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15.いつか、月あかりの下で
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「風花ちゃん、もういい加減にしなよ、どうして一人で何とかしようと思うわけ?」
祥太朗さんの後ろには、美咲さんも桃ちゃんも、洸太朗くんや勇気さん、マスターまで。
どうして?
「先回りしてたんだよ、だからさっきの二人のやり取りも一部始終見てた」
「あの叔母さん、絶対風花さんのこと良いように使おうとしてんじゃん」
洸太朗くんが珍しく怒っている。
「叔母さんって、風花ちゃんが前に言っていたあの人でしょ?」
「昨日の話しで引っかかってた。風花ちゃんに叔父さんを介護させようとしてる。風花さんに働かせてお金も入れさせようとしてると思うよ」
わかってる、全部全部わかってるけど。
「風花? 誰なの? その人たち」
戻らない私に苛立った叔母が、こちらに向かってくる。
会わせたくなかった。
昨日、マスターにだって会わせたくなかったのに……。
「風花ちゃんの叔母さんですよね? はじめまして! 私たち、一緒に暮らしている者です」
少し前まで眉間にしわを寄せていた叔母が、美咲さんの挨拶に笑顔を作る。
「まあ、一緒に? こんなに大勢の方々と? あ、あなたは昨日の店長さんよね」
「ええ、俺は一緒には暮らしてませんが、ここにいる全員と家族同様にお付き合いさせて頂いております」
「そうなの? 風花、東京でこんなにたくさんお友達ができていたのね、寂しくなかったのね。叔母さん本当に安心したわ」
目頭を押さえて鼻をすする叔母さんに、私の心はまた凍り付いていく。
「ただ、ね……、私もまたあんたと一緒に暮らしたいのよ、風花。だって、この数年、顔も見せてくれなかったでしょう? 一度も家に戻って来てくれなかったでしょう? そりゃ、叔母さんは本当の母親じゃない、叔父さんだってそう。だけど、それでもね、親だと思ってたの、私たち。だから、あんたを思い出さない日は一度もなかった。昨日も言ったように、叔父さんはもう長くないと思う。せめて、それまでの間、昔のように一緒に暮らせないかしら? 戻ってきてほしいのよ、風花に。その後は自由にしていいから、それまでは私たちの娘でいてくれないかしら? ねえ」
私を抱きしめ、切実に訴える叔母さんの泣き声が東京駅の構内に響き渡っている。
昔のように一緒に暮らす?
あの夏の日の、叔父のいやらしい顔を思い出して目の前が真っ暗になる。
その後は自由にしていい?
その後っていつ? ねえ、いつになったら私は自由になれるの……?
叔母さんの肩越しに皆の顔が見えた。
皆、一様に怒っているような呆れているような顔で私と叔母さんを見ていた。
そう、関わるとロクなことになどならないのだ。
わかった、一緒に帰ろう。
叔母さんの目的を果たしてあげれば、きっと満足いくのだろう。
そうすればきっと榛名家には関わらないはずだ。
「叔母さん、あの」
「大変申し訳ありませんが、風花をそちらに戻す気はありません」
一緒に帰ろうと伝えるつもりが祥太朗さんが私の言葉を遮った。
そればかりか、私を叔母さんから引き離すように肩を抱き、遠ざかる。
叔母さんは一体なにが起きたのかと顔をあげる。
涙など一滴も流れていない目で、私と祥太朗さんを交互に見比べている。
「あなたは、どなた?」
「榛名祥太朗と申します。近々風花さんと入籍する予定の者です」
え? えええええ!?
「風花、本当なの?」
慌てている私の様子に叔母さんは疑問を抱いているようだ。
「本当です。ね、風花?」
私の肩を強く抱き、同意するようにと祥太朗さんの目が物語っている。
大丈夫、絶対なんとかするから、と少しだけ微笑んでくれてる気がしたから。
だから私もうなずいてみせた。
「俺が、いえ、ここにいる全員が今、風花のこと家族だと思っています。叔母さんのように、血の繋がりはないけれど、お互いのことを皆大事に思っています。誰かが困っていたら助け合う、そんな関係です。決して、風花一人に面倒事を押し付けるような関係じゃないので安心して下さい」
「っ、なっ」
ニッコリと笑ってそう言い切った祥太朗さんに叔母さんは、真っ赤になって言葉に詰まる。
「誰よりも大事にします。風花の笑顔を守っていくので、俺たちの結婚を許してくださいませんか?」
大きな声でペコリと頭を下げた祥太朗さん。
響いたその声に通りすがりの人たちがパチパチパチと拍手をくれたり、「おめでとう、幸せになれよ」なんて声をかけてくれている。
「私たち全員、風花ちゃんが大好きなんです。だから連れて行かないで下さい」
桃ちゃんが泣きながら叔母さんに詰め寄る。
「大丈夫よ、桃ちゃん。叔母さんは、風花ちゃんのこと本当の娘のように思ってるのよ? 娘の幸せを願わない親がどこにいるっていうの?」
美咲さんの言葉に、叔母さんは目を見開く。
「というわけで、叔母さん、今日まで風花さんのこと見守って下さり本当にありがとうございました。気を付けて長野に帰ってくださいね」
勇気さんがニッと笑った。
「あ、ちょっと待って下さいね」
洸太朗くんが美咲さんに耳打ちされてみどりの券売機に走る。
「お土産にはならないかもですが、どうぞ。俺たちからの餞別です。というか、後八分ほどで出発するんで、早くホームに走った方がいいですよ」
洸太朗くんが叔母さんの手に新幹線のチケットを握らせている。
「じゃあ、俺からはこれを、気を付けてお帰り下さい」
すぐ側の自動販売機で買った珈琲を叔母さんに押し付けるマスター。
全員の顔を見まわして、最後に私をギロリと睨んで、チッと舌打ちをした叔母さんは。
「許さないからね、風花」
「叔母さん……、ごめんなさい。私は、ここに……、皆と一緒にいたいから行けません。もう一緒には暮らせません」
「風花っ!! あんたって子は」
私に近づいてきて、勢いよく高く挙げた手に叩かれるだろうと目をつぶったのに、一向に当らない。
ゆっくり目を開いたら、叔母さんの手は勇気さんに掴まれていた。
「叔母さん、こういうの暴力行為になりますよ? 警察呼びましょうか? 全員証明できるので、言動には気を付けて~!」
「うるさいっ!」
「というか、マジで時間やばくない? あと三分、ほらほら走った方がいいですよ」
勇気さんに手を離された叔母さんが舌打ちをしながら、小走りに改札をくぐっていく。
振り返ることなくエスカレーターに吸い込まれていく背中が見えなくなってから。
力が抜けて床にへたり込みそうになるのを、祥太朗さんに支えられ、皆にもみくちゃにされて、泣き笑いをした。
祥太朗さんの後ろには、美咲さんも桃ちゃんも、洸太朗くんや勇気さん、マスターまで。
どうして?
「先回りしてたんだよ、だからさっきの二人のやり取りも一部始終見てた」
「あの叔母さん、絶対風花さんのこと良いように使おうとしてんじゃん」
洸太朗くんが珍しく怒っている。
「叔母さんって、風花ちゃんが前に言っていたあの人でしょ?」
「昨日の話しで引っかかってた。風花ちゃんに叔父さんを介護させようとしてる。風花さんに働かせてお金も入れさせようとしてると思うよ」
わかってる、全部全部わかってるけど。
「風花? 誰なの? その人たち」
戻らない私に苛立った叔母が、こちらに向かってくる。
会わせたくなかった。
昨日、マスターにだって会わせたくなかったのに……。
「風花ちゃんの叔母さんですよね? はじめまして! 私たち、一緒に暮らしている者です」
少し前まで眉間にしわを寄せていた叔母が、美咲さんの挨拶に笑顔を作る。
「まあ、一緒に? こんなに大勢の方々と? あ、あなたは昨日の店長さんよね」
「ええ、俺は一緒には暮らしてませんが、ここにいる全員と家族同様にお付き合いさせて頂いております」
「そうなの? 風花、東京でこんなにたくさんお友達ができていたのね、寂しくなかったのね。叔母さん本当に安心したわ」
目頭を押さえて鼻をすする叔母さんに、私の心はまた凍り付いていく。
「ただ、ね……、私もまたあんたと一緒に暮らしたいのよ、風花。だって、この数年、顔も見せてくれなかったでしょう? 一度も家に戻って来てくれなかったでしょう? そりゃ、叔母さんは本当の母親じゃない、叔父さんだってそう。だけど、それでもね、親だと思ってたの、私たち。だから、あんたを思い出さない日は一度もなかった。昨日も言ったように、叔父さんはもう長くないと思う。せめて、それまでの間、昔のように一緒に暮らせないかしら? 戻ってきてほしいのよ、風花に。その後は自由にしていいから、それまでは私たちの娘でいてくれないかしら? ねえ」
私を抱きしめ、切実に訴える叔母さんの泣き声が東京駅の構内に響き渡っている。
昔のように一緒に暮らす?
あの夏の日の、叔父のいやらしい顔を思い出して目の前が真っ暗になる。
その後は自由にしていい?
その後っていつ? ねえ、いつになったら私は自由になれるの……?
叔母さんの肩越しに皆の顔が見えた。
皆、一様に怒っているような呆れているような顔で私と叔母さんを見ていた。
そう、関わるとロクなことになどならないのだ。
わかった、一緒に帰ろう。
叔母さんの目的を果たしてあげれば、きっと満足いくのだろう。
そうすればきっと榛名家には関わらないはずだ。
「叔母さん、あの」
「大変申し訳ありませんが、風花をそちらに戻す気はありません」
一緒に帰ろうと伝えるつもりが祥太朗さんが私の言葉を遮った。
そればかりか、私を叔母さんから引き離すように肩を抱き、遠ざかる。
叔母さんは一体なにが起きたのかと顔をあげる。
涙など一滴も流れていない目で、私と祥太朗さんを交互に見比べている。
「あなたは、どなた?」
「榛名祥太朗と申します。近々風花さんと入籍する予定の者です」
え? えええええ!?
「風花、本当なの?」
慌てている私の様子に叔母さんは疑問を抱いているようだ。
「本当です。ね、風花?」
私の肩を強く抱き、同意するようにと祥太朗さんの目が物語っている。
大丈夫、絶対なんとかするから、と少しだけ微笑んでくれてる気がしたから。
だから私もうなずいてみせた。
「俺が、いえ、ここにいる全員が今、風花のこと家族だと思っています。叔母さんのように、血の繋がりはないけれど、お互いのことを皆大事に思っています。誰かが困っていたら助け合う、そんな関係です。決して、風花一人に面倒事を押し付けるような関係じゃないので安心して下さい」
「っ、なっ」
ニッコリと笑ってそう言い切った祥太朗さんに叔母さんは、真っ赤になって言葉に詰まる。
「誰よりも大事にします。風花の笑顔を守っていくので、俺たちの結婚を許してくださいませんか?」
大きな声でペコリと頭を下げた祥太朗さん。
響いたその声に通りすがりの人たちがパチパチパチと拍手をくれたり、「おめでとう、幸せになれよ」なんて声をかけてくれている。
「私たち全員、風花ちゃんが大好きなんです。だから連れて行かないで下さい」
桃ちゃんが泣きながら叔母さんに詰め寄る。
「大丈夫よ、桃ちゃん。叔母さんは、風花ちゃんのこと本当の娘のように思ってるのよ? 娘の幸せを願わない親がどこにいるっていうの?」
美咲さんの言葉に、叔母さんは目を見開く。
「というわけで、叔母さん、今日まで風花さんのこと見守って下さり本当にありがとうございました。気を付けて長野に帰ってくださいね」
勇気さんがニッと笑った。
「あ、ちょっと待って下さいね」
洸太朗くんが美咲さんに耳打ちされてみどりの券売機に走る。
「お土産にはならないかもですが、どうぞ。俺たちからの餞別です。というか、後八分ほどで出発するんで、早くホームに走った方がいいですよ」
洸太朗くんが叔母さんの手に新幹線のチケットを握らせている。
「じゃあ、俺からはこれを、気を付けてお帰り下さい」
すぐ側の自動販売機で買った珈琲を叔母さんに押し付けるマスター。
全員の顔を見まわして、最後に私をギロリと睨んで、チッと舌打ちをした叔母さんは。
「許さないからね、風花」
「叔母さん……、ごめんなさい。私は、ここに……、皆と一緒にいたいから行けません。もう一緒には暮らせません」
「風花っ!! あんたって子は」
私に近づいてきて、勢いよく高く挙げた手に叩かれるだろうと目をつぶったのに、一向に当らない。
ゆっくり目を開いたら、叔母さんの手は勇気さんに掴まれていた。
「叔母さん、こういうの暴力行為になりますよ? 警察呼びましょうか? 全員証明できるので、言動には気を付けて~!」
「うるさいっ!」
「というか、マジで時間やばくない? あと三分、ほらほら走った方がいいですよ」
勇気さんに手を離された叔母さんが舌打ちをしながら、小走りに改札をくぐっていく。
振り返ることなくエスカレーターに吸い込まれていく背中が見えなくなってから。
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