異世界転生希望な乙女と第2王子な性格のハイスペック社長

平山美久

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第2章

第21話

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大学の卒業式はあっという間に
終わった。


大学入学したての時に比べて
皆大人の風貌に変わっていて
4月にはみんな社会人になる。

学生最後の日は
羽目を外しすぎない程度に
朝まで飲み明かして
大切な仲間たちとの時間を
少しでも惜しむように楽しんだ。

そして4月。

私は智さんのお店で正社員登用を
目指してフリーターになった。


「音羽これ6番テーブル。こっちが3番ね。」

「かしこまりました!」


美味しそうなパスタとピザが
キッチンから出てきて
私は智さんの指示に従って
それらを両手に抱えてホールに行く。

指示された席に料理を運んだり
帰られるお客様のお会計や
帰った後の机の片付けなど。
お昼時の混雑時には
カトラリー系統は洗い場で軽く
水に流してから洗浄機に入れたりと
それなりに充実した生活を送っていた。

カトラリーを洗う時に入る
キッチンでこっそりと調理中の
智さんを盗み見て癒されているのは
ここに働きだしてから
私の一つの楽しみである。

そしてたまに目があったりすると
にっこりと微笑まれるんだけど
それがすごく嬉し恥ずかしで
すぐにそっぽを向いてしまう。

卒業前に礼奈と話していた
智さんときちんと話す。ということは
なんだか怖くて出来ていなかった。

あっという間に卒業したし
新しい生活に慣れてから…って
考えていたら全然話せなくて。

もちろんその間も智さんと会えるのは
このお仕事中か仕事が終わった夜だけ。


相変わらず彼が休みの日は
会えていない。

そもそも卒業してからここで
フリーターでアルバイトになってから
彼と休みの日が合わなかった。
シフトを組んでいるのは智さんなのに。

意図的に被らないようにしてるみたいに。






お昼の忙しい時間が過ぎて
カフェタイムにはいる少し前の時間帯。

ようやく一息つける頃
その人はやってきた。


カランカラン。

「いらっしゃいませ。」

玄関の扉が開いて反射的に
そちらに視線を向けた。

綺麗な女性だった。

もちろんお客様だと思って
席に案内しようと駆け寄る。

「お一人さまでしょうか?お席にご案内し…」

近寄ってみて彼女が
顔を真っ赤にさせて震えていたことに
気づいた瞬間にバチン!と
店内に響き渡るような音がなった。

遅れてじわじわと
自分の左頬が痛んでいく。

何が起きたのかわからなかった。

「あなたね。うちの主人に手を出したのは。」

「え?」

震える手で頬をさすれば
ジンジンと痛みが広がって
目の前の彼女が何を言ったのか
頭で理解するのは難しかった。


(…主人?)



笑えば綺麗な方だと思わせる
その女性は今はひどく顔を歪めて
私を鋭い視線で睨んでいる。

「しらばっくれる気!?あなたでしょ!?私の智を誑かしたのは!」


激昂する彼女の言葉が
だんだんと遠くで聞こえてくるように
なって頭に入ってこなくなる。

(…私の智……さと…し…さん?)


玄関先での出来事にも関わらず
女性が大きい声で怒鳴るものだから
まだ少ないものの中にいるお客さん達は
何事かと2人を見やっている。

もう1人いたホールスタッフの子が
慌てて厨房に入っていく。

私はあまりの出来事に
ただ目の前の怒っている女性を
唖然として見るだけだった。


「絢香!店には来ない約束だろ!?」


後ろから大好きな彼の声が聞こえた。
知らない女性の名前を口にして。


そしてふわっと大好き香りが
鼻をくすぐった瞬間
彼は私ではなく目の前の女性の
そばに駆け寄っていた。

彼は私には目もくれず…。


「だって!貴方が不倫なんてするからでしょ!?」

「誤解だよ!彼女とはなんでもないから!」

「嘘よ!私知ってるんだから!貴方が仕事終わりにこの女と会ってること!」

だんだんと激昂していた彼女は
肩を震わせて目尻に涙を溜めながら
智さんを見ている。

その姿は庇護欲そそるように
可憐だった。

智さんはそんな彼女の目尻に
指を添えて今にも溢れそうな涙を拭う。

「馬鹿だな。絢香がいるのに僕が不倫なんかするわけないだろ?」


優しい声で宥めるように
言うその姿を私は知らない。


目の前には知ってるはずの知らない
智さんがそこにいた。


「山川さん。とりあえず中に。」

そう私に声をかけたのは
智さんじゃなくて同じホールスタッフ。

彼は私に一切声も視線も合わせず
ひたすらに彼女の相手をしていた。


頭の中は真っ白だった。
何が起きたのか理解出来なかった。

いや…理解なんてしたくなかった。

「…はい。」


私はそのスタッフに促されるまま
休憩室に入った。


扉が閉まってから
お騒がせしてしまい申し訳ございません。

と言う声がくぐもって聞こえてくる。


パタリとその場で腰が抜けて
座り込んでしまう。



(智さんには…奥さんがいたんだ…)


その事実は私に重くのしかかって
今にも気絶したい気持ちになったのに
そう都合よく倒れてはくれなかった。


……信じていたのに。



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