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婚約破棄宣言
しおりを挟む「ユーフォリア・アルマニー侯爵令嬢に告げる。私、アルヴィン・シンフォニアとの婚約を破棄する。」
王城の中の静かな舞踏室に
この国の第2王子である
アルヴィン・シンフォニアの声が
響き渡る。
しんと静まり返る舞踏室にいるのは
彼と告げられたユーフォリアだけではない。
アルヴィン殿下の傍にいる
メリヤ男爵令嬢の他に
たくさんの貴族たちが溢れかえっている。
そんな大勢いる場所に
誰も話さずに静まり返っているのは
皆が事の成り行きを見守っているからだ。
ユーフォリアは
アルヴィン殿下をじっと見つめたのち
その傍らにいるメリヤに視線を向ける。
おどおどと辺りを見回したり
アルヴィン殿下とユーフォリアを
何度も交互に見やる。
目には今にも溢れんばかりの涙を溜めている。
何も言わないユーフォリアに
アルヴィン殿下は顔を徐々に顰めていく。
握り締めている己の指が
白くなるほどきつく握っているのはきっと
この宣言は彼が本意で言いたかった事ではないのがわかる。
アルヴィン殿下は…
アルは…
「あ、あ、あの!アルヴィン様?」
事の成り行きを誰もが見守る中
メリヤはアルヴィンを見上げて
声をかける。
そっと彼の腕に自分の手を添える仕草には
一つもぎこちなさがない。
声をかけられても
アルヴィンは一度もメリヤを見ずに
真っ直ぐにユーフォリアを見つめている。
ユーフォリアはそんな二人を見て
一度目を瞑ると
ゆっくり目を開けて
ふふっと口元をわずかに綻ばせた。
「…っ!」
そのユーフォリアの表情を見るなり
アルヴィンは顔を歪ませる。
「…リア!私はやはり!リアのことが!」
アルヴィンが再びユーフォリアに
言おうとした時
静まり返っていた舞踏室の扉が
音を立てて開く。
そしてだれかが大きく入ってきた人物の名前を声高らかに叫ぶように言った。
「シンフォニア国、第1王子
ケルヴィン・シンフォニア様のご到着です。」
その名前を聞いた貴族たちが
一斉に驚いたように扉付近に立つ
この国の第1王子に視線を向ける。
それまで静まっていた舞踏室は
一瞬にして騒ぎ始めた。
(ずっと留学していた第1王子なのか!?)
(何年も彼を見ませんでしたわ)
(帰ってきたのか!?)
周りの貴族たちが忙しなく
騒いでいる中、
第1王子であるケルヴィンは
ユーフォリア達を見据えると
その歩を踏み出す。
その主君のオーラを纏うケルヴィンに
行く手を阻んでいたモノ達が
自然と左右に分かれて
一寸も彼の歩みを邪魔しない。
ケルヴィンは真っ直ぐに
ただ一人ユーフォリアだけを見つめて
歩き出しやがて彼女の前で止まる。
「リア。ただいま。」
ケルヴィンはユーフォリアの
小さい頬に触れると愛しさが溢れる
眼差しでユーフォリアを見つめた。
「お帰りなさい。ケルヴィン様。」
ユーフォリアもまた
その瞳に自分だけが映つるのを見て
視界が歪んでいくのも忘れて
震える声で彼を出迎えた。
「ずっと待たせたね。結婚しようリア」
「はい。喜んで。」
ずっと待ち続けた彼が
ようやく私だけを見つめている。
どれだけこの時を待ったことか。
どれだけ彼を恋しく思っていたことか。
もう二度と離れたくない。
もう二度と離さないでほしい。
もう二度と彼以外が自分を誰かの婚約者だと言わせないでほしい。
まるでこの場に二人だけしか
いないような空気を放つ二人に
少し離れた玉座に座っていた国王が
ゴホンとわざとらしい咳払いをしたのち
舞踏室の全体に聞こえるように
大きく宣言した。
「この時をもってアルヴィン・シンフォニアとユーフォリア・アルマニーの婚約を破棄すると共に
ケルヴィン・シンフォニアとユーフォリア・アルマニーの婚約を宣言とし
ケルヴィン・シンフォニアを時期国王と定め王太子に任命する。」
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