チョロい兄は腹黒な弟に完全に包囲されている。

岡ぱんだ

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兄、スフィアGETだぜ……~フロウside~

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ファルメール家に兄さんを連れていってから2週間後、母上から兄さん用のスフィアが届いた。

母上、やはり本気だったか……。

できれば兄さんには持たせたくなかった。

理由は簡単。

僕が嫉妬してしまうから。

心が狭い自覚は十分あるがしかたないじゃないか。

今僕は兄さんにとってただの弟なのだから。

「……不安だ…。」

「おい、俺がなかなか覚えられないからってそんな事いうなよ。」

悩み過ぎて出てしまった言葉は何度教えても中々スフィアの操作を覚えられないルー兄さんに誤解を与えてしまったようだ。

だけど、本当にできる事なら使ってほしくない。僕の知らないところで誰かとやりとりなんてしてほしくない。

「ルー兄さん、今は無理に覚えなくてもいいんだよ?母上はああ言ってたけど、僕も持ってるんだし覚えるまで僕のを一緒に使おうよ。ね?」

まぁ、そんな日が来なければいいと思っているけど。そのまま有耶無耶にして隠してしまえばいい。


「……そんな事いうなよ。せっかくシンシアさんがくれたのに使わなくてどうするんだよ。それにこれ使えたら便利だろ?メッセージも送れるならお前が仕事から帰ってくる時間とかきけるし、夕飯何食べたいかとかもきけるし。」

「………。」


ーーーー

『ロウ、今日は何時に帰ってくる?』

『7時くらいには帰るよ。』

『夕飯何食べたい?』

『ルー兄さんが作るものならなんでもおいしいよ。』

『しょうがないな~ごちそう作って待ってるからな!早く帰って来いよ!』

『うん、なるべく早く帰るね。』

『おう、待ってる!』



ーーー


………良い。


「……ルー兄さん、とりあえずメッセージの送受信だけでも覚えようか。あ、僕の連絡先登録するね。」

「ロウ、どうしたんだよ、急に協力的だな。ありがたいけど。」

「ルー兄さんが頑張ろうとしてる事に協力しない訳ないでしょ?練習の為にいつでもメッセージ送ってくれていいからね。あ、仕事とか気にしなくて平気だよ。返事できる時にするから。」

「お前、本当やさしいな!よし、今から頑張ってマスターする!」

「うん、頑張って。」



早く新婚みたいなやりとりしたい。







「あ。そうだ、ミカとウリエルもスフィア持ってるのか?」

「え?」

突然どうしたの兄さん。どうしてあの二人が出てくるの。すごく嫌な予感がするんだけど。

「もし持ってるなら二人の連絡先も知りたいなと思ってさ。せっかく友達になったんだし。」

やっぱり。

「う、うーーん、どうだったかな。持ってたような持ってなかったような……。」

持っている。しっかり二人とも持っている。

「お前のスフィアに連絡先入ってないのか?」

「うっ……入っていたような、入っていないような……?」

入っている。しっかり二人とも入っている。

「ル、ルー兄さん、まだ持ったばかりだから馴れてきたら聞けばいいんじゃないかな?慣れない状態でやりとりして変なメッセージを送ってしまったら恥ずかしいでしょ?しっかりマスターしてから二人をビックリさせようよ、ねっ?」

これ以上二人と知らない間に親密になられるのは困る。非常に困る。特にウリエルさんはやっかいだ。ミカエルも危険だけど、ウリエルさんはミカエル贔屓するはずだ。間違いなく。


絶対阻止。


「おお!それもそうだな!よーし、早くマスターしてビックリさせてやるぞ!」

良かった、兄さんは兄さんで。

「ふふ、焦らなくても時間はたくさんあるからゆっくり覚えていこう。僕が丁寧に教えてあげるから。」

「そうだな!宜しくお願いします!」

すごいやる気だなぁ。早く覚えられちゃうのは良くないんだけど、こうやって頑張る兄さんって可愛いいんだよね……。ついつい協力したくなってしまう。はぁ、困ったなぁ。



ーーー5時間後

「ねぇ、兄さん。これ、なんて読むの?」

「『ロウ、元気か?』って送ったつもり……。」

「……三文字しか来てないよ?残りの文字どこ行っちゃったの?」

「……送信する前にはいた……はず。」

「……。」

兄さんは真剣にやっている。
ふざけている様子は一切無い。



頑張る兄さんを愛でながら、兄さんが分かりやすいように、丁寧に、真剣に、教えていた………が、しばらくして気がついた。

全く上達しないことに。


すでに音痴の域を越え、むしろスフィアに嫌われているのではないかと思わざる得ないレベルだった。


これは当分ウリエルさん達との連絡先の交換は無さそうだけど、憧れの新婚的やりとりをする日もくる気がしない。




「ロウ、文章送るの難しいな。あ、また真っ暗になった。」

「ルー兄さん、掃除器具とか調理器具は使えるのにどうして……。」








この日、寝るまで兄さんの特訓は続き、僕のメッセージフォルダーは兄さんから受信した怪文章で埋め尽くされた。
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