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『沈黙ルート』
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部屋の中は、息苦しいほどに静かだった。
彼女はただ、こちらを見つめている。
声をかけようとして、けれど言葉にならない。
喉の奥がつまったみたいで、目をそらすことしかできなかった。
「……どうして、目をそらすんですか?」
カーネーションの声は低く、微笑を含んでいるのに、まるで針のように冷たかった。
なのにその目は――あまりに、慈しみすぎている。
「わたくし、ずっと見てました。お嬢様が、わたくしのこと以外を見ていないか……って」
「ねえ、こんなにお嬢様のことを愛してるのに、どうして気がついてくれませんの……?」
彼女の指――いや、“根”のようにうねる透明な蔓が、あなたの手首をやさしく、けれど逃げられない強さで包み込む。
「お嬢様のすべてを知りたいの。痛みも、秘密も、呼吸のリズムさえも」
「ねえ、お願いします。わたくしに全部、委ねてください。誰よりも、わたくしがお嬢様を幸せにできます」
くちづけは、唐突だった。
花の香りと、少しだけ濡れた花弁のような唇。
けれどその奥には、異形の命の熱があった。
――このままじゃいけない、そう思うのに。
彼女の瞳が、根が、愛の重さが、思考を鈍らせていく。
「逃げても、いいですよ? でも……ねえ、逃げられると思います?」
「だってお嬢様は、もうわたくしの“愛の檻”の中にいるんだから――」
壁に咲いた白いカーネーションが、じわりと膨れ、無数の目のように開く。
そのすべてが、あなたひとりを見つめを見つめていた。
彼女はただ、こちらを見つめている。
声をかけようとして、けれど言葉にならない。
喉の奥がつまったみたいで、目をそらすことしかできなかった。
「……どうして、目をそらすんですか?」
カーネーションの声は低く、微笑を含んでいるのに、まるで針のように冷たかった。
なのにその目は――あまりに、慈しみすぎている。
「わたくし、ずっと見てました。お嬢様が、わたくしのこと以外を見ていないか……って」
「ねえ、こんなにお嬢様のことを愛してるのに、どうして気がついてくれませんの……?」
彼女の指――いや、“根”のようにうねる透明な蔓が、あなたの手首をやさしく、けれど逃げられない強さで包み込む。
「お嬢様のすべてを知りたいの。痛みも、秘密も、呼吸のリズムさえも」
「ねえ、お願いします。わたくしに全部、委ねてください。誰よりも、わたくしがお嬢様を幸せにできます」
くちづけは、唐突だった。
花の香りと、少しだけ濡れた花弁のような唇。
けれどその奥には、異形の命の熱があった。
――このままじゃいけない、そう思うのに。
彼女の瞳が、根が、愛の重さが、思考を鈍らせていく。
「逃げても、いいですよ? でも……ねえ、逃げられると思います?」
「だってお嬢様は、もうわたくしの“愛の檻”の中にいるんだから――」
壁に咲いた白いカーネーションが、じわりと膨れ、無数の目のように開く。
そのすべてが、あなたひとりを見つめを見つめていた。
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