【R18】王太子は婚約者に婚約破棄を言いたい。

平山美久

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ツンな婚約者はヒロインの髪を鷲掴む。

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僕には婚約者がいる。

気が強くて傲慢で
正直手に負えない婚約者の
リリアンヌ・マドリーノ。
金色の髪はウェーブがかっていて
勝気な瞳は蜂蜜色をしている。
一見とても美人ではある。
なにも話さなければ僕の隣にいるだけで
絵になるだろう。
もちろん僕自身も自分で言うのは
なんだがこの国の第一王子で
高位貴族になればなるほど
容姿はすぐれていくから
王族である自分ははっきりいって
自慢できるほど整っている。

一度二人が並んで歩けば
周りから感嘆の声が漏れることもしばしば。


しかし。



「殿下!何故このような下賤な女をエスコートしたのですか!?」

僕の隣にいる少女に向かって
指を刺し蜂蜜色の瞳を吊り上げさせて
金切り声をあげている。

トコトコと近づいてくると
少女の髪を掴み引っ張り出してしまう。

僕は慌ててリリアンヌの行動を
止めて少女を庇うように僕の後ろに隠す。

その僕の行動にさらに激怒した
リリアンヌはキーキーと
夜会中に周りを気にせず猿のように
声を上げていた。

美人であるはずの彼女は
顔を歪ませて僕と僕の隣にいる少女。
ミシェル・ユリアーノを
睨み付けている。

僕は深いため息がつい漏れてしまう。


「リリアンヌ。ミシェルに謝りなさい。流石にやり過ぎだ。」

「いいえ!これは歴とした躾ですわ!
王子であるあなたがこんな下賤な女と一緒にいてはなりません!」

そうしてまた僕の後ろにいる
ミシェルの頭を引っ張り出そうと
するものだから僕もまた
リリアンヌを必死でなだめる。

宥めながら僕は遠い気持ちになる。


正直言って僕はこの目の前に立つ
リリアンヌ・マドリーノとは
婚約破棄をしたいと思っている。




リリアンヌ・マドリーノとの出会いは
まだ僕が幼い時。

僕の話し相手として同世代の子供を
何人か誘いお茶会を開いた。
その時たまたま隣同士だったリリアンヌと僕。

無視することもできずに声をかければ
リリアンヌは令嬢らしからぬ行動をして
僕は驚いてしまった。

リリアンヌは僕が声をかけた後
あろうことかふんっ!と顔を背けたのだ。

この王子である僕に向かって。


その場にいる誰もがリリアンヌの行動に
ギョッとして目を丸くさせた。
そしてたまたまいち早く回復した僕は
なんだかおかしくなって
王子らしからぬ態度で笑ってしまったのだ。

おそらく。いやきっとそれが原因で。

次の日には僕とリリアンヌの婚約が
決まっていた。

王である父も王妃である母も
何故、無視した令嬢を
僕の婚約者にしたのか
僕は今現在進行形で理解できない。


婚約者になってから
リリアンヌは度々城にくるようになり
何度も顔を合わせるようになったけれど
彼女との関係は当初から全く
改善することはなかった。

こちらから歩み寄ろうとしたところで
ピシャリと言い返されたりして
僕はもうリリアンヌとは仲良くなれない。
仲良くする努力を早々に諦めた。

王都で有名なお菓子を贈れば

「私、こんなマドレーヌ初めて食べましたわ」

リリアンヌを連想してかわいい花を
プレゼントすれば

「殿下が送ってくださったお花
全くセンスがないですわ!」

隣国について意見交換をすれば

「こんなこともお分かりになりませんの?全くもっとお勉強なさってください。」

ちょっとミシェルと偶然街で会っただけなのに

「殿下!あの女はなんですの!?庶民と一緒に街で歩いていると情報がありましたわ!」

ミシェルと中庭で話していただけで。

「殿下!あの女はダメです!」


「殿下!どうしてあのような下賤な女を横に置くのですか!」

「殿下!殿下!殿下!」



学園を入学してから
平民である彼女をサポートするよう
学園長の指示に従い
何かとミシェルの世話を焼いていれば
リリアンヌとは違い純粋で心根の優しい
彼女に惹かれ次第に共にいることが
増えていった。

ミシェルの笑顔は僕にとって
癒しそのもので
リリアンヌの罵声や態度に
疲れ切った僕は逃げるように
ミシェルを縋るようになった。

そんなこともあってリリアンヌが
さらに激昂して手のつけられない
状態になっているのも重々承知だ。

だけど僕にはもうどうしていいか
わからないんだ。

一生懸命、リリアンヌに寄り添おうと
努力してきた。
だけど事あるごとにプレゼントは
何癖をつけられ
上から目線で馬鹿にされ
挙句ミシェルにはひどい仕打ちをして。


僕がミシェルに目を向けてしまうのも
頷けると思わない?



「リリアンヌがもう少し歩み寄ってくれたらな。」


自室のベッドで思わず小さく呟いてしまった。








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