約束の未来~Re:set~

東 里胡

文字の大きさ
10 / 79
第一章 リセットされた世界

1-9

しおりを挟む
 十年のやり直しとか、とんでもないひっ迫した状況下の中、朝から三十度を超え、蝉の鳴き声がけたたましい小さな庭で、汗だくになって洗濯を干している自分は一体何者なんだろうか?
 この暑さが天罰なの? っていうぐらい、ギラギラと頭のてっぺんから私を容赦なく焦がそうとする太陽を、恨みがましく睨み上げる。
 ふと、一瞬蝉の鳴き声すら止み、全てが嘘のように感じる静寂に目を瞑ると太陽の残光が走る。
 実は十年後、裁判官をしていた自分こそが全て夢だったんじゃないかな、とか思い始めた。
 特殊能力チカラなんて全部私の妄想が創り出したものなんじゃないかな、とか。
 考え出すと、どれが現実でどれが夢なのかわからなくなりそうで、グラリと体が揺れる。
 しまった、熱中症気味かもしれない!
 
「え?」

 突然、頭の天辺から水が滴り落ちる。
 雨なんて優しいものじゃなく、ボタボタと大量に、まるでホースの水のように?
 私の頭に降り注ぐ水の出る方向に目を凝らした。

「おはよ、今日も暑いね」

 水撒きホースを私に向けた碧が、ひらひらと愉しそうに手を振っている。

「……何、してんのよ?」

 私が怒っているというのに、それでもまだホースの水を私に浴びせる続ける碧を睨む。

「だって暑そうだったし」

 悪びれることなく、汗一つかいていない顔で涼し気に笑う。

「着替えたら、そっちに行くから! ちょっと待ってて」

 一発ぶん殴らないと気がすまない。

「あ、いいよ、俺が今日は紅の家に行くから」
「はあ!?」

 来るな、つうか来ないで! 無言の抵抗で睨みつけた。

「母さんの体調が悪くてさ」

 そう言って微笑む碧の言葉の重たさに、私は何も言い返せなくなる。
 碧のお母さんはこの頃から病気がちで、通院したり時には長期に渡って入院していたりして、家にいる時も時々体調を崩していた。

「……二十分待って、着替える。ちゃんと玄関から入ってきなさいよ」

 そう言っておかないと碧は幼い頃のように、隔てる垣根を越えてベランダから入ってきそうなんだもの。
 すぐに部屋に戻って適当な服を引っ張り出す。
 どれもこれもセールで買ったTシャツばっか、首元も緩くなってきてる。
 碧だし、どうでもいいけど――。
 当時これも確かよく着てたな、とパーカーTシャツに袖を通し、膝下までのヨレヨレのサブリナパンツを履いた。

 昔から碧が私の家に来るのが本当に嫌だった。
 だって碧の家とは比べ物にならないほど、小さい家で恥ずかしかったからだ。
 木造の小さな庭のついた家。部屋数は三つ。八畳ほどの台所と居間がくっついた部屋、お母さんの部屋、そして私の部屋。
 小さく狭いこの家が恥ずかしくて、碧には来てほしくなかったんだ。
 着替え終り、玄関のドアを開けようとして居間に人のいる気配を感じた。

「勝手に入るなって言ったじゃん!!」

 無言でベランダから上がり込み、人の家の冷蔵庫開け、まるで自分の家のように麦茶を出して飲んでる碧は、私が怒っているのをみて首をかしげた。
 そうして、何か思い出したように
「お邪魔してます」
 と口元だけで微笑んだ。そういうことじゃないのよ!
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

商人でいこう!

八神
ファンタジー
「ようこそ。異世界『バルガルド』へ」

掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく

タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。 最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。

追放された公爵令息、神竜と共に辺境スローライフを満喫する〜無敵領主のまったり改革記〜

たまごころ
ファンタジー
無実の罪で辺境に追放された公爵令息アレン。 だが、その地では神竜アルディネアが眠っていた。 契約によって最強の力を得た彼は、戦いよりも「穏やかな暮らし」を選ぶ。 農地改革、温泉開発、魔導具づくり──次々と繁栄する辺境領。 そして、かつて彼を貶めた貴族たちが、その繁栄にひれ伏す時が来る。 戦わずとも勝つ、まったりざまぁ無双ファンタジー!

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

処理中です...