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隣国の噂
しおりを挟む「アル。手紙が来ないの。」
雲ひとつない晴天の昼下がり。
ここ半年ほど思い悩んでいた
ケルヴィンからの手紙が来ないことを
ついにアルヴィンに伝えた。
「もしかしてずっと悩んでいたのはそのこと?」
コクンと小さく頷く。
アルヴィンはそうか。と言ったまま
次の言葉を発することはなかった。
長い沈黙の後アルヴィンは
ポツリと言った。
「リア。兄上のこと信じて待っててあげて。」
アルヴィンはそう言って
ユーフォリアの背中を撫でてくれる。
その優しさがずっと心細かった
ユーフォリアの涙腺を刺激した途端
溜め込んでいた涙が次から次へと
溢れてでてくる。
ケルヴィンが旅立ってすぐの頃は
人目を忍ばずに所構わず
泣きまくった。
ただただ寂しくて寂しくて。
それでも手紙が届き始めて
このままではダメだと思った。
泣いて待ってるだけでは
違う国で一人で戦っている
ケルヴィンの隣は相応しくないと思ったから。
だから人前では絶対に泣かない
って決めた。
どんなに仲のいいアルヴィンの前でも
大好きな家族の前でも。
そんなユーフォリアに家族は
褒めてくれた。
強くなったなって。
アルヴィンは無理すんなって
何度も言って慰めてくれてたけど
それでも泣くのを我慢した。
だけどずっと溜め込んでいた
気持ちとここ最近の不安が
一気に爆発したように止めどなく
涙が溢れかえってしまった。
強くなって待っているつもりでいた。
届かなくなった手紙を
なんて事のないように周りに振る舞えた。
アルヴィンにだけは伝えることは
難しかったけど
それでも我慢できていたのに。
「アル。私さびしい。」
アルヴィンはそんな弱い私を
ただ黙ってそっと抱きしめてくれた。
ユーフォリアの涙でアルヴィンの
着ているシャツがどんどん濡れて
染みになるのも厭わずに
ユーフォリアが落ち着くまで
アルヴィンはずっと背中をさすってくれた。
そんな最中。
悪いことは追い討ちをかけるように
やってくる。
その噂を聞いたのは
社交シーズンの時だった。
ケルヴィンが留学に行って
2年目に差し掛かる頃。
王都中に集まった貴族たちが
毎晩どこかの屋敷で舞踏会やお茶会など
さまざまな催しで
社交シーズンを謳歌していた。
侯爵家の令嬢で第2王子の婚約者であるユーフォリアにも
沢山の招待状が届き
連日連夜社交に明け暮れていた。
少しでもケルヴィンのことが
知りたくて下級貴族であるが
隣国と接している男爵家の舞踏会に
足を運んだこと。
下級貴族の男爵家のタウンハウスで
行われる舞踏会は王宮や
アルマニー家主催のものと違い
こじんまりとしていた。
まさかそんなところに
シンフォニア国の第2王子とその婚約者がくるなんて。
と男爵も招待客も皆驚いていた。
アルヴィンはあまり上級貴族が
縁のない下級貴族の社交に行くのは
政治的理由で好ましくないと
行くのを最後まで渋っていたのだが
今思えばそれはユーフォリアには
聞かれたくない話があったからだった。
「リア!待って!止まれ!」
ずんずんと玄関に向かって
下を向きながら足早に
歩くユーフォリアの腕を
後から追いかけてきてくれた
アルヴィンに捕まられ強引に
歩みを止めさせられる。
「離して!今すぐ隣国にいかないと!」
思っていたよりも
大きな声が出てしまう。
それでもユーフォリアには
この瞬間周りのことに気にかける
余裕などなかった。
「リアが行った所で意味なんかないんだ。兄上は兄上の意志で王女の側にいる。国のためにだ!それ以外何もない!
だからリアが心配することなんて何ひとつない!」
「嘘よ!だって手紙だってくれなくなった!あの面倒くさがりのケルヴィン様が毎日一緒にいるくらいだもの!国のためなんかじゃなくて!ほんとは!ほんとは…」
この先は口に出して言えなかった。
考えることもしたくなかった。
(ケルヴィン様の心はもう…)
思えば手紙をいただいた2ヶ月後には
ケルヴィンは隣国が大好きになったと
書いてあった。
隣国の人々はすごくいい人たちだって。
手紙のあちこちにその人たちの良さや
国のことばかり書かれていた。
その人たちって王女様?
「リア。心配するな。お前はただ馬鹿みたいに信じて待っていればいいんだ。」
掴んでいた腕を優しく引いて
アルヴィンはユーフォリアを
その胸に優しく包み込んだ。
アルヴィンを信じたい。
ケルヴィンを信じて待っていたい。
そう思うのに。
どうしてこんなに心が苦しくなるの?
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