんぷり。ちょっと無関心だなって。それによく見ると……ほら、働いてるの子供たちだけなの」

 そう言われ、ケツァルはもう一度よく女子供を見た。確かに忙しく働いてるのは子供たちだけで、母親たちはその横で会話にいそしんでいる。

「おーい! どうした? 置いてくぞー」

 先にを進めていたダンが、リコたちを呼ぶ。

「気にしすぎかな? ……行こうか、ケツァル」

「うむ」

 リコたちは気を取り直し、ダンに追いつくべく先を急いだ。


 ◆◆◆


 目的地である村長の家は、村の中心にある広場のすぐ側にあった。
 リコたちを迎えたのは、まず村長夫婦のライデルとユズリ。
 リコよりも少し若めの夫婦で、村長のライデルは線の細い優男。眉の間にある皺が、神経質そうなイメージを与える。
 あまり似ていないが、嫁のユズリはダンの姉なのだそうだ。
 黒髪を肩口で揃え、ホンワカした女性である。臨月であろう大きなお腹を抱えていた。
 それからもうひとり、ライデルの祖母メグルである。気難しそうなおばあちゃんという印象だ。かなり背が小さい。

 リコたちは広々とした台所兼居間に通され、さっきダンを丸め込んだ「お涙頂戴作戦」をライデルたちの前でも披露した。
 リコの迫真の演技が終わると、難しい顔をしたメグルが口を開く。

「……その魔獣は?」

「え? ああ、友達のケツァルです」

「⁉」

 ライデルたちが驚いたと言わんばかりの顔をする。
 中でも、メグルは「ほう!」と感嘆の声を漏らし、態度を一転、優しい笑顔をリコたちに向けた。

「そうかい。友達かい……リコ、ケツァル。遠慮しないで、この村に好きなだけいるがいいさ。ダン! お前の家で面倒みておあげ。そうじゃ。わしが村を案内してやろう。明日、またウチにおいで」

「お祖母さん! 急いではいけません。きちんと考えから判断しましょう」

 勝手に話を進めるメグルに、ライデルから待ったがかかった。
 滅多に人など来ない辺境の村に、突然現れたオバちゃんと珍獣。村を守る長ならば、慎重になるのも当然である。

(この村長、なかなかしぶといね。それにしても……メグルさんの変わり様は何? ダンもそうだったし……一体、何が彼らの#琴線__きんせん__#に触れたのかな?)

 リコがそんな思いを巡らせていると、メグルが「はぁ」と大袈裟な溜息を吐いた。

「ライデル、お前は冷たいね。リコたちは無一文で困っているんだよ。二つ返事で承知するのが男ってもんじゃないか! ……そんなんじゃ、ユズリに嫌われるよ」

 メグルの駄目押しが決め手となり、ライデルが渋々了承した。
 見事リコたちは、村の滞在許可を手にしたのである。


 ◆◆◆


 その夜、ダンが用意してくれた部屋で、ベッドに横たわるリコとケツァル。
 一先ず、寝床の心配は解消されたと喜ぶリコに、ケツァルがぼそりと呟く。

「リコ……ワシを友と呼んだが……」

「えっ? だって異世界の謎に挑む同志じゃん。違うの?」

「……いや、そうじゃな……ああ、今日は疲れた。ワシはもう寝る」

 ケツァルは目を瞑り寝たフリをする。どうやら照れているらしい。
 そんなケツァルに微笑み「おやすみ」と言うと、リコも目を閉じた。

(……旦那と娘はちゃんとご飯食べたかな? 心配してるよね。早く帰る方法見つけなきゃ。でもまずは王都だよなー。はぁー、タダで行けないもんかなぁ……)

 そんなことを考えながら、リコは深い眠りに落ちていった。
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