【R18】王太子は婚約者に婚約破棄を言いたい。

平山美久

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衝撃の事実

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護衛が控え室にと言ったが
僕は結局リリアンヌを自室に招いた。

会場を出てすぐ近くに
控え室はあるのだけれど
会場を出る前に僕に連れられていく
リリアンヌをみて周りの男達の目が
好色を含んでいるものに気づいたからだ。

そして控え室に入るすこし手前。

いつも城の警備をしている彼らは
決して口を閉ざし職務を全うしているのだが
僕とリリアンヌが通り過ぎた時
彼らは思わずと言ったようにポロリと
溢した。

「えっリリアンヌ様かわいい。」

と。


その一言に何故か急に
腹立たしくなってきて
思わずリリアンヌの腰を強く抱いて
控え室ではなく自室に向かった。

大人しくついてくるリリアンヌを
チラリと見れば
いつも釣り上げさせている眉は
ハの字になって下がっていて
瞳は涙でうるうるしているし
お酒に酔っているのか頬はほのかに
赤くなっている。

誰がどうみても庇護欲をそそる。


このリリアンヌをみて
会場中の貴族、城の警備兵どもは
一瞬で心を奪われた。


そのことを考えると
腸が煮えくり変える気持ちになる。

リリアンヌは僕の婚約者だ!

と声高々に言いたくなった。




部屋に入って護衛や侍女達を
引き下がらせて二人きりになる。
僕の燕尾服の裾をずっと離さないまま
なのでそれを理由に僕は
リリアンヌとソファに横並びで座る。



「それでリリアンヌ。僕が意地悪したっていうのはどうしてそう思ったの?」

僕の質問に落ち着きかけていた
涙がふたたびリリアンヌの瞳から
こぼれ落ちていく。


「ぐりぇんりーどしゃまは、いちゅのまにか贈り物もしにゃくなったしわたくしとはぜんぜんおはなししてくれにゃい。」

「贈り物?リリアンヌは僕が贈り物することを嫌じゃなかったの?」


事あるごとに何ぐせをつけられて
僕は次第にリリアンヌに贈り物を
することをやめていた。
リリアンヌは意外にもそのことを
気にしていたらしい。


「しょんなこと!思ったことありましぇんわ!」

「でも僕が送ったマドレーヌ食べたことないって言ったりお花だってセンスがないって。」

「あれはぐりぇんりーどしゃまがくれたマドレーヌだから嬉しくて幸せ過ぎて美味しかったかりゃ食べたことないって言ったんでしゅ!」

呂律の回ってないリリアンヌの言葉に
僕は衝撃をうける。

「えっ!?じゃっじゃあお花は!?お花センスないって言ったよね!?」

「おはにゃ?おはにゃはリリはこんにゃにかわいいおはにゃじゃないのに
リリに似てりゅっていうからセンスにゃいっていったの。」

衝撃的すぎた。
僕は目を大きく開いてリリアンヌの
両肩に手を置いてリリアンヌに
確認をとる。

「もしかして、…もしかしてリリアンヌは贈り物すべて褒めてくれていたのか?」

「あたりまえでっしゅ!贈り物が届くたびにお城に行ってお礼を言ってたのに!」

ひどいわと言ってわんわんと
泣き出していく。

僕は驚きすぎて開いた口が塞がらなくなる。

ずっと何ぐせをつけられて
貶されていたはずの僕の贈り物は
リリアンヌにとっては
感謝の言葉を述べていたつもりだったらしい。



…いや勘違いするだろ!?普通!!



「あー、リリアンヌ?前に隣国のことで話したことあっただろ?あれは僕の頭の悪さを馬鹿にしたのか?」

「むっ!わたくしはぐりぇんりーどしゃまをバカなんて思ったことありましぇん!!あの時はわたくしは隣国のことをすこし詳しいからお教えしようとしたのです!」

なんということか。

ずっと馬鹿にされていたと思っていたことが
実は僕が勝手に思い込んでいただけだったのだ。

この時僕は悟った。
リリアンヌは果てしなく、果てしなく
ツンデレなのではと。


そして僕は努力が足りないせいで
リリアンヌのデレを曝け出せて
なかったという衝撃の事実。


「…じゃあミシェルのことは?」


「うぅ。わたくしもぐりぇんりーどしゃまと街デートしたかったのに。」

「リリの方がぐりぇんりーどしゃまのこと好きなのに。」

ぷくりと頬を膨らませる
リリアンヌをみて
心を鷲掴みにされない男など
この世に存在しないのでは?
と思うほどに僕はもうさっきから
リリアンヌが可愛くて可愛くて
どうにかなりそうだった。


いや、どうしてこんなに
リリアンヌが可愛いの!?



ずっと嫌われていると思っていたから。
何度も無碍にあしらわれることに傷つくのが嫌だったから。

知らないうちにリリアンヌのことを
考えないようにと遠ざけていた僕に
リリアンヌはずっと傷ついていたのだ。

僕は迷わずにリリアンヌを
強く抱きしめた。


「リリアンヌ!好きだ!僕も!僕もリリアンヌが好きなんだ!」
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