31 / 31
第3章
第31話
しおりを挟む起きたのはまだ日が昇らない
夜中だった。
暑さで寝苦しさを感じて
目を覚ませば
いつも見ている景色じゃないことに
気づいて驚いて一気に覚醒する。
(あれ?どこだっけ?)
と数秒固まったのちに
自分が風邪をひいたから
社長が寝室に運んでくれたのだ。
もちろんこの部屋は社長の自室。
少しだけだるさを感じながら
体を起こすとポトリと額から
タオルが落ちる。
ベッドの横に置いてあった棚の上にある
時計を見れば深夜4時だった。
社長はもしかして私がベッドを
占領したから違うとこで寝たのだろうか。
落ちたタオルをとってみると
ひんやりと冷たかった。
改めて社長の自室を見回してみた。
黒を基調とした家具は
ソファ、ベッド、本棚のみだ。
お洒落だけど非常にシンプルである。
男の人の部屋はみんな
こんなものなのかな?
それにしても
男性の部屋に来たことなんて
私の人生の中であっただろうか?
智さんとお付き合いしてた時は
一度も家に行ったことがない。
(まぁ奥さんがいたんだから無理だろさ。)
ふふと苦笑いが漏れたところで
ガチャリと扉が開いた。
「なんだ。起きたのか?」
社長はスーツ姿に綺麗な髪を
後ろになでつけていてる。
「うん。こんな夜中からお仕事?」
「あぁ。昨日の残した仕事がな。急ぎだからこれから会社に行く。熱は?」
そう聞いた後ベッドに腰掛けてから
私の額に手を当てると熱を測る。
社長は最近私のダイエットに
付き合ってくれるから
夕方から出社していた。
大事な会議とかないの?って聞いたら
部下に任せてるらしい。
社長って融通の効く役職すぎない?
そんなもの??
「うん下がってる。薬が効いてるな。菊子呼んでくるから体を拭いてから着替えてまた寝ろ。」
私からタオルを取るとそのまま
額や頬、首や手首など
見えてるところを丁寧に拭いてくれる。
「もしかして仕事が残ったのは私のせい?」
私が熱を出したから
社長は仕事が行けなかったのかと
不安になる。
「ばか。気にんすな。俺がお前の面倒みたかっただけだ。」
ピンと私のおでこを突くと
優しく微笑まれる。
今日の社長はいつもと違う…。
いつもならブス!とか言って
ひどい言いようなのに
今日はとっても優しい。
風邪をひいたから?
雇用主にお世話されるってどうなんだ…。
うーんと唸っていれば
「無理させすぎて悪かった。もう少しお前のペースでやるべきだったな。」
申し訳なさそうに少しだけ
眉根をさげてくる。
悲しそうな顔になんだかこっちが
申し訳なくなって
フルフルと頭を横に振った。
「私もいけるかもって思ってたから気にしないで。」
「厳しいメニューこなした後、ニコニコ笑うからまだいけんのかと思ってさ。」
タオルを頬に当てながら言われる。
(…いやっそれはあなたが極上スマイルをよこすから!!)
…とは言えず。
「な、なんかできたら達成感が大きくて!」
咄嗟に嘘をつく。
もちろん出来た時の達成感もあるけれど。
「これから無理な時は言えよ?」
ふっと笑った顔が素敵で
ドキドキと胸が高鳴る。
タオル越しなのに右の頬だけ
また熱が上がってくるような気がした。
「じゃあ行くわ。今日一日ゆっくり休め。」
「うん!」
頷いたのを確認すると立ち上がって
部屋から出て行くのを見送った。
その数分後に菊子さんがやってきて
私の替えのパジャマや下着やらと
洗面器にお湯を入れてもってきてくれた。
「よかったわ。熱が下がって。薬が効いてるだけかもだから今日一日安静にすること!」
あったかくてほかほかのタオルで
背中を拭ってくれる。
自分でできるから!と懇願したものの
頑として私の提案を受け入れてくれず
結局私は前以外の背中、腕、足を
菊子さんに拭いてもらうことになった。
なんかもう至れり尽くせりで…。
どっかのご令嬢だよね。これ。
侍女に体を拭いてもらう
生意気な伯爵令嬢とかね。
しかもたちが悪いのは好きな人の
身内で叔母さんだ。
もう私一生社長に頭上がらない気がする。
「すみません。ご迷惑をおかけしました。」
「ううん!気にしないで!わたくしのほうこそ一緒になって無理をさせたのだから」
「無理だなんて!むしろ積極的にしてたのは私なので」
「ほんとにごめんなさいね。…それにしても。」
ふふふ。と後ろからニヤける声が
聞こえてくる。
私は訝しんで頭を傾ければ
「あの蓮坊っちゃまが献身的に看病するなんてねー。」
「え?」
献身的??
「かかりつけの医者を呼んだ後、付きっきりであなたの額にあったタオルを取り替えてたのよ。」
確かにずっと額に置かれていたにしては
冷たくて取り替えたばかりのようだった。
でも私が起きた時は社長は
部屋にいなかったのに。
「仕事も後回しにするなんて私が知る限り初めてよ。」
社長は仕事と女が好き。
仕事の話をする時は
楽しそうに話してくれるし
女が好きなのは
ここに来た時から知っていた。
好きな仕事を後回しにして?
"もうこれからは他の女に手を出すつもりはないから安心しろ。"
不意に長谷川さんのオフィスで
聞いた社長の言葉を思い出す。
(まさか…ね。)
自分がやらせ過ぎて
ぶっ倒れた私に責任を感じてとか。
(責任感強そうだし。)
後回しにって言うけど
そこまで急務じゃないとか。
(敏腕そうだし。)
…
……
……少しでも私のこと気にしてくれてる?
「ささ。着替えも終わったしまだまだ暗いからもう少し寝てくださいな。」
そう言われて横になって
菊子さんが退出していったけど
私は眠れる気がしなかった。
突然湧いて出た淡い期待に
胸が躍り出しそうで
そんなことはない。と
何度も否定を繰り返すうちに
眠れなくなってしまった。
0
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
子持ち愛妻家の極悪上司にアタックしてもいいですか?天国の奥様には申し訳ないですが
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
胸がきゅんと、甘い音を立てる。
相手は、妻子持ちだというのに。
入社して配属一日目。
直属の上司で教育係だって紹介された人は、酷く人相の悪い人でした。
中高大と女子校育ちで男性慣れしてない私にとって、それだけでも恐怖なのに。
彼はちかよんなオーラバリバリで、仕事の質問すらする隙がない。
それでもどうにか仕事をこなしていたがとうとう、大きなミスを犯してしまう。
「俺が、悪いのか」
人のせいにするのかと叱責されるのかと思った。
けれど。
「俺の顔と、理由があって避け気味なせいだよな、すまん」
あやまってくれた彼に、胸がきゅんと甘い音を立てる。
相手は、妻子持ちなのに。
星谷桐子
22歳
システム開発会社営業事務
中高大女子校育ちで、ちょっぴり男性が苦手
自分の非はちゃんと認める子
頑張り屋さん
×
京塚大介
32歳
システム開発会社営業事務 主任
ツンツンあたまで目つき悪い
態度もでかくて人に恐怖を与えがち
5歳の娘にデレデレな愛妻家
いまでも亡くなった妻を愛している
私は京塚主任を、好きになってもいいのかな……?
あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜
瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。
まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。
息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。
あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。
夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……
夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。
殺されるのは御免なので、逃げました
まめきち
恋愛
クーデターを起こした雪豹の獣人のシアンに処刑されるのではないかと、元第三皇女のリディアーヌは知り、鷹の獣人ゼンの力を借り逃亡。
リディアーヌはてっきりシアンには嫌われていると思い込んでいたが、
実は小さい頃からリディアーヌ事が好きだったシアン。
そんな事ではリディアーヌ事を諦めるはずもなく。寸前のところでリディアーヌを掠め取られたシアンの追跡がはじまります。
駆け出しご当地アイドルがヤクザに一目惚れされた話
一ノ瀬ジェニファー
恋愛
ド田舎の道の駅で、持ち歌もグッズもないまま細々と活動を続けるご当地アイドル・桜あかり(16)。
夢は大きく武道館!……と言いたいところだけど、今はレジ打ちもこなす「なんでもできるマルチな地底アイドル」。
そんな彼女に、ある日転機が訪れる。
地元の道の駅がテレビで紹介され、あかりの笑顔が全国放送で流れたのだ。
その映像を東京で目にしたのが、幸村 静(ゆきむら しずか)。
見た目は完璧、物腰も柔らか──けれどその正体は、裏の世界の男だった。
「会いたいから」というシンプルすぎる理由で、あかりに会いに片道10時間を車で会いに来た。
謎のヲタク知識もを引っ提げて、推し活(という名の執着)が始まる……!
これは、アイドルを夢見る少女と、厄介オタクなヤクザの、ピュアで不穏でちょっと笑える物語。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる