【R18】王太子は婚約者に婚約破棄を言いたい。

平山美久

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デレは突然に

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そして冒頭に戻るのだが
ミシェルの髪を引きずりまわそうと
したため、僕は慌てて衛兵を呼んで
リリアンヌをこの場から退場させた。

これ以上周りに醜聞を晒したくはない。

仮にもリリアンヌは僕の婚約者だ。
彼女の傲慢な性格では
すぐによくない噂が広まってしまう。

「ミシェル。大丈夫だったか?」

衛兵に引き摺られるように
連れて行かれたリリアンヌを
見届けるとハッと思い出して
後ろにいるミシェルと向き合う。

「はい。グレン様。少し痛かったけれど大丈夫です!それよりリリアンヌ様には申し訳ないことをしました。やはりわたしはグレン様と親しくしない方がいいですよね。」

ぐすん。という効果音が聞こえるかのように
ミシェルは悲しい顔をする。

「気にすることはない。僕はミシェルに助けられているのだしそれに僕たちはただの友人だろ?リリアンヌのことは気にするな。」

正直ミシェルに惹かれてはいるものの
僕は歴としたこの国の王子で
時期国王になる。
婚約者がリリアンヌということは
置いといても
平民であるミシェルに僕の思いを
告げることはしない。

僕自身は身分差など気にしないが
多くの貴族はそうはいかないだろう。
王家の権力を削がないためにも
ミシェルとは添い遂げることはできない。

悲しいけれど学園にいる間だけ
こっそり思うことくらいは許してほしい。


「…そうですね。…ただの友人ですものね…。」

そう言ってミシェルは悲しげに微笑む。
その笑顔に僕は心を痛めるが
あえてそれには気付かないことにする。


それにしてもリリアンヌは
連れて行かれた後
屋敷に帰ったのだろうか?

まさかミシェルの髪を引っ掴むとは
思いもしなかった。

そう思ってミシェルの頭を
優しく撫でる。
悲しげな笑顔から一転顔を赤くして
微笑むミシェルを見ながら
僕の思考の半分以上は連れて行かれた
リリアンヌのことでいっぱいだった。




周りの貴族たちもはじめは
チラチラと僕たちを見ながら
ヒソヒソと話し込んでいたけれど
時間が経つに連れ自分達の世界に
入っていった。

僕はリリアンヌのことが気になりながらも
ミシェルと楽しい時間を過ごしていた。



「それで前回の試験でっ…」

一生懸命話すミシェルと会話を
楽しんでいたら何やら後ろが騒がしく
なってくる。

僕の後ろの騒がしさに気づいたミシェルが会話を中断したことで
僕はその騒がしさの原因を追及するため
後ろに振り返ろうとした時
ツンと僕の燕尾服の裾を軽く引っ張られた。


王子である僕は
滅多に誰かに触れさせたりはしない。
だからこそ驚いて後を振り返れば
そこには顔を真っ赤にさせたリリアンヌがいた。

「リリアンヌ!?」

リリアンヌは僕の婚約者ではあるけれど
二人の関係上彼女が僕に触れることは
初めてで動揺してしまう。

たかが裾を掴まれただけなのだけど。


「ぐりぇんりーどしゃま。」


しっかりと裾を掴んだまま
リリアンヌは上目遣いで
呂律の回っていない声で僕の名前を呼ぶ。
その時点でリリアンヌがすぐに
お酒を飲んで酔っていることがわかった。

リリアンヌがお酒を飲んだことにも驚いたが
顔を赤くさせて上目遣いで僕の名前を
呼ばれただけでこんなにドキドキさせている自分に一番驚いてしまう。

呂律が回っていないながらも
僕の知る限りリリアンヌから
初めて名前を呼ばれた。


「なっなんだ?」

思わず動揺して声が上ずってしまう。



「にゃんでリリアンニュに意地悪すりゅの?」


グイグイと裾を引っ張りながら
尚も上目遣いなのに
その瞳は段々と潤いを増していく。


「意地悪!?」


「うん!リリがいるのにどうして彼女と一緒にいりゅの?どうしてリリに冷たくするのにょ?リリのこときりゃい?」


リリアンヌは大きく頷くと
ついに蜂蜜色の瞳からポロポロと
涙を流しながら裾を掴んでいない手で
一生懸命涙を拭って僕に問いかけてくる。


あの傲慢なリリアンヌが
弱々しく泣くものだから
その場にいた貴族達は会話をやめて
僕たちの様子を食い入るように
観察し始める。

いつも僕の方に同情を向けられることが
多いのだがリリアンヌのこんな姿を見て
誰もがリリアンヌに同情し始める。

僕自身もこんな弱々しいリリアンヌを見て
一気に後悔の念が押し寄せてくる。
それなのにこの弱々しいリリアンヌが
途端に可愛く見えて来て
人目も憚らずにその場で抱きしめたくなる衝動に駆られてしまう。


「殿下この場はすこし目立ちます。どうか控え室に。」

護衛に言われてハッとして邪念を
追い払うと未だにギュッと裾を掴む
リリアンヌの腰に手を回して
会場を後にした。

僕はこの時完全にリリアンヌのことで
頭がいっぱいで後ろにいたミシェルが
諦念の表情をしていたことを僕は知らなかった。


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