約束の未来~Re:set~

東 里胡

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第三章 新しい自分

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「紅、宵くん、今日はもう上がっていいよ」

 いつもよりも早い声掛けに首を傾げたら、今日は新しい先生方の歓迎会があり終わったら皆で食事会になるらしい。
 大人たちのお酒の席に私たち高校生を誘うことはない。
 ただ母は私に伝え忘れていたことを今更思い出したらしい、そういう人だ。

「ごめんね、あ、ねえ。夕飯! 二人ともコレで食べて帰んなさい」

 と私の手に三千円も押し付けてくる。
 え? ちょっと待って? それって、宵とってこと!? 冗談でしょ!
 こんなのと二人でご飯なんて、家でお茶漬けでも食べてた方がよっぽどマシだ。
 いらない、と私が口にする一瞬早く。

「え? いいんですか!? うわあ、嬉しいです!! あ、ちゃんと紅ちゃんのことは送っていきますんで、心配なさらずに」
「ありがとう、さすが宵くん!! ごめんね、うちの子一応女の子だから夜道が心配だったの。助かるわ!」

 ……、ああ、私の入る余地なしだ。
 手に握られたお札をギュッと握りしめた。
 お母さん、娘を世の中で一番危険なやつに託しちゃいましたよ?
 ため息しか出ない。

「紅ちゃん、どこ行こっか? ファミレスがいいな」
「最初からファミレスがいいなら、どこ行こうか、なんて言わないでよね」
「いつも冷たいんだもんなあ、でもまたそれがいいんだけどね、紅ちゃんのツンデレ」
「デレしたことない!!」
「いいのに? オレにはデレて欲しい」

 どうしてこういう時に限って碧がいないんだろう。
 ……、お母さんの身体の具合が悪いから付き添っているんだろうな、きっと。
 横に並ぶのが宵であることに違和感を抱きつつ、碧の心配をした。

「何食べよっかなあ?」
「適当でいいでしょ、勝手に頼んであげる」
「え、待って、紅ちゃん!! まだオレちゃんと決めてないってば」

 そうむくれた宵の前に、お水を運んできた店員さんが、ボーッと彼を見つめている。
 
「お姉さん、オススメってどれ? 教えて」

 甘えたような宵の問いかけに、店員さんは顔を真っ赤にしながらオススメを教えてくれて恥ずかしそうに戻っていく。
 うん、また無自覚の人たらししてる。

「紅ちゃんは何にするの?」
「……ミートグラタンセット」
「じゃあオレはチーズバーグセットにしよっと、あとドリンクバーも二つ」
「え、」

 そう言ってタブレットで勝手に注文を始めるた宵にため息が出た。
 ああもうドリバなるものを注文してしまったら、元を取りたくなって長居しちゃうじゃない。
 そもそもいつも母と二人の時にもそれは注文してなかったのに、遠慮なさすぎる宵が恨めしい。

「行こ、紅ちゃん、何飲もうかな~!」

 ねえ、遠慮って知ってる? 日本人が得意なもの!!
 でも、そっか、そもそも日本人ではないのだ。
 でも、まあ、いいか。
 ……何か腹立つけれど、宵の笑顔が心の底から楽しそうなので仕方なく私も飲み物を取りに向かった。
 私たちのテーブルを通りかかる人たちは皆一様に宵の端正な顔立ちに気づいて頬を赤らめて行く。
 気付けば遠巻きに皆こちらをチラチラ眺めているのだ。

「紅ちゃんとデートしてるみたいで楽しいなあ、今日は邪魔者あおくんもいないし」
「多分今日のこと知ったら碧はすっごく怒ると思う」
「なんで?」

 なんで?
 ……なんでだろう?
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