チョロい兄は腹黒な弟に完全に包囲されている。

岡ぱんだ

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弟とお出かけ~ルカside~

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「ロウ、お前モテ過ぎだろう。」

「嬉しくない。」

今俺達は貴族の女の子達に囲まれている。
俺達というより、正確にはロウが囲まれていると言った方が正しいだろう。

俺は眼中に無い様子で、背の高いロウを見上げながら黄色い声をあげている。

フロウ様フロウ様と、自分をアピールしたくて必死の様だ。

こないだ町を歩いた時も見られてたし、フロウはやっぱりモテるんだな。

まあ、そうだよな。この顔と性格だもんな。


「ご令嬢の方々がこの様にお揃いとは、本日はお茶会か何かですか?」

「はい、フロウ様。本日はこの近くで皆様とお茶会ですの。その途中にフロウ様をお見かけしたので、お声を掛けに伺ったのですわ。そうですわ!フロウ様もご一緒にいかがかしら?」

「素敵!」

「参りましょうフロウ様!」

お茶会ってなんだ?
というか完全に無視されてるな俺。まさか俺はいつのまにか気配を消す能力を手に入れてたり……

「フロウ様、こちらの方はどなたでございますか?ご友人ですの?」

してなかったわ。ですよねー。

「こちらは僕の兄です。」

「お兄様?!」

「フロウ様は最近弟君がお産まれになったと伺いましたがお兄様がいらっしゃったなんて……。」

「ファルメール家に兄はおりませんよ。僕の故郷の兄です。」

「それでは平民の方?」

「珍しい、黒い瞳ですわ。」

「あまり似てらっしゃらないわ。」

「フロウ様よりかなりお若く見えますわ。」

さっきまで空気扱いだったのに急に女の子…ご令嬢達が俺を穴が開きそうなくらい見てきた。みんな綺麗で可愛いけど……正直怖い。


「兄のルカです。これからも弟を宜しくね。」

なんて爽やかに兄らしく挨拶したかったのに実際の俺はというと、

「はは、ははは……。」

圧が凄すぎて苦笑いをするのが精一杯だった。

自分で言うのもなんだが……俺、格好悪い。


「お兄様、わたくしフロウ様と仲良くさせて頂いておりますーー」

「お兄様、わたくしはーー」

「ちょっと!わたくしこそーー」

そんな格好悪い俺に追い討ちをかけるように令嬢達が猛アピールを開始した。

ロウに取り入りたくて必死なんだな。
俺はそんな経験無いけど、恋をすると必死で周りが見えなくなる事があるもんなんだって父さん言ってたな。
そうか、これがそうなのか……。
恋してるんだな……。

うんうん、必死さはすごーく伝わってくる。
目がギラッギラだもんなぁ……。


「ふぇ……。」

……やばい、怖すぎて変な声出た。さっきまで苦笑いでどうにか耐えてたけどダメだった!

「失礼、兄が怯えておりますので程々にしていただけませんか?」

ああ、威厳のある兄にならなくてはいけない場面で情けない兄を晒してしまった……。

「申し訳ありません、お兄様っ!つい熱くなってしまいましたわ!」

「フロウ様のご家族と是非仲良くさせて頂きたくて、申し訳ありません!」

「申し訳ございません、フロウ様の昔のお話とかもお伺いしたくて、つい…….。」

俺は気にしてないけどな。怖かったけど。
恋に必死なのは仕方ないよな。怖かったけど。

「僕の事なら僕が自分でお話致しますよ?ですが本日は予定があるので、また次の機会にお誘い頂ければその時にでも。」

おぉ……さすがロウ!俺の事を助けつつご令嬢達へのフォローも完璧とか……俺も小さい時に王都に来ていればこうなれたのか……?いや、顔が平凡じゃ無理か。

「本当ですか!?楽しみですわ!」

「お茶会にご招待致しますわ!」

「わたくしの誕生日パーティーにお越しいただきたいですわ!」

「あ、ズルいですわ!」

「わたくしも来て頂きたいですわ!」

「わたくしも!」

おおう、すごい盛り上がりだな。相当ロウの事が好きなんだな。罪な男だな。

「大変素敵なお誘いなのですが、なにぶん魔術師になって日が浅いため中々時間が取れず、お受けできない事が多々あると思います。それでも許して頂けますか?」

「もちろんですわ!」

「あぁ、フロウ様そんな顔なさらないで!」

「何度でもお誘い致しますわ!」

慣れてる……扱いに慣れてる!!

「ありがとうございます。それでは、僕達はもう失礼致しますね。お茶会楽しんで下さい。」

出た、悩殺スマイル。俺が勝手につけた名前だがピッタリだと思う。現にご令嬢達は顔を真っ赤にしているし、買い物の時もお姉さん達がオマケをたくさんしてくれたしな。
でもたぶん外様なんだよな。俺には向けた事ないし。まぁ、俺は悩殺スマイルより自然なロウの笑顔の方が好きなんだけど。

「ふぁぁぁ、フロウ様、絶対にお誘い致しますわ!それではごきげんよう!」

「フロウ様、またお会いできる事を楽しみにしておりますわ!ごきげんよう!」

令嬢達が「ごきげんよう」「ごきげんよう」と言って自分達の馬車に戻っていった。嵐のようだった……。そして最後は俺は空気に戻ったな。別にいいけど。

「ルー兄さん、大丈夫だった?」

心配そうに見つめてくるロウ。やっぱり俺はこっちの自然なロウの方が好きだな。

「ああ、助けてくれてありがとな。それにしてもすごいモテモテだな!」

「別に嬉しく無いよ。恋愛感情を抱いていない人に好かれたって嬉しくない。」

お?なんか意味深な言い方だな。もしかして恋人はいないと言ってたが好きなやつはいるのか?

「そんな事言うなよ。もしかしたら、好き好き言われているうちに好きになるかもしれないだろ?」

可愛い子ばっかりだったしな。

「本当に?兄さんも好き好き言われていたらその人の事好きになるかもしれない?」

俺?俺を好き好き言う物好きなんていないと思うが……。

「まぁ……そうだなあ、正直わからんけど好かれて悪い気はしないし、その内恋愛に発展する可能性も無くは無いんじゃないか?」

好みとか性格の相性もあるけどな。

「……なるほど……ならもう少し………かな…。」

「ん?どうした?」

ボソボソ何言ったんだ??

「あ、ううん、なんでもないよ!それよりこれからどこ行こうか?」

「そうか?なら、なんか食いたいな。俺腹減ったわ。」

「じゃあランチに行こうか。」

「おう。」

なんかはぐらかされたっぽいが、まあいいか。
腹へったし。

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