チョロい兄は腹黒な弟に完全に包囲されている。

岡ぱんだ

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ようこそファルメール家へ~フロウside~

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今までウィルが僕の友人達や客人に対し牽制するような態度を取っていた事は分かっていた。
僕も昔そうだったからその気持ちがすごくよく理解できて止める気にならなかったのだ。

今日もウィルは兄さんに対しあからさまな態度を取っていた。
わざといつも以上に僕に甘え、兄さんに鋭い視線を向けていた。僕的には兄さんに懐かれる方が面倒なのでこのままでもいいかなと思っていたのだが、問題が起きてしまった。

あきらかに、兄さんがウィルの態度を気にしているのだ。
たぶん、自分が何かしてしまったに違いない無いと思っているのだろう。かなり困った顔をしている。

「ウィル、どうしました?すごい顔してますよ?」

「なんでもありませんっ」

さすがにあからさまだった為、やめさせたくて遠回しに声を掛けたものの、幼いウィルには通じなかった。

兄さんにただの人見知りだから気にしなくて平気だと言うべきだろうか……でもきっと兄さんはそれはそれでどうにかウィルとの距離を縮めようとするだろう……。どうする……どうしたらいい。



「……ヤキモチか。」

「え?」

突然聞こえた声に反応し兄さんの方を見ると、先程の悩ましい顔から一変してスッキリとした顔している。

ま、まさか。

「あのな、ウィル君は俺に対してヤキモチを妬いたんだと思う。フロウがとられたと思って。」


兄さんが勘づいてしまった。


確信をつかれたウィルは顔を真っ赤にして母親にしがみついて恥ずかしそうにこちらを睨み付けている。

人見知りで終わりにしたかったのに……早く言っておけば良かった。


「すまないルカ君!ウィル、そんな態度をとったらルカ君に失礼だろう?」

「うっ…だってぇ、ぼくのにいさまがぁ…」


さらに、その事に対し父上が注意した結果ウィルは泣き出してしまった。

両親はウィルの牽制の実態を知らなかった為今までこの件で怒られる機会なんて無かった。

それがよりにもよって今日、明らかになってしまうなんて……。タイミングが悪すぎる。どう対処しよう。

両親も何か話しかけているが一向に泣き止む様子は無い。

かくなる上は落ち着くまで泣かせ続けるしか……





「ウィル君!俺も君の兄さんだよ!」

え?

横を向くとさっきまで座っていた兄さんが、ソファーから立ち上がっていた。

ウィルも突然の大声に泣くのを止め、両親も驚いた顔で兄さんを見ている。


「ウィル君の兄さんはロウ、ロウの兄さんは俺!って事は俺はウィル君の兄さんでもある!ヤキモチを妬く必要はない!俺は君の兄さんだからな!!」

兄さん……あなたって人は……。
僕はいつも兄さんに驚かされる。


言い終えた兄さんは僕の方をチラッと見ると気まずそうに笑った。
その不意討ち顔にキュンとしてしまう僕。
今変な顔をしてしまったかもしれない。

僕は急いで顔を戻し両親達を見ると、二人はまだ驚いた表情のまま兄を見つめており、肝心のウィルは………










「……ルカ……にいさま?」


非常にマズイ展開になる予感がした。


ウィルの瞳から完全に嫉妬の炎が消え、逆にキラキラと輝きの色が見えた。



そして、

「ルカにいさま!」

兄さんの胸に豪快に飛び付いた。

「ぐふっ!」

「ルカにいさま、ごめんなさい。」

「大丈夫……だよ。」


予感は的中した。
我が弟ながらチョロ過ぎるだろう。

くっ、無邪気さが憎い……。





「すばらしいですわ…。」

僕が二人に対しメラメラと嫉妬の炎を燃やしていると、いつのまにか席を立った母上が兄さんの目の前でうっとりとした表情を浮かべていた。
状況が理解出来ず父上の方を見ると、父上は片手で目頭を抑え、天井を仰いでいる。

本気で状況が読めない。

「父上?母上?」

声をかけると、母上は僕の隣にスッと腰を下ろし耳打ちしてきた。

「フロウ、絶対にルカちゃんを落としなさい!わたくしたちは大歓迎です!」

そしてグッと親指を立てた。

「は、母上、落ち着いて下さい。」

鼻息荒めで興奮気味の母上にそう言うと、母上は僕の肩をガッと掴んだ。
痛いです、母上…。

「落ち着いてなんていられません!あんな素敵な子早くしないと誰かにとられてしまいますわ!あなたはこの家の事を気にし過ぎなのです。跡取りにはウィルがおります。
ですから……







さっさとルカちゃんをモノにしなさい。いいわね?」

「承知いたしました。母上。」

母の押しに負け、僕もグッと親指を立てた。

母上のこういう所、淑女としてはアウトですが僕は好きですよ。




僕は魔術師になってすぐ、両親に兄さんへの気持ちを打ち明けた。
弟が生まれ、跡継ぎの心配が無くなった事で僕が離縁する形になっても平気だ、と思いきって打ち明けたのだが意外にも両親はあっさりとそれを受け入れ、さらには応援の意を示してくれた。

『あなたには好きな人と幸せになってほしい。』

両親の言葉に少し違和感を感じたが、僕は素直にその気持ちを受け取った。そして今に至る。



「母上、ありがとうございます。」

「何を言っているのですか!ルカちゃんはもうウチの子同然ですわ!ほら、ウィルもあんなに懐いています!ギルも感無量といった様子ですわ。」

父上、泣き過ぎです……。

というか、ウィルはいつまで兄さんに抱きついているのですか?
いくらウィルでも許しませんよ?

「ウィル、こちらへ。僕が抱っこしてあげますよ。」

「あらあら、弟に嫉妬しているのかしら。ふふふ。」

「はい!にいさま!」

良かった。ウィルは素直に僕の胸に飛び込んで来てくれた。まだ、兄さんに特別な感情は抱いていないな。よしよし。



ウィルには悪いけど、兄さんは僕のだからね。


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