約束の未来~Re:set~

東 里胡

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第三章 新しい自分

3-9

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「覚悟はしてたんだけど実を言うと希望は持っていたのも確か。言ったでしょ、前の人生と今の人生では若干変わってるって」

 碧は覚えていた。
 覚えていて一人でずっと、その希望を抱えて生きてきたのだ。

「早く相談しなさいよ」
「できないよ、せっかく紅が全うな人生を歩みだしているってのに。予知でしかないこの先を教えてあげることはできない」

 何よ、それ。

「そうじゃないよ、それを教えろって言ってるんじゃなくて。この夏、碧はずっとおかしかった。お医者さんから聞かされたからでしょう? その時に言ってよ、バカ」

 頬を膨らませた刺激のせいだ。
 落ちてくるものを一瞬碧に見られて俯いた。
 
「また紅に愚痴っても、いい?」

 諦めたような碧の声が悲しい。

「いいに決まってんじゃん!!」

 つっけんどんにそう言い放ったら、碧はもう一度私を抱きしめた。

 その秋、小雨が降りしきる冬のように寒い日の朝、碧のお母さんは眠るように亡くなった。
 その雨は葬儀が終わっても尚おばさんの涙のように、しとしとと悲し気に降り続いていた。
 私は母と二人、お通夜や葬儀に出席した。
 棺の中に横たわるおばさんは、本当に眠っているようなお顔だったから、「おばさん」と声をかけそうになって……、目を覚ますことはもう無いのだと唇をかんだ。
 花を添えながら感じる体温の無くなった身体に、ようやっと現実を思い知らされた。

 葬儀が終わり隣の家が静かになった後で、碧と碧のお父さんに食べて欲しくて多めに作ったシチューを届けに向かう。
 きっと家政婦さんが来てくれてるかもしれないけれど、何か温かいものを差し入れたくて、母と二人で作ったのだ。
 家には少し痩せて寂しそうな顔をしたお父さんしかいなくて、碧はさっきどこか出かけた、と教えてもらった。
 碧は、何となくあの日話した公園にいるような気がして、そのまま走った。
 小雨だからと傘も持ってなかったけれど、これぐらいなら平気。
 それよりも早く、早く、碧に会わなくちゃ。
 公園の隅に一人、空を見上げ、雨を浴びるようにして立っていた碧を見て、デジャヴのように、昔見たあの光景を思い出した。
 同じだ、あの日の碧がいる。

 私はあの日、同じように碧を探しに来て声をかけられずに、碧を置き去りにした。

 でも、今は違うよ?
 駆け寄った私はポケットに入ってたハンカチで碧の顔をゴシゴシと拭いた。
 突然現れた私がそんなことするもんだから、碧は面食らったような顔をして、それから、ふっと微笑んだ。

「ありがと、紅」

 抱き寄せられたその腕の中で、私も碧と同じように泣いた。
 抱きしめあって時々声を上げながら悲しみを分け合った。
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