約束の未来~Re:set~

東 里胡

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第一章 リセットされた世界

1-3

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「紅の能力チカラは『時間操作能力』。その中の一つ、時間を巻き戻す能力だ。俺はそれを抑制する『時間制止能力』を持っている」

 まさか!?
 何を言っているの!?
 疑う私の前で、碧はいきなりお茶の入ったカップを空中に向かって放り投げる。

「危ないっ!!」

 お茶を被っちゃうかもしれない、カップが割れちゃうかもしれない。
 咄嗟に目を瞑ったけれど、いつまでも派手にコップが砕け散る音が聞こえない。

「見て?」

 何も音がしなくなった静寂の中、碧の言葉に目を開いた先に、カップは不自然に空中に停まっていた。
 放られたカップから飛び散る飛沫がいくつも丸くなり、下へと零れ落ちるはずだったお茶が落ちないままで空中に留まっている。
 初めて見たその違和感のありすぎる光景に言葉が出ない。

「二メートルくらい離れてくれる?」

 停まったカップのつまみを手に持った碧に促され、ソファーから立ち上がり、遠のくと。
 次の瞬間、お茶はテーブルへと大半が落ち、まだTシャツを着ていなかった碧の肌にも飛び散る。

「ちょっと片づけるね、布巾を持ってくる。紅はかかってない?」
「大丈夫……」

 立ちすくんだまま今見た光景をうまく頭の中で処理しきれないまま、碧を待っていると。
 タオルで体を拭いてきた碧は、布巾であちこちに散らばったお茶を丁寧に拭きあげた。

「ごめん、新しいの淹れてくる。冷めちゃったよね」

 まるで何事もなかったかのように、またTシャツを着る碧に感じる違和感。
 ねえ、碧。あなたは私の、なの?

「さっきの、誰にも言わないでよね」
「言ったって誰が信じるのよ、私が頭がおかしくなったって言われるだけ」

 それもそうだ、とバカにしたような薄ら笑いを浮かべる碧に、

「今って何年?」

 そう訊ねてみた。もう答えはわかっていたけれどね。

「二千二十五年、俺たちは今中学校三年生、もうすぐ夏休みが終わる」

 ああ、やっぱりそうか。

「オレが時間を停めた時、紅は動けたよね?」

 そういえば、と頷く。

「紅が時間を戻した時、俺も記憶を持ったまま戻ってた、いつも。意味がわかる?」
「……わかんない」
「なんでわかんないの? 紅は頭いいくせにね?」
「っ、知ってるんでしょ、どうせ!! 私本当はそんなに頭なんか良くない、全部インチキだったってこと!!」

 バカにしてるんだ、碧は!
 私が今までテストだって何だって時間巻き戻しては一番になってた、ってこと。
 全部知ってたくせに、どうして?
 唇を尖らして抗議しようとした私に、碧はクスリと物知り顔で笑う。

「オレが時間を止めてもこの世界で紅だけは止まらない。紅が時間を巻き戻してもオレの記憶は無くならない、元は同じ種族だからね」

 元は? だったら今は何?
 わからないことだらけの中で、二度目の中学三年生になった私と碧。
 碧しか知らない、私という存在。
 母だって、きっと知らない、ねえ、そうでしょう?
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