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Ⅰ.
第二話
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横断歩道を渡り切ったところで、颯斗とドルーリーを連れた祥子の母親と別れる。
二人きりになった瞬間、祥子がマキナに問いかけた。
「ねー、颯斗さんこの間雑誌の表紙になってたね!!!
あの人うちらとは全然違う世界の人だけど、マジイケメンだよねー??
マキナ、例の秘密の彼氏って………もしかして颯人さん???」
祥子が目をキラキラ輝かせながら、マキナの顔を覗き込む。
祥子はマキナの親友のギャルで、同じ金髪ロングヘアを守っている。
まさしく祥子はマキナにとって、ズッ友というやつである。
そして祥子は恋バナが大好きだ。
マキナは自分の恋人が誰なのかを秘密にしている。仲のいい祥子にも話していない。それに勿論颯斗にも。
誰にも言えない秘密の恋をしているのだ。
「颯斗はやめてよー。やだやだ。………全然アタシ颯斗の良さとかわかんないし!!家族みたいなもんだし……颯斗は絶対無い!!」
マキナは何故かほんの少しだけムキになったかの様に、祥子にそう返す。
すると祥子は意味深な笑みを浮かべた。
「えー、でも二人何時もイイ感じで歩いてるじゃん??」
良い感じは心外だとマキナは思う。
幼い時に散々颯斗と結婚しろと家族に言われてきたマキナは、颯斗の事で囃し立てられるのが嫌である。
それに颯斗だって今は、相容れない人種になった自分と噂はされたくないだろう。
マキナは頭の中に自分の好きな人の事を思い浮かべた。
「それに、アタシの好きなひとは…………もっと優しいし………!!」
自分の好きな人は気合を入れて作ったネイルを、武器なんていう人じゃないとマキナは思う。
マキナの恋人は年上でとても優しい人だ。初めて出逢ったその時から素敵な人だと思っていた。
振られるつもりで一世一代の告白をすれば、彼は交際を快くOKしてくれた。
マキナは天にも昇る気持ちで微笑む。まさか自分の心が通じるなんて夢にも思ってなんていなかった。
愛の告白をした時に彼が返してくれた言葉を、マキナはちゃんと信じている。
『嬉しいよ。君が卒業したら結婚しよう』
大人の彼と肩を並べて歩けるようになるその日迄、絶対にエッチな事はしない。
その取り決めの元でマキナは彼と付き合っている。
マキナは黒ギャルという奇抜なファッションにも関わらず、とても健全に男女交際をしていた。
同じ学校の制服を着た生徒たちが、校門を通り抜けて校舎の中に入ってゆく。
校門の前にはすらりと背の高い、スーツ姿の大人の男が立っていた。
キッチリと整えられた髪に優し気な目元。いい男という言葉が、彼にはぴったり当てはまる。
彼はマキナと祥子を見るなり、にっこりと微笑んで手を振った。
「せんせー!!おはよー!!!」
「ああ、おはよう!」
マキナは目を輝かせながら、彼の元に祥子を置いて駆け寄る。
椿山一茶。彼はマキナと祥子のクラスの担任の教師だ。担当は化学。
高校二年の春に椿山先生が赴任してきて以来、マキナは彼のクラスで日々勉強に励んでいる。
すると先生が、祥子に聞こえないように小さな声で囁いた。
「………白鹿。放課後、楽しみにしてるから」
先生の優しい声色に、マキナは満面の笑みを浮かべる。そして金色の髪を揺らしながら大きく頷いた。
年上の優しいマキナの恋人は、この人の事なのだ。
マキナは先生のお嫁さんになる為に、制服の着こなし以外は今日も優等生だ。
「………うんっ!!えへへ!!」
頬をほんの少しだけ上気させたマキナは、遅れて歩いてきた祥子と共に校舎へ向かってゆく。
祥子は椿山先生を一瞥すると、ただ会釈だけをして校舎に向かう。
どうも祥子は椿山先生が苦手なようで常に距離を取っている。
校舎からはチャイムの音が鳴り響いていた。
「やば!!マキナ急ごう!!!」
「やだ待ってよ祥子!!」
可愛らしい二人のギャルが笑い合いながら、校庭を駆けてゆく。
何時も通りの素敵な朝の風景だった。
マキナが指定された待ち合わせの場所は、マキナの家から五つ離れた所にある駅である。
其処は人通りも少なく、お忍びで逢うには丁度いい。
けれどデートとはいえど、することはとても限られていた。
マキナと先生の恋愛はとても清い。性的な事は卒業迄お預けだ。
なんとマキナはまだ、ファーストキスさえしていない。
土日に遊べる事になった時は、先生の家まで向かう。
する事は二人で先生の好きな映画と、マキナの好きな映画を見比べる事。
そして放課後遊ぶ事になった時は、公園の駐車場でおしゃべりをする。
時折抱き合う位のスキンシップはするものの、それ以上の事はしていない。
マキナは先生に、とても大切にされていると思っていた。
茜色の夕日に照らされながら先生の到着を待つ。マキナの金色の髪は朱くキラキラと輝いていた。
先生を待っているこの時間も好きだと、マキナは思う。
胸いっぱいに溢れ出した愛しさを噛み締めながら、恋人の到着を待っていた。
見慣れた車が駅のロータリーの中に入ってきた瞬間、マキナは目を輝かせる。
黒いセダンがハザードランプを光らせれば、小走りに助手席に歩み寄った。
マキナは車の中に飛び込む様にしながら、車を止めた先生に抱き付いた。
「はー…………せんせー逢いたかったぁ………!!!」
先生の大きな手が金色の髪を撫でながら、自分の方にマキナを引き寄せる。
その瞬間全身の血が沸騰するのではないかと思うほど、身体中が熱くなった。
彼は大人だからなのか、マキナと違って余裕がある。
派手な見た目をしている割に初心なマキナは、頬を真っ赤に染め上げて先生の腕に顔を埋めた。
そんなマキナを見ながら、先生は穏やかな笑みを浮かべた。
「学校で一日一緒にいたのに??」
「学校じゃせんせーに触れないじゃん…………!!せんせーの良い匂いがする………!!」
先生の身体からは何時も何となく優しい香りがする。例えるなら白檀の様な穏やかで安らぐ匂いだ。
隣にいるだけで幸せな気持ちになるとマキナは心から思う。
けれどマキナはある事を最近感じていた。
もう、キス位なら許されるんじゃないだろうか、と。
マキナが先生に告白したのは、ちょうど去年の今頃である。
六月の梅雨入り前の初夏だった。場所は放課後の科学準備室。それからもう、一年という時が流れたのだ。
こんなに清い関係を続けてきているのだから、キス位ならいいじゃないか。
キスなら挨拶の国だってあるとマキナは思う。
今日の星占いの結果もとても良かった。運命の恋は間違いなく先生の事に違いない。
最高の運勢とデートの予定が重なっているラッキーデーなら、きっとキス位許される。
一層の事気合を入れて、自分から先生にキスをするつもりでいた。
車を走らせる先生の横顔を眺めながら、形の良い唇を凝視する。
いざ今日こそはと思えば思うほど、物凄く緊張してしまう。
茹蛸の様に真っ赤な表情を浮かべたマキナは、膝の上で握りこぶしを作ろうとする。
すると付けていたネイルが、マキナの手のひらの肉に軽く食い込んだ。
「………どうしたのマキナ?暑い??顔真っ赤だよ??」
二人きりになった瞬間に、名前を呼んでくれるところが好きだとマキナは思う。
好きすぎて名前を呼ばれるだけで、目が潤むのが解った。
先生の一挙手一投足がマキナの心をゆらゆらと揺さぶる。それがとても心地いい。
マキナは照れた微笑みを浮かべながら、顔の前でパタパタと手を振った。
「あ………もう夏だし!?!?やっぱカーディガン着てると超アツいかも………!!!」
しどろもどろに誤魔化しながらマキナは静かに前を向く。
気が付くと辺りはとても暗くなり、自然のとても多い道路を車は走っていた。
大きな広場に出た瞬間、車は動きを止める。あたりの景色は余りに暗くて判別が出来ない。
すると先生は車のドアを開いて外に出た。
先に車から降りた先生を追いかけて、マキナも車のドアを開ける。
「まってせんせー!!どこ行くの!?!?」
マキナがそう叫んだ瞬間、目の前には満天の星空が広がった。
キラキラ光る宝石を散りばめたかの様な空は、余りに美しく感動的だ。
マキナはキラキラした眼差しで空を仰いだ。
「…………めっちゃ、綺麗……………」
目を潤ませて空を見上げるマキナの肩を、先生は優しく包み込む。
その時マキナは、先生の顔がとても近くにある事に気付いた。
『待ってこれ、キスすんなら今じゃね…………??』
マキナはそう思いながら、先生の方へ顔を向ける。
その瞬間マキナの大好きな先生の整った顔立ちが、ダイレクトに視界に入った。
バクバク心臓が鳴り響くのを感じながら、必死で先生に顔を寄せる。
けれどあと少しで唇という所で、どうしても気合が足らなかった。
キスというものはとても、気合と根性が必要になるとマキナは思う。
動けなくなって硬直したままのマキナに、先生は小さく笑う。
息遣いを感じられる程の近い距離感に、更にマキナは息を呑んだ。
先生の腕がマキナの身体を引き寄せれば、先生の唇がマキナの額に触れる。
ちゅっ、という音と柔らかい唇の感触を感じた時、マキナの呼吸は止まりそうになった。
「ふふ、マキナは可愛いね………大好きだよマキナ………」
先生の匂いに包まれながら、真っ赤な顔でマキナは瞬きを繰り返す。
そして、額でも息が止まりそうになってしまうなら、唇へのキスは夢のまた夢だと思った。
二人きりになった瞬間、祥子がマキナに問いかけた。
「ねー、颯斗さんこの間雑誌の表紙になってたね!!!
あの人うちらとは全然違う世界の人だけど、マジイケメンだよねー??
マキナ、例の秘密の彼氏って………もしかして颯人さん???」
祥子が目をキラキラ輝かせながら、マキナの顔を覗き込む。
祥子はマキナの親友のギャルで、同じ金髪ロングヘアを守っている。
まさしく祥子はマキナにとって、ズッ友というやつである。
そして祥子は恋バナが大好きだ。
マキナは自分の恋人が誰なのかを秘密にしている。仲のいい祥子にも話していない。それに勿論颯斗にも。
誰にも言えない秘密の恋をしているのだ。
「颯斗はやめてよー。やだやだ。………全然アタシ颯斗の良さとかわかんないし!!家族みたいなもんだし……颯斗は絶対無い!!」
マキナは何故かほんの少しだけムキになったかの様に、祥子にそう返す。
すると祥子は意味深な笑みを浮かべた。
「えー、でも二人何時もイイ感じで歩いてるじゃん??」
良い感じは心外だとマキナは思う。
幼い時に散々颯斗と結婚しろと家族に言われてきたマキナは、颯斗の事で囃し立てられるのが嫌である。
それに颯斗だって今は、相容れない人種になった自分と噂はされたくないだろう。
マキナは頭の中に自分の好きな人の事を思い浮かべた。
「それに、アタシの好きなひとは…………もっと優しいし………!!」
自分の好きな人は気合を入れて作ったネイルを、武器なんていう人じゃないとマキナは思う。
マキナの恋人は年上でとても優しい人だ。初めて出逢ったその時から素敵な人だと思っていた。
振られるつもりで一世一代の告白をすれば、彼は交際を快くOKしてくれた。
マキナは天にも昇る気持ちで微笑む。まさか自分の心が通じるなんて夢にも思ってなんていなかった。
愛の告白をした時に彼が返してくれた言葉を、マキナはちゃんと信じている。
『嬉しいよ。君が卒業したら結婚しよう』
大人の彼と肩を並べて歩けるようになるその日迄、絶対にエッチな事はしない。
その取り決めの元でマキナは彼と付き合っている。
マキナは黒ギャルという奇抜なファッションにも関わらず、とても健全に男女交際をしていた。
同じ学校の制服を着た生徒たちが、校門を通り抜けて校舎の中に入ってゆく。
校門の前にはすらりと背の高い、スーツ姿の大人の男が立っていた。
キッチリと整えられた髪に優し気な目元。いい男という言葉が、彼にはぴったり当てはまる。
彼はマキナと祥子を見るなり、にっこりと微笑んで手を振った。
「せんせー!!おはよー!!!」
「ああ、おはよう!」
マキナは目を輝かせながら、彼の元に祥子を置いて駆け寄る。
椿山一茶。彼はマキナと祥子のクラスの担任の教師だ。担当は化学。
高校二年の春に椿山先生が赴任してきて以来、マキナは彼のクラスで日々勉強に励んでいる。
すると先生が、祥子に聞こえないように小さな声で囁いた。
「………白鹿。放課後、楽しみにしてるから」
先生の優しい声色に、マキナは満面の笑みを浮かべる。そして金色の髪を揺らしながら大きく頷いた。
年上の優しいマキナの恋人は、この人の事なのだ。
マキナは先生のお嫁さんになる為に、制服の着こなし以外は今日も優等生だ。
「………うんっ!!えへへ!!」
頬をほんの少しだけ上気させたマキナは、遅れて歩いてきた祥子と共に校舎へ向かってゆく。
祥子は椿山先生を一瞥すると、ただ会釈だけをして校舎に向かう。
どうも祥子は椿山先生が苦手なようで常に距離を取っている。
校舎からはチャイムの音が鳴り響いていた。
「やば!!マキナ急ごう!!!」
「やだ待ってよ祥子!!」
可愛らしい二人のギャルが笑い合いながら、校庭を駆けてゆく。
何時も通りの素敵な朝の風景だった。
マキナが指定された待ち合わせの場所は、マキナの家から五つ離れた所にある駅である。
其処は人通りも少なく、お忍びで逢うには丁度いい。
けれどデートとはいえど、することはとても限られていた。
マキナと先生の恋愛はとても清い。性的な事は卒業迄お預けだ。
なんとマキナはまだ、ファーストキスさえしていない。
土日に遊べる事になった時は、先生の家まで向かう。
する事は二人で先生の好きな映画と、マキナの好きな映画を見比べる事。
そして放課後遊ぶ事になった時は、公園の駐車場でおしゃべりをする。
時折抱き合う位のスキンシップはするものの、それ以上の事はしていない。
マキナは先生に、とても大切にされていると思っていた。
茜色の夕日に照らされながら先生の到着を待つ。マキナの金色の髪は朱くキラキラと輝いていた。
先生を待っているこの時間も好きだと、マキナは思う。
胸いっぱいに溢れ出した愛しさを噛み締めながら、恋人の到着を待っていた。
見慣れた車が駅のロータリーの中に入ってきた瞬間、マキナは目を輝かせる。
黒いセダンがハザードランプを光らせれば、小走りに助手席に歩み寄った。
マキナは車の中に飛び込む様にしながら、車を止めた先生に抱き付いた。
「はー…………せんせー逢いたかったぁ………!!!」
先生の大きな手が金色の髪を撫でながら、自分の方にマキナを引き寄せる。
その瞬間全身の血が沸騰するのではないかと思うほど、身体中が熱くなった。
彼は大人だからなのか、マキナと違って余裕がある。
派手な見た目をしている割に初心なマキナは、頬を真っ赤に染め上げて先生の腕に顔を埋めた。
そんなマキナを見ながら、先生は穏やかな笑みを浮かべた。
「学校で一日一緒にいたのに??」
「学校じゃせんせーに触れないじゃん…………!!せんせーの良い匂いがする………!!」
先生の身体からは何時も何となく優しい香りがする。例えるなら白檀の様な穏やかで安らぐ匂いだ。
隣にいるだけで幸せな気持ちになるとマキナは心から思う。
けれどマキナはある事を最近感じていた。
もう、キス位なら許されるんじゃないだろうか、と。
マキナが先生に告白したのは、ちょうど去年の今頃である。
六月の梅雨入り前の初夏だった。場所は放課後の科学準備室。それからもう、一年という時が流れたのだ。
こんなに清い関係を続けてきているのだから、キス位ならいいじゃないか。
キスなら挨拶の国だってあるとマキナは思う。
今日の星占いの結果もとても良かった。運命の恋は間違いなく先生の事に違いない。
最高の運勢とデートの予定が重なっているラッキーデーなら、きっとキス位許される。
一層の事気合を入れて、自分から先生にキスをするつもりでいた。
車を走らせる先生の横顔を眺めながら、形の良い唇を凝視する。
いざ今日こそはと思えば思うほど、物凄く緊張してしまう。
茹蛸の様に真っ赤な表情を浮かべたマキナは、膝の上で握りこぶしを作ろうとする。
すると付けていたネイルが、マキナの手のひらの肉に軽く食い込んだ。
「………どうしたのマキナ?暑い??顔真っ赤だよ??」
二人きりになった瞬間に、名前を呼んでくれるところが好きだとマキナは思う。
好きすぎて名前を呼ばれるだけで、目が潤むのが解った。
先生の一挙手一投足がマキナの心をゆらゆらと揺さぶる。それがとても心地いい。
マキナは照れた微笑みを浮かべながら、顔の前でパタパタと手を振った。
「あ………もう夏だし!?!?やっぱカーディガン着てると超アツいかも………!!!」
しどろもどろに誤魔化しながらマキナは静かに前を向く。
気が付くと辺りはとても暗くなり、自然のとても多い道路を車は走っていた。
大きな広場に出た瞬間、車は動きを止める。あたりの景色は余りに暗くて判別が出来ない。
すると先生は車のドアを開いて外に出た。
先に車から降りた先生を追いかけて、マキナも車のドアを開ける。
「まってせんせー!!どこ行くの!?!?」
マキナがそう叫んだ瞬間、目の前には満天の星空が広がった。
キラキラ光る宝石を散りばめたかの様な空は、余りに美しく感動的だ。
マキナはキラキラした眼差しで空を仰いだ。
「…………めっちゃ、綺麗……………」
目を潤ませて空を見上げるマキナの肩を、先生は優しく包み込む。
その時マキナは、先生の顔がとても近くにある事に気付いた。
『待ってこれ、キスすんなら今じゃね…………??』
マキナはそう思いながら、先生の方へ顔を向ける。
その瞬間マキナの大好きな先生の整った顔立ちが、ダイレクトに視界に入った。
バクバク心臓が鳴り響くのを感じながら、必死で先生に顔を寄せる。
けれどあと少しで唇という所で、どうしても気合が足らなかった。
キスというものはとても、気合と根性が必要になるとマキナは思う。
動けなくなって硬直したままのマキナに、先生は小さく笑う。
息遣いを感じられる程の近い距離感に、更にマキナは息を呑んだ。
先生の腕がマキナの身体を引き寄せれば、先生の唇がマキナの額に触れる。
ちゅっ、という音と柔らかい唇の感触を感じた時、マキナの呼吸は止まりそうになった。
「ふふ、マキナは可愛いね………大好きだよマキナ………」
先生の匂いに包まれながら、真っ赤な顔でマキナは瞬きを繰り返す。
そして、額でも息が止まりそうになってしまうなら、唇へのキスは夢のまた夢だと思った。
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