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婚約者の浮気
しおりを挟む事の始まりは先週あたり。
アルヴィンが珍しく
お茶会を欠席した。
その時はなんだかんだ
やっぱり気まずかったのかなと
気落ちしていたんだけど…
まさかアルヴィンがやらかすとは
思いもよらなかったよ。
「お嬢様。アルヴィン殿下から急ぎ今夜ご訪問したいとの先触れがありましたが
どうされますか?」
「アルが?」
アルヴィンがお茶を欠席した日の夕方。
早々に帰宅して王都の屋敷で
寛いでいたころ
侍女のひとりが
アルヴィンの先触れを告げてきた。
欠席の謝罪なのかと一瞬思いもしたが
アルヴィンにかぎって
そんなことで謝るたちではないなと
思って考えるも何も思い浮かばず。
そうこうしているうちにアルヴィンは
やってきた。
「リア。すまないやらかした。」
応接室に案内してから
侍女がお茶を用意した後
アルヴィンが皆を下がらせてから
真剣な顔でユーフォリアに謝ってきた。
「は?」
「すまない。」
理由もなく謝るアルヴィンに
ユーフォリアは首輪傾げる。
「何をやらかしたの?」
「女に騙された。」
そう言ってアルヴィンは頭を抱える。
いやいや。待って。
ちゃんと説明して。
「どうしたの?」
勤めて平静にアルヴィンの横に
座ってから手を取って
アルヴィンの様子をうかがう。
「兄上のことを少しでもリアに伝えたくて。こないだ夜会で出向いた男爵の屋敷に通っていたんだが、そこの令嬢に騙された。」
ケルヴィンの留学の間
国王様の補佐を一人で背負っていた
アルヴィンは忙しい。
なのにユーフォリアのために
わざわざ時間を割いてまで調べてくれたのか。
「何を騙されたの?」
「通っているうちに男爵と打ち解けて
そのうち娘を紹介されたんだ。まぁ王子に娘を紹介して嫁候補にと企むことはよくあることだし男爵自身は家族をただ紹介したに過ぎないんだが…」
一応ユーフォリアという婚約者が
いるにも関わらず
魅力的なアルヴィン第2王子に
第二夫人や愛人でもいいからと
娘を紹介してくる貴族も少なくはない。
「その娘がまさか薬を盛ってくるなんて思わなかった。」
片手で顔をおおってから
天を仰ぐアルヴィン。
ユーフォリアは慌てて
立ち上がりアルヴィンの顔を両手で覆う。
「リ、リア?」
ユーフォリアの行動に驚き
目を丸くするがユーフォリアは
気にせずにアルヴィンの顔を左右に動かしたりしてなにかを確認していた。
「薬を盛られたなんて!どこも怪我してない?熱はあるの!?」
額に手を当てて熱を確認したり
まぶたの皮膚を無理やりひろげて
眼球を確認したりとやりたい放題だ。
「た、ただの眠り薬だ!」
慌ててユーフォリアの手を掴み
そのまま強引にとなりに座らさせた。
「副作用は!?」
「ない。安心しろ。」
そう。とやっと安堵の息をもらして
脱力したように座る。
アルヴィンはユーフォリアの
行動に驚いたものの心配してくれた事が
少しだけ嬉しく思い口元が僅かに綻ぶ。
けれどユーフォリアは気付かない。
「まぁ、それで起きたら令嬢と一緒の寝台にいた。」
「…は?」
安堵したのもつかの間
またアルヴィンが怪しいことを言い出した。
勢いよく隣のアルヴィンを見る。
アルヴィンはハハと呆れたように笑っていた。
「いやいやいや!大事件じゃない!それで!?それでどうなったの!?」
「一応この国の第2王子で婚約者のいる身だということで男爵家の方で内密してもらっているが、どうやらその娘の方がそのことに不満を持っていて…」
「い、一応聞くけど何もしてないんでしょ?!」
「あ!当たり前だ!そんな不届きなこと私はしない!」
ブンブンと勢いよく頭を振る。
その大げさなところが僅かに怪しさを増すということをアルヴィンは知らないみたいだ。
まぁアルヴィンに限って
そんなバカなことをしないのはわかるが。
「既成事実をでっち上げてあなたの嫁になろうとしたのね。」
「そういう事だ。帰り際のあの様子だと恐らく娘本人が言いふらしてしまうだろう。」
困ったことになってしまった。
ケルヴィンがまだ留学している間に
もしアルヴィンとの婚約が取り消しに
なってしまったらどうなるのだろう。
元々はケルヴィンと婚約する予定だったとはいえ
今はアルヴィンの婚約者だ。
周りの貴族たちはそう思っているし
噂が広まれば醜聞は免れない。
それにアルヴィンは眠らさせれていた
だけだと言っていたけど
その眠っている間に何もなかったとは
断言できない。
知っているのはその女性だけだ。
このままいけばアルヴィンは
たとえ噂だとしても不誠実な男だと
レッテルを貼られてしまう。
アルヴィンはユーフォリアのために
動いてくれていただけなのに。
「リアには非常に申し訳ないが
色々考えて私はその娘の思惑に乗ろうかと思う。」
考え込んでいたらまたも
アルヴィンは信じられない事を言う。
「そんなことしたらアルマニー家と王族が対立関係になったりしない!?」
アルヴィンとの婚約関係は
アルマニー家を王族に取り込むために
出た契約だ。
それをここで王族側である
アルヴィンが
アルマニー家をバカにしたと言うように
捉えられてしまう。
アルヴィンが何か考えがあって
そう言っているのは
長年の付き合いであるユーフォリアに
しかわからない。
しかし周りはそうは捉えず
表面しか見ないだろう。
「確かに父上と同じ道を辿るな。」
現王がアルマニー家ではなく
他家の娘を王妃にした時
非常に揉めたと聞く。
それをまた繰り返そうとするなら
恐らく父であるアルマニー公爵は
黙っていないだろう。
それこそ父は嬉々として
アルヴィンとの婚約を破棄して
ケルヴィンが戻らない間に
タスリアの王子との縁談を持ってくるだろう。
(そうなればケルヴィン様を待つ事ができなくなる)
「リアまあ任せろ。お前はしばらく夜会など出ず屋敷の中にいろ。私とのお茶会も来なくていい。お前は時が来るまで待ってろ。」
また待つのか。
この兄弟はどこまでユーフォリアを
待たせれば気がすむのか。
呆れてアルヴィンをみるが
アルヴィンの大きな手は
ユーフォリアの頭も撫でて
優しく微笑んでいる。
その大きな手に安心する。
「お前はただ兄上が戻ってくるのを大人しく待ってればいい。」
いつのまにか背が抜かされて
いつのまにか大人びていて
いつのまにかこんなに優しくなった。
きっとケルヴィンがいなければ
ユーフォリアは間違いなく
アルヴィンを好きになったに違いない。
だけどいつだって
自分の胸がときめくのも
苦しくなるのもただ一人だけ。
「アル。あなたは私の大親友よ。」
「弟から昇格だな。」
そう言って二人で笑いあった。
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