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7.カードバトルしようぜ。オリジナルの
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「あれ、今日三上休み?」
「先輩ならお休みですよ」
昼休み。一年四組の教室。
「風邪でもひいたのか」
「多分昨日の滝行が祟ったんだと思います」
「僕に隠れてそんなに面白いことを」
教室のドアから顔を覗かせた久野紫苑に応対したのは天熾佑宇。
「先輩に何かご用でしたか?」
「うん。一昨日思い立ったカードゲームが完成したからね、三上にはパックを剥いてデッキを構築しておいてもらおうと思って。放課後までに」
久野の手にマジックのように突然現れ扇のように広げられたのはパッケージに入ったトレーディングカード。
「すごいですね。学生の本分が完全に無いものとして扱われてます」
「そんなものうさぎ小屋のエサ箱に捨てておけばいいんだ」
「うさぎさんが食べたらお腹壊しそうです」
「僕は実際に裏手にある飼育小屋に面倒なプリントを捨てて生物部に怒られた」
「前科一犯でしたか」
「三上がいないなら天熾君でもいいか。はい、パック」
天熾に渡されたのは、どこからどうやって調達したのか30パックのオリジナルカード。
「ありがとうございます……?」
「じゃあそれ剥いて。デッキ構築して放課後文芸部集合な」
「カードの逆カツアゲです?」
「天熾君カードやったことない?」
「齧るくらいならありますけど」
「じゃあいけるだろう」
根拠もなしにあっけらかんと言い放つ久野。おそらく制作者は彼だろう。
どうやって作ったのかはわからないが、印刷にはかなりの手間がかかっているはずだ。
「今日僕製菓部の活動あって」
「でもこの間三上に作りたてのクッキー持ってきてただろ。結構早めに終わるんじゃないか?」
「ばれましたか」
「今日は何を作るんだ?」
「パンケーキです」
「いいな、つまみながらカードやろう」
「僕いつの間に文芸部になりましたっけ」
「遊び相手が少ないんだ」
「道理で一年のクラスに態々いらっしゃるわけですね」
「ほら、三上が来たら追加パック出すから一緒に遊べるかもだぞ」
何も言わず天熾がパックを受け取った。
「交渉成立だな。これが公式解説書だ」
・・・
「はよざーっす」
翌日。文芸部。
風邪の治った三上が放課後いつも通りに顔を出した。
「今日はなんか天熾に付き纏わられなくてラッキー…………⁉︎」
「ああ、先輩」
「三上、今来たのか」
何食わぬ顔で机を挟み向かい合っていた二人が顔を上げた。
「何してんすか⁉︎ つかさっきHR終わったばっかりだよな、天熾どうやってここまで来た⁉︎」
「いやぁ、焼きそばパンデッキの有用性に気がついたら速攻で試してみたくなっちゃいまして」
「元々焼きそばパンは強いけどイマイチ使い道が曖昧だったからね。まさか購買ぞろえを無くして食券機をサポートに入れることで攻撃力を犠牲にデメリットを打ち消すとは」
「何言ってるかサッパリわからない上に二人とも目がイってる」
「先輩もやりましょうよ、僕のカレーライスデッキ貸しますから」
「カレーはいいよ、初心者でも福神漬けを引き寄せさえすれば勝てる」
目の下にやや隈をこさえた二人が、向かい合って机の上にカードゲームを広げている。
「ほら、三上用のパック。昨日急いで追加したんだ、りっくんも加えて四人で遊ぼう。学校昼食カードバトル略して『学食』を」
「オリジナルなんすね」
久野が30パックをざっと広げる。
「先輩もやりましょうよ、楽しいですよ。親友の僕がいうので間違いないです」
「楽しいぞ三上、今日の部活動は強制でこれだ」
「楽しそうではあるけどプレイヤーが怖いんだよな」
「何でだ、ちゃんと風呂にも入ってるだろ」
「そういう問題じゃない。どれだけやってるんすかこれ」
「昨日は強制下校時間になるまでやってた」
「八時じゃねーか!」
「やろうやろう三上」
「さあやりましょう先輩」
「いいすけど、俺二人のテンションについてけるかなぁ」
恐る恐るパックを開封する三上。
先程天熾達が言っていた食券機や福神漬けのカードが顔を出す。焼きそばパンに至ってはキラカードであった。
「無駄にすごい。手作りのクオリティじゃない。よくやりましたね」
「現在70種類あるよ」
「潤沢すぎる……ん? 現在?」
「一ヶ月後には第二弾給食パック、さらにその後は弁当パックを追加予定だよ。乞うご期待」
「飽き足りる気配がない!」
これが後に一部でブームとなるカードバトル『学食』の始まりであった。
「先輩ならお休みですよ」
昼休み。一年四組の教室。
「風邪でもひいたのか」
「多分昨日の滝行が祟ったんだと思います」
「僕に隠れてそんなに面白いことを」
教室のドアから顔を覗かせた久野紫苑に応対したのは天熾佑宇。
「先輩に何かご用でしたか?」
「うん。一昨日思い立ったカードゲームが完成したからね、三上にはパックを剥いてデッキを構築しておいてもらおうと思って。放課後までに」
久野の手にマジックのように突然現れ扇のように広げられたのはパッケージに入ったトレーディングカード。
「すごいですね。学生の本分が完全に無いものとして扱われてます」
「そんなものうさぎ小屋のエサ箱に捨てておけばいいんだ」
「うさぎさんが食べたらお腹壊しそうです」
「僕は実際に裏手にある飼育小屋に面倒なプリントを捨てて生物部に怒られた」
「前科一犯でしたか」
「三上がいないなら天熾君でもいいか。はい、パック」
天熾に渡されたのは、どこからどうやって調達したのか30パックのオリジナルカード。
「ありがとうございます……?」
「じゃあそれ剥いて。デッキ構築して放課後文芸部集合な」
「カードの逆カツアゲです?」
「天熾君カードやったことない?」
「齧るくらいならありますけど」
「じゃあいけるだろう」
根拠もなしにあっけらかんと言い放つ久野。おそらく制作者は彼だろう。
どうやって作ったのかはわからないが、印刷にはかなりの手間がかかっているはずだ。
「今日僕製菓部の活動あって」
「でもこの間三上に作りたてのクッキー持ってきてただろ。結構早めに終わるんじゃないか?」
「ばれましたか」
「今日は何を作るんだ?」
「パンケーキです」
「いいな、つまみながらカードやろう」
「僕いつの間に文芸部になりましたっけ」
「遊び相手が少ないんだ」
「道理で一年のクラスに態々いらっしゃるわけですね」
「ほら、三上が来たら追加パック出すから一緒に遊べるかもだぞ」
何も言わず天熾がパックを受け取った。
「交渉成立だな。これが公式解説書だ」
・・・
「はよざーっす」
翌日。文芸部。
風邪の治った三上が放課後いつも通りに顔を出した。
「今日はなんか天熾に付き纏わられなくてラッキー…………⁉︎」
「ああ、先輩」
「三上、今来たのか」
何食わぬ顔で机を挟み向かい合っていた二人が顔を上げた。
「何してんすか⁉︎ つかさっきHR終わったばっかりだよな、天熾どうやってここまで来た⁉︎」
「いやぁ、焼きそばパンデッキの有用性に気がついたら速攻で試してみたくなっちゃいまして」
「元々焼きそばパンは強いけどイマイチ使い道が曖昧だったからね。まさか購買ぞろえを無くして食券機をサポートに入れることで攻撃力を犠牲にデメリットを打ち消すとは」
「何言ってるかサッパリわからない上に二人とも目がイってる」
「先輩もやりましょうよ、僕のカレーライスデッキ貸しますから」
「カレーはいいよ、初心者でも福神漬けを引き寄せさえすれば勝てる」
目の下にやや隈をこさえた二人が、向かい合って机の上にカードゲームを広げている。
「ほら、三上用のパック。昨日急いで追加したんだ、りっくんも加えて四人で遊ぼう。学校昼食カードバトル略して『学食』を」
「オリジナルなんすね」
久野が30パックをざっと広げる。
「先輩もやりましょうよ、楽しいですよ。親友の僕がいうので間違いないです」
「楽しいぞ三上、今日の部活動は強制でこれだ」
「楽しそうではあるけどプレイヤーが怖いんだよな」
「何でだ、ちゃんと風呂にも入ってるだろ」
「そういう問題じゃない。どれだけやってるんすかこれ」
「昨日は強制下校時間になるまでやってた」
「八時じゃねーか!」
「やろうやろう三上」
「さあやりましょう先輩」
「いいすけど、俺二人のテンションについてけるかなぁ」
恐る恐るパックを開封する三上。
先程天熾達が言っていた食券機や福神漬けのカードが顔を出す。焼きそばパンに至ってはキラカードであった。
「無駄にすごい。手作りのクオリティじゃない。よくやりましたね」
「現在70種類あるよ」
「潤沢すぎる……ん? 現在?」
「一ヶ月後には第二弾給食パック、さらにその後は弁当パックを追加予定だよ。乞うご期待」
「飽き足りる気配がない!」
これが後に一部でブームとなるカードバトル『学食』の始まりであった。
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