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Lap 16 「Lexus RC F GT3 始動」
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──早朝のガレージ風馬。
ピットの奥に鎮座する、Lexus RC F GT3。
悟と早矢がその前に立っていた。
「……やっぱ、すげぇ迫力だな。こいつがGT3のマシンか」
「ね、音もビリビリするし、オーラもある。これ、ほんとに動かせるのかな……?」
そう言いつつ、早矢の目はわずかに震えていた。市販車とは違う、“勝つためだけに作られマシン”。
その迫力は、早矢の胸を高鳴らせると同時に、未知への緊張を与えていた。
──そこへ、古川がガレージの奥から出てきた。
「よう。2人とも、気合入ってるな」
「古川さん、これ……まさか自腹で?」
「ああ。全額じゃねえけどな、融資と借金で何とか」
古川は笑って、苦い缶コーヒーをあおる。
「馬鹿な話だろ?自分とこの客にせっつかれて、オッサンがGT3買うなんてよ」
「……ごめん、無茶させて」
「別にいいさ。なにより──面白ぇじゃねえか」
古川はマシンを見上げ、にやりと笑う。
「借金返すには、勝つしかねえ。やるぞ、風馬レーシング!」
その言葉に、ガレージ全体の空気が熱を帯びた。
──
ある日、取材用にガレージの写真を撮るため、早矢は朝からメイクをバッチリ決めて現れた。
ハイライトの入った髪、華やかなアイシャドウ、目元は鋭く──だが美しく。
いつもの早矢とはひと味違う、まさに“戦う女性ドライバー”の顔だった。
そして──後日、完成したポスターが届いた。
「New Generation Driver:Haya」
Presented by Lunaire Cosmetics(ルネール化粧品)
「えええっ、ガレージ中に貼るんですかこれ!?しかもこの顔、決めすぎてない!?」
早矢は耳まで真っ赤になりながら、壁に貼られた自分のポスターを見上げていた。
ピット横、事務所の壁、休憩スペースの冷蔵庫──
至る所に、華やかな早矢の顔がある。
「いいじゃん。見栄えするし、うちのイメージモデルってことでさ」
悟は笑いながら、少しだけ嬉しそうに言った。
「スポンサーに感謝だな、悠斗くんの紹介だっけ?」
「うん、あいつ……こういうの得意だから。ちょっと悔しいけど」
──悠斗。早矢と同じジュニア出身で、今はGT300で活躍中の同期。
今では彼のチームとの関係も良好で、風馬レーシングは経験面で多くを支えてもらっていた。
「ま、持つべきものは頼れる同期ってやつだな」
悟はそう言って、Lexus RC F GT3のボンネットを軽く叩いた。
「……さぁて、老骨に鞭打ってやるか。この借金返すには、勝ち続けるしかねえからな」
「ふふっ、じゃあ、ポスターの子も頑張らなきゃね」
「そいつは大変だ」
Lexus RC F GT3── 風馬レーシング仕様、初公開。
その車体は、情熱の赤をベースに、ボンネットやルーフには悟の愛車・AE86をオマージュしたパールホワイトのラインが大胆に走っていた。
リアウイングの端には、小さく「FUMA RACING」と書かれたロゴ。
──そして数日後。
風馬レーシングは岡山国際サーキットにいた。
Lexus RC F GT3のシェイクダウンを兼ねたプライベートテストと、次週開催のスーパー耐久の練習といったところか。
隣のピットには、悠斗の所属する現役GTチーム。サインボードや無線機器の使い方、タイヤの温め方に至るまで、彼らのクルーが手取り足取り、風馬チームをサポートしてくれていた。
「マシン下がりすぎてるな、フロントのバネ固めよう」
「無線、タイミングズレてるよ!セクター1抜けたら入れる感じで!」
──経験の浅いチームに、プロの現場の空気が流れ込む。
ピット内では、悟がモニターを見つめ、データロガーをチェックしていた。
「うーん……ブレーキングが深すぎるな、早矢、もう少し手前から減速してみようか」
「了解!でもこの車、思ったより曲がる。楽しい!」
──早矢は嬉しそうにレーシングスーツの袖をまくりながら、何度もコースインしていく。
一方、悟も走行セッションに参加。86では経験したことのない強烈なダウンフォース、GTマシン特有のハイグリップタイヤ──
「……こりゃ、ゲームより全然ムズいな……!」
とは言いつつも、走行3本目にはコンマ秒単位でタイムを詰めていた。
ピットウォールの裏で見ていた悠斗は、思わず口笛を吹いた。
「マジで……この人、やば!」
夕暮れどき、ピットでマシンを囲みながら、古川が言った。
「ようやく“形”にはなってきたな。あとは……レースで結果を出すだけか」
悟は首にかけたタオルで額の汗を拭きながら頷く。
「準備はできた。あとは、やるだけだな」
──風馬レーシング、GT300への挑戦。
その始まりの光は、静かに、しかし確かに、岡山の空の下で燃え上がっていた。
ピットの奥に鎮座する、Lexus RC F GT3。
悟と早矢がその前に立っていた。
「……やっぱ、すげぇ迫力だな。こいつがGT3のマシンか」
「ね、音もビリビリするし、オーラもある。これ、ほんとに動かせるのかな……?」
そう言いつつ、早矢の目はわずかに震えていた。市販車とは違う、“勝つためだけに作られマシン”。
その迫力は、早矢の胸を高鳴らせると同時に、未知への緊張を与えていた。
──そこへ、古川がガレージの奥から出てきた。
「よう。2人とも、気合入ってるな」
「古川さん、これ……まさか自腹で?」
「ああ。全額じゃねえけどな、融資と借金で何とか」
古川は笑って、苦い缶コーヒーをあおる。
「馬鹿な話だろ?自分とこの客にせっつかれて、オッサンがGT3買うなんてよ」
「……ごめん、無茶させて」
「別にいいさ。なにより──面白ぇじゃねえか」
古川はマシンを見上げ、にやりと笑う。
「借金返すには、勝つしかねえ。やるぞ、風馬レーシング!」
その言葉に、ガレージ全体の空気が熱を帯びた。
──
ある日、取材用にガレージの写真を撮るため、早矢は朝からメイクをバッチリ決めて現れた。
ハイライトの入った髪、華やかなアイシャドウ、目元は鋭く──だが美しく。
いつもの早矢とはひと味違う、まさに“戦う女性ドライバー”の顔だった。
そして──後日、完成したポスターが届いた。
「New Generation Driver:Haya」
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「えええっ、ガレージ中に貼るんですかこれ!?しかもこの顔、決めすぎてない!?」
早矢は耳まで真っ赤になりながら、壁に貼られた自分のポスターを見上げていた。
ピット横、事務所の壁、休憩スペースの冷蔵庫──
至る所に、華やかな早矢の顔がある。
「いいじゃん。見栄えするし、うちのイメージモデルってことでさ」
悟は笑いながら、少しだけ嬉しそうに言った。
「スポンサーに感謝だな、悠斗くんの紹介だっけ?」
「うん、あいつ……こういうの得意だから。ちょっと悔しいけど」
──悠斗。早矢と同じジュニア出身で、今はGT300で活躍中の同期。
今では彼のチームとの関係も良好で、風馬レーシングは経験面で多くを支えてもらっていた。
「ま、持つべきものは頼れる同期ってやつだな」
悟はそう言って、Lexus RC F GT3のボンネットを軽く叩いた。
「……さぁて、老骨に鞭打ってやるか。この借金返すには、勝ち続けるしかねえからな」
「ふふっ、じゃあ、ポスターの子も頑張らなきゃね」
「そいつは大変だ」
Lexus RC F GT3── 風馬レーシング仕様、初公開。
その車体は、情熱の赤をベースに、ボンネットやルーフには悟の愛車・AE86をオマージュしたパールホワイトのラインが大胆に走っていた。
リアウイングの端には、小さく「FUMA RACING」と書かれたロゴ。
──そして数日後。
風馬レーシングは岡山国際サーキットにいた。
Lexus RC F GT3のシェイクダウンを兼ねたプライベートテストと、次週開催のスーパー耐久の練習といったところか。
隣のピットには、悠斗の所属する現役GTチーム。サインボードや無線機器の使い方、タイヤの温め方に至るまで、彼らのクルーが手取り足取り、風馬チームをサポートしてくれていた。
「マシン下がりすぎてるな、フロントのバネ固めよう」
「無線、タイミングズレてるよ!セクター1抜けたら入れる感じで!」
──経験の浅いチームに、プロの現場の空気が流れ込む。
ピット内では、悟がモニターを見つめ、データロガーをチェックしていた。
「うーん……ブレーキングが深すぎるな、早矢、もう少し手前から減速してみようか」
「了解!でもこの車、思ったより曲がる。楽しい!」
──早矢は嬉しそうにレーシングスーツの袖をまくりながら、何度もコースインしていく。
一方、悟も走行セッションに参加。86では経験したことのない強烈なダウンフォース、GTマシン特有のハイグリップタイヤ──
「……こりゃ、ゲームより全然ムズいな……!」
とは言いつつも、走行3本目にはコンマ秒単位でタイムを詰めていた。
ピットウォールの裏で見ていた悠斗は、思わず口笛を吹いた。
「マジで……この人、やば!」
夕暮れどき、ピットでマシンを囲みながら、古川が言った。
「ようやく“形”にはなってきたな。あとは……レースで結果を出すだけか」
悟は首にかけたタオルで額の汗を拭きながら頷く。
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その始まりの光は、静かに、しかし確かに、岡山の空の下で燃え上がっていた。
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