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第二章 間違い探しの日々
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例えば母との関係。
母は変わりなく、ずっとずっと私に優しい。
貧乏が嫌だった。鬱陶しいほどの愛を向けられるのが嫌だった。
いくら働いたって生活は楽にならず、本当は辛いのに何でそんなに頑張るの?
母に描いていたその感情は、二度目の人生の中で少しずつ薄らいでいる。
貧乏なのも変わりないし、負担はかけたくないから前と同じように、公立高校を受験するつもりだ。
一度目はただ、育ててくれた義理だけでも返そう、と裁判官になった後は、援助をしていただけだった。
二度目も、やはり裁判官になることを望んではいても、義理や援助とは思わない。
母に楽をさせてやりたいという気持ちが芽生えてしまった。
友達ができたこと、これも想定外だ。
できるわけがないと思っていたのに、気付けば残りの中学校生活、ミズキたちは日々私の周りにいた。
それだけで学校というものがただの勉強を学ぶ場ではなくて楽しいものであるような気もしてきている。
自分では気づかなかったけれど「紅ちゃんって笑うとかわいいんだよね」と言われて始めた。
そう言われて初めて、私笑ってるんだと、自分の自身の変化に驚いたりもした。
碧との関係性も一度目とは驚くほど変わっていた。
碧はこれを望んでいたのだろうか?
高校の合格発表は、碧と二人でHPからではなく現地で確認した。
私と同じように不安な目をした人ごみの中で、碧だけが自信に満ち溢れているように見えた。
他の人から見たら私も碧のように見えているのかもしれないけれど、それはいつものようにポーカフェイスを決め込んでいるからだ。
きっと大丈夫、やれるだけのことはやったし、自己採点でも合格ラインは超えていた。
トップ合格できたかどうか、そればかりはわからない。
でも今はそんなことよりも受かっているかどうかが大事なのだ。
1227、1227、1227
心の中で呟いた受験番号は、たくさんの数字の羅列の中で浮かび上がるように私の目に飛び込んでくる。
「や、った……」
誰にも聞こえないほどの呟きと、ガッツポーズに見えないだろうちっちゃな握りこぶしを作って、心に湧き上がる感動をそれで必死に抑え込んだ。
知らない人ばかりの中で体裁を崩さずにいるけれど、すぐ隣で泣くほど感動している人のように私も飛び跳ねでもしてみたらいのに――。
できないのは合格発表に碧がいるからだ。
この小さなガッツポーズでさえ、碧には見られたくなかった。
なのに、どうしてこうタイミングが悪い?
私のそんな瞬間をじっと見ていなくてもいいだろう?
……時間よ、戻れ、ガッツポーーズを取る前にと、念じたところで戻るわけないのはもう知っている。
人ごみの中でこっちを見ている碧が口角だけあげて笑っているのはとっても腹が立つ。
パッと踵を返して合格通知を受け取るために職員玄関へと急ぎ足になる私に碧も並びかけてきて。
「おめでと、紅」
「ありがとう、……碧もおめでと」
「ねえ、さっきさ、拳握ってたよね?」
「誰と見間違えてるの? するわけない」
ああ、今こそ拳を握りしめて、そのまま碧の整った顔面ど真ん中に打ち込みたい。
「また同じクラスになれるといいね? なれるかな?」
ニヤリと笑った碧の顔にその意味を思い出した。
そう、高校は入試の学力でクラス分けされることを忘れていた。
母は変わりなく、ずっとずっと私に優しい。
貧乏が嫌だった。鬱陶しいほどの愛を向けられるのが嫌だった。
いくら働いたって生活は楽にならず、本当は辛いのに何でそんなに頑張るの?
母に描いていたその感情は、二度目の人生の中で少しずつ薄らいでいる。
貧乏なのも変わりないし、負担はかけたくないから前と同じように、公立高校を受験するつもりだ。
一度目はただ、育ててくれた義理だけでも返そう、と裁判官になった後は、援助をしていただけだった。
二度目も、やはり裁判官になることを望んではいても、義理や援助とは思わない。
母に楽をさせてやりたいという気持ちが芽生えてしまった。
友達ができたこと、これも想定外だ。
できるわけがないと思っていたのに、気付けば残りの中学校生活、ミズキたちは日々私の周りにいた。
それだけで学校というものがただの勉強を学ぶ場ではなくて楽しいものであるような気もしてきている。
自分では気づかなかったけれど「紅ちゃんって笑うとかわいいんだよね」と言われて始めた。
そう言われて初めて、私笑ってるんだと、自分の自身の変化に驚いたりもした。
碧との関係性も一度目とは驚くほど変わっていた。
碧はこれを望んでいたのだろうか?
高校の合格発表は、碧と二人でHPからではなく現地で確認した。
私と同じように不安な目をした人ごみの中で、碧だけが自信に満ち溢れているように見えた。
他の人から見たら私も碧のように見えているのかもしれないけれど、それはいつものようにポーカフェイスを決め込んでいるからだ。
きっと大丈夫、やれるだけのことはやったし、自己採点でも合格ラインは超えていた。
トップ合格できたかどうか、そればかりはわからない。
でも今はそんなことよりも受かっているかどうかが大事なのだ。
1227、1227、1227
心の中で呟いた受験番号は、たくさんの数字の羅列の中で浮かび上がるように私の目に飛び込んでくる。
「や、った……」
誰にも聞こえないほどの呟きと、ガッツポーズに見えないだろうちっちゃな握りこぶしを作って、心に湧き上がる感動をそれで必死に抑え込んだ。
知らない人ばかりの中で体裁を崩さずにいるけれど、すぐ隣で泣くほど感動している人のように私も飛び跳ねでもしてみたらいのに――。
できないのは合格発表に碧がいるからだ。
この小さなガッツポーズでさえ、碧には見られたくなかった。
なのに、どうしてこうタイミングが悪い?
私のそんな瞬間をじっと見ていなくてもいいだろう?
……時間よ、戻れ、ガッツポーーズを取る前にと、念じたところで戻るわけないのはもう知っている。
人ごみの中でこっちを見ている碧が口角だけあげて笑っているのはとっても腹が立つ。
パッと踵を返して合格通知を受け取るために職員玄関へと急ぎ足になる私に碧も並びかけてきて。
「おめでと、紅」
「ありがとう、……碧もおめでと」
「ねえ、さっきさ、拳握ってたよね?」
「誰と見間違えてるの? するわけない」
ああ、今こそ拳を握りしめて、そのまま碧の整った顔面ど真ん中に打ち込みたい。
「また同じクラスになれるといいね? なれるかな?」
ニヤリと笑った碧の顔にその意味を思い出した。
そう、高校は入試の学力でクラス分けされることを忘れていた。
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