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破れ鍋に綴じ蓋と申しましょう
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初夜で前世を思い出し、結婚三ヶ月で妊娠した後は長い悪阻に苦しめられました。
妊婦特有の所謂マタニティーブルーに陥り、ナハト様の不貞を疑って離婚覚悟の里帰りをした私は、そのおかげでナハト様が病む要因その一を知る事となりました。
家族の重すぎる愛情故に、セラフィナイト本人には秘匿された結婚の条件は、ヤンデレ気質のナハト様を病む方向へと進めさせるには十分な要因のように思えます。
もしかしたら、家族は最初から私とナハト様の婚姻は白い結婚にして、死ぬまで添い遂げさせるつもりなどなかったのかもしれません。それは何故なのか。はい、それはやはり、セラフィナイトが病弱過ぎたからではないでしょうか。
ゲームの設定では、詳しい年数は記されていませんでしたが、恐らくナハト様はセラフィナイトを手離したくなくて、三年のタイムリミットが有ったが故に様々な要因が重なってセラフィナイトを監禁凌辱する事になってしまったのかもしれません。
うふふふ。だがしかし、今の私は新生セラフィナイトなのです。設定上のセラフィナイトと違って、スーパー病弱から、ただの病弱にメタモルフォーゼしているのです。
設定上のセラフィナイトが閨に対してどれ程の積極性をみせていたのかは存じ上げませんが、新生セラフィナイトとなった私はナハト様限定ですが閨事大好きな小悪魔セラフィナイトとなっているのです。
清らかなまま死んだ前世とは違い、中々に充実した夫婦の営みライフを送っております。
場所も時間も、私達の熱い愛の前には障害にはなりません。いや、勿論、恥ずかしいのですよ?でも、ナハト様に求められて拒める私ではないのです。
妊娠中にも、挿入を含めた営みもあった程なのですから、如何に私達の夫婦関係が円満かお分かり頂けるかと思います。
そう、円満なのです!
私は勝ちを確信致しました。この設定からの卒業、でございます。うふふふ。何故なら、私、この度無事出産を終えまして、一児の母となりました。
何故卒業なのかと申しますと、生まれてきたのが男の子だったからです。
設定上では、ナハト様とセラフィナイトとの間に生まれたのはフローライトただ一人のみです。フローライトは女の子です。もうそれだけで、設定とは全く違っております。結婚三ヶ月で妊娠した事がそもそも既に設定から外れているのですから、最初の子が男の子であっても不思議ではないのです。
しかし、姉弟を作る気満々でしたが、まさか最初の子が男の子になるとは予想外でした。ですが、また次の子作りを頑張れば良いのですから、何の問題もございません。いつか必ず貴女にも逢える筈ですから、それまで待っていて下さいね、フローライト。
「リヒト・シャッツ・シルフィード」
「ハイ」
「この度、無事に一歳の生誕を迎えた褒美に、シュテアネ侯爵領をお前に生前譲渡する許可証が届けられた。今日、この日より、お前はリヒト・シャッツ・シュテアネ・シルフィードとなった。心して励むように」
「ハイ…シルフィード公爵閣下…ワタクシ、リヒト・シャッツ…シュテアネ侯爵領ヲ、ツツシンデハイリョウイタシマス」
いや~ん。うちの子凄くないですか?
お腹の中にいた時から賢いとは思っていましたが、本日一歳のお誕生日を迎えたばかりですのに、きちんと儀式に必要な言葉を暗記して、たった今やりきりました。
ナハト様は、ご自分も前シルフィード公爵から生前譲渡されたシュテアネ侯爵領を、自分の息子であるリヒトに生前譲渡致しました。
生前譲渡の申請は、最終的にはゾンネ王国の国王の許可が必要になるため、許可証が発行されるのに最短でも一年かかります。つまり、ナハト様は、お腹の中の子が男の子と分かった瞬間から、手続きしていたと云うわけです。
邸の祈りの間にて譲渡の儀式を行っている間は、父と子と云うより、当主とその後継者候補と云う立場で接する必要があり、例え一歳の幼子でも、領地を拝領するならば一人前に儀式に挑まなければならないと云う建前がございます。ええ、建前です。でも、うちの子は賢いので、建前ではなく、きちんとやりきりました。感涙ものです。涙が止まりません。
「セラ!?」
「おかあさま!?」
祈りの間の見届け人達が座る席で泣いている私に気付いたナハト様とリヒトは、儀式が終わった瞬間にいつもの二人に戻って、慌てて駆け付けて来てくれます。
艶々の濃い金の髪。理知的な淡青色の瞳。通った鼻梁に薄い唇。ナハト様の遺伝子を濃く受け継いだリヒトは、私が知らない幼かった頃のナハト様を見ているかのように、とにかくそっくりな美幼児です。二人が並ぶと美しさ二倍どころか、相乗効果でキラキラ度増し増しで鼻血が出そうです。
「ナハト様…リヒト…ありがとうございます…」
泣きながら拝む私を、二人は抱き締めてくれます。二人は心配してくれてありがとうと云う意味だと思ってくれたようです。私は二人の尊い存在に感謝の念が絶えず、暫く泣きながら拝み続けました。
そんな私達家族を家臣や使用人達は温かく見守ってくれて、譲渡の儀式は無事終了しました。
その後は大広間に移動して、一歳のお誕生日パーティーの始まりです。本来ならば、リヒトは公爵家の子息なのですから、高位貴族の家門の皆々様を招いてお披露目を兼ねた社交パーティーを催さねばならないのですが、ナハト様はヤンデレ属性を発揮して内輪だけのアットホームパーティーにするように指示を出されて本日に至りました。
パーティーの出席者は私達家族と私の実家であるプランツ候補家の親しい家門、そしてナハト様に忠誠を誓った家臣の面々とその家門の一部の者達です。
お父様とお兄様はご招待しておりません。だって、私に内緒で裏で画策してナハト様を追い詰めていたのですから、暫くはお手紙に返事もしてあげない事にしています。少しは反省して貰わなければなりません。
リヒトはまだ一歳ですから、側近候補の子供達を集める事もせず、本当に高位貴族としては信じられない程小規模なパーティーになりました。それはやはり、原因は私です。ナハト様は、私を親しくない方々に見せたくないからです。
相変わらず私は公爵邸の敷地から出ない生活を送っています。実は、まだ一度も領地を視察した事さえないのです。貴族の淑女たる者、慈善事業も行わなければならないのですが、孤児院や神殿にさえ行った事がございません。ナハト様が許可なさいません。まぁ、私としては変なフラグを立てたくはございませんので、引きこもる事は嬉しいのですが、公爵夫人として、そして母親としてはちょっとどうなの?と思わなくもないので、ちょっとしたジレンマを抱えていたりはします。
そんな私ですから、領民からの評判は悪いと思いますでしょ?それがそうでもないから驚きなのです。ここまで徹底して外に出ないと、本当に病弱なのだと思って頂けているようで、そんな中で結婚して直ぐに後継者候補を宿して無事出産を果たしたと云う事で、天晴れと誉められて中々の高評価らしいのです。
しかも、質素倹約で、無駄遣いせず、本人は現れずとも大量の刺繍物や縫い物等の寄付を定期的に行っていると云う実績で、私の評価は着々と上がっているそうです。
余り評価を上げすぎてしまうと、王族の方々のお耳に噂が届き、いらない興味を持たれてしまう恐れがございますので、気をつけなくてはなりません。
「…おかあさま」
パーティーに疲れたリヒトが、座る私の膝にしがみついて来ました。しっかりしていますが、まだ一歳になったばかりの幼子です。どうやら、そろそろオネムのようです。
本来、貴族の母親は実子を自分の母乳で育てず、乳母に養育を任せるのが主流ですが、前世の記憶がある私、新生セラフィナイトとしては、自分の手で育てたくて我が儘を通しました。
眠くなると私の母乳を欲しがるリヒトが、今も私に抱っこをせがみ両手を伸ばしてきます。
ああ、何て可愛いのでしょうか。
「リヒト…」
私がリヒトを抱き上げようと手を伸ばそうとした瞬間、ナハト様が何処からともなく現れて、リヒトを軽々と抱き上げてしまわれました。
「リヒト、お父様とした約束は覚えているか?」
「……ハイ…」
優しいけれど、断固とした態度のナハト様に気圧されたのか、リヒトは泣きそうな顔をしながらも健気に頷きました。
「ポリー」
「はい」
ナハト様が私の専属侍女の一人であるポリーを呼びました。ポリーはセーラが一から教育を施した侍女の一人です。赤みの強い髪と、明るい茶色のドングリ目が可愛らしくて、そばかすがチャームポイントの小柄なポリーは、準男爵家の次女でしたが傭兵出身の男性と恋に落ち、若くして子持ちになったシングルマザーです。夫とは死別してしまったのですが、残された一人息子を育てるために前向きに生きる働き者です。
どうやらナハト様はポリーをリヒトの世話係りになさるおつもりのようで、私から引き離す時に最近よくポリーを使います。
「さあ、お坊っちゃま、奥様はまだお仕事が終わっておりませんから、先にお部屋へ戻って寝台の中でお待ちしましょう」
ポリーに抱き上げられ、リヒトは縋るような目で私を見ました。
「おかあさま…」
「先に寝台で待っていて下さいね。お仕事が終わったら、貴方の元に直ぐ向かいますから」
可愛らしいリヒトの縋るような目に胸がキュンキュンしてしまいます。
まだ母乳育児を止めていないので、リヒトの顔を見れば母乳をあげたくて胸が張ってきてしまいました。
「…ハイ…」
リヒトは泣きそうな顔のまま渋々頷き、大人しくポリーに運ばれて大広間を後にしました。まだ夕方に差し掛かった時刻ですが、リヒトはまだ幼く、しかも今日は大変な儀式をやりきったのですから、早く休ませてあげなければなりません。
正直、私もいつもより大勢の方々と接したため、疲労が濃くなってきています。
悪阻が落ち着いてから再開したトレーニングのおかげで、なんとか出産に耐えられるギリギリの体力を維持してきましたが、乳母に頼らず母乳育児を選択実行した私の疲労度はかなりのモノとなっております。リヒトが生まれてから二度程、発作を起こしてナハト様のお薬に助けられました。
ナハト様からは、母乳育児を早々に止めるように言われてきましたが、泣き落としでその都度お許しをもぎ取りながらの日々でした。
前世の記憶があるからなのか、自分の子を自分の手で育てる事に固執している私に、ナハト様を含めた周囲の方々は理解に苦しむ事があるようですが、これだけは譲れません。
まかり間違って、リヒトがフローライトの代わりに悪役令息になる事がないように、時に厳しく時に誰よりも愛情深く接しなければならないのです。母の愛は海より深いのです。愛を知る人は、自分にも他人にも優しく出来るのです。
前世も今世も、私には愛情を注いで下さる家族がおりました。何も与えられず、貰うばかりの人生でしたが、だからこそ今の私は与えられる限りの私の全てを私の愛する方々に与えたいのです。
「セラ、貴女も部屋へ戻りなさい」
ナハト様が私に手を差し出して下さいます。
「…けれど、パーティーはこれからなのでは?今日くらいは私も、ナハト様の妻として社交を頑張りたいのですが…」
ナハト様の手に手を重ねた私に、ナハト様は優しい微笑みを送って下さいました。
「十分頑張ってくれた。これ以上は貴女の体に障る。社交よりも、セラには私の妻として頑張って貰わなければならない重要な事がある」
妻として社交より重要なお仕事とは何かしら?家政の管理は既にそれなりの成果は出しているし、出産もしたから、後は社交くらいしか思い浮かばないのだけれど。
もしかしたら、私の能力をもっと効率的に使う努力が必要と云う事かしら?
そうよね。確かに頑張らないとならないわ。
この世界は創造神ヴェルトラウムが創った世界で、ゲームはカオスと云う闇によって世界の秩序が乱れた事で様々な問題が起こる。その問題を解決するのが神の力を体に宿した、依り代と呼ばれる所謂勇者的な立ち位置のヒーローで、そのヒーローが力を使えるように協力するのがヒロインの、闇の乙女なのです。
ヒーローはヒロインが選んだ恋の相手で、最初はまだ自分の力に目覚めていない。互いの秘めた力が目覚めるには、様々なイベントをクリアして経験値を上げなければならない仕組みになっていた。
私が生きる今の時間軸は、ゲーム開始前の所謂過去。カオスと呼ばれる闇が濃くなる前の世界なのだけれど、最近徐々に秩序が乱れる予兆が現れ始めている。
今も私達の耳に不穏な話が届いてくる。
このようなアットホームなパーティー内でも、やれあそこの領地は干ばつが続いているとか、方やそちらの領地は雨が降り続いて洪水被害が酷いとか、ゾンネ王国だけではなく、他国の災害の話も聞こえてくる。
今のところシルフィード領は自然災害に見舞われておりませんが、備えあれば憂いなしです。私の能力を使って、農産物の育成を効率的にするお手伝いをしなければ。
幸いにも食物自給率は、ナハト様が始めた試験農場の成果が出て飛躍的に増加しております。けれど、完全自給にはまだ届かず、更なる努力が必要なところです。
設定的には、近い未来に今より更に世界規模で様々な問題が起こる筈ですから、今のうちに出来る備えはしておかなければなりません。
「…ナハト様、私、頑張りますね!」
むん、と拳を握ってみせた私を見たナハト様が、優しい苦笑を浮かべられました。
あら?苦笑?私、検討違いな事を言ったのかしら。
「是非、頑張って欲しい。セーラ、分かっているな?」
「はい。お任せ下さい。さ、セラフィナイト様、お手を失礼致します」
私の背後に控えていたセーラが、ナハト様の指示に俊敏に対応致します。セーラは実家から連れてきた私の専属なのですが、今やナハト様の忠実な従者のようです。
ナハト様に見送られながらセーラに支えられて私は広間を退出し、二階にある私室へ戻りました。
シルフィード公爵邸は中庭のあるロの字型をしていて、正門に面している方が客間や応接室等の社交を加味した役割のある部屋が集まっています。
家族が過ごすプライベートな部屋は裏門に面していて、リヒトの私室や夫婦の続き部屋があります。邸の主人の部屋は本来、高い階層にあるものですが、私の体調も考慮されて現在は二階にあるのです。階段の上り下りが辛い時がまだありますから、この配慮は正直助かっております。
「セラフィナイト様、湯浴みの準備が整いました」
「ありがとう」
私室に戻って直ぐ、セーラの指示で控えていたメイド達が私の着ていたドレスを脱がして行きます。脱がされている間に、違うメイドがお風呂の用意をしてくれます。
私専用のバスルームでメイド達に磨きあげられ、入浴後のマッサージも施され、何故か初夜に着るようなナイトドレスを着せられました。
初夜の時は純白スケスケな、ナイトドレスでしたが、今夜は艶冶な黒のスケスケナイトドレスです。
「…セーラ、質問があるのだけれど」
「はい、セラフィナイト様」
スケスケナイトドレスを着て、ソファに座って入浴後のハーブティーを飲みながら、傍らに控えているセーラを見ました。
「この後、リヒトのお部屋へ行く予定だと思っていたのだけれど、私の勘違いだったかしら」
「いいえ、その予定で間違いございません。しかし、ロビンソンから、リヒト様は既に就寝されたとの報告がきております」
ロビンソンは現在リヒトの専属従者です。元はナハト様の専属従者の一人で、私より二歳年齢が上なだけの若者ですが、ナハト様の従者をしていただけあってかなりの切れ者です。
無人島に漂流してもサバイバルを楽しんでタフに過ごせそうな雰囲気のワイルドマッチョ系ですが、目が優しくて性格の良さが滲み出ていて、リヒトも彼にとても懐いております。
「まぁ、そうなの?私がいなくても…寝られたのね…」
ナハト様と同じで、お胸の好きなリヒトは、眠る時は私のお胸が無いと寝られない子だったのですが、一歳になると急にお兄さんになってしまったのかしら。何だか寂しいです。
「リヒトの様子を見に行きたいけれど…行かない方が良いのかしら…」
スケスケナイトドレスで息子の寝顔を見に行くのは流石に恥ずかしいです。
「その方が良いかと」
セーラが頷いたのと同じタイミングで夫婦の寝室に繋がる扉がノックされ、ナハト様が扉を開けて入って来ました。
セーラやメイド達はまるで忍者のように素早く気配を消して部屋から出て行きます。その様子で、私はやっとスケスケナイトドレスの意味を理解しました。
「ナハト様…」
「セラ」
裏地にシルフィード公爵家当主の証しである深紅をあしらった深い青のマントに同色の詰め襟風の上衣に、黒のズボンとブーツ。腰に巻かれた帯は艶のある漆黒で、主役であるリヒトを意識して華美にならない色味を纏った今日のナハト様も素敵で、視界に入るだけで恋心が震えます。
「…パーティーは」
普段は理知的で冷静なナハト様の双眸が、今は酷く熱を持って私の姿を捕らえております。そう、捕らわれた獲物になったような気分になるほど、ナハト様の視線が熱いです。
「主役が抜けたんだ。早々に締めた。後は残っている者達で好きにやるだろう」
飲み会を早々に抜けてあげる上司のようなナハト様の言葉に、思わず口角が上がってしまいました。サラリーマン風のナハト様も、想像したらとても素敵です。
「セラ?」
ナハト様はソファから軽々と私を横に抱き上げながら、訝しげに私の目を覗き込みます。熱を宿したままの淡青色の瞳が私の劣情を刺激致します。
実はリヒトを出産してから、私達は一度も営んでおりませんでした。
今は回復しておりますが、やはり私の体で出産に挑むのは簡単ではなかったからです。
出産自体は想像よりもすんなり終えられたのですが、問題は後産からの悪露でした。中々回復せず、寝たきりが暫く続きました。その中で自分の母乳で育てる事に固執した私がいたので、夫であり主治医でもあるナハト様は頭が痛かった筈です。
振り返ればホルモンに支配されていたのだと思うのですが、リヒトを出産してから母性愛が大爆発して、最愛の夫であるナハト様を蔑ろにしてしまっていたように思います。
「…綺麗だ」
フワリと夫婦の広い寝台の上に下ろされた私は、瞬きする間も無く押し倒され、ナハト様に上から全身を視姦されました。
確かに今の私は妖艶で美しいのだと思います。だって、黒のスケスケです。母乳育児のため、以前より更に豊かになったお胸は仰向けになっても横に流れず、お胸の先端は吸われて色味が少し濃くなっていやらしい色になりました。相変わらずの華奢グラマーです。腰が出産したからか、少し張ってより女性らしいフォルムになり、その肢体を黒のスケスケが覆っているのです。しかも、紐パンツも黒のスケスケです。髪と同じ白金の薄い草むらがチラリズムです。
視線が指のように私の体を愛撫していきます。
唇から顎先を伝い、首筋から鎖骨に視線が這い、スケスケナイトドレスを既に尖りきった私のお胸の先端が押し上げ、微かな染みを作っています。
なんて事でしょう。迂闊でした。まだ母乳が出るのですから、刺激に反応して衣服を濡らす事を失念しておりました。
「あ…」
私は慌ててお胸を手で隠そうとしましたが、ナハト様が私の両手首を私の頭の上に手で押さえ付けてしまわれました。
「隠すな」
「あ、駄目…っ」
じわじわとお胸から溢れてくる白い液体を、ナハト様は衣服越しに舐め取り、口に咥えると強く吸い付いてきました。吸われた瞬間、私の体に信じられない感覚が起きました。
「あ、あ、あぁ……っ」
体がビクビクと痙攣し、下半身からも透明な液体が吹き出して呼吸を忘れました。
「…っ…はっ…セラっ」
珍しく興奮も露に、ナハト様は私のお胸を手と口で蹂躙しました。
指で先端を捩り、掌全体を使って揉みしだかれました。口では歯を使って先端を刺激した後は、たっぷりと舌で舐め上げ、口全体を使って吸われたり噛んだりされました。
私の母乳とナハト様の唾液で濡れに濡れたスケスケナイトドレスが肌に張り付き、違う快感が生まれて益々お胸の先端が硬く張り詰めて痛いくらいです。
「…一年待った…もうこれ以上は許さない。セラフィナイト、貴女は私の妻だ。この胸を私以外の者が触れる事は許さない」
ナハト様はスケスケナイトドレスのお胸のリボンを解き、既に何度も絶頂を感じている私の体から剥ぎ取るように全て脱がせた後は、私の腰を跨いだ状態で膝立ちになりました。
快感に痺れた私は、体を弛緩させた状態でご自分の衣服を脱ぐナハト様をうっとりと見上げました。
ああ、素敵。筋肉の綺麗な隆起。引き締まった筋肉の筋と滑らかな肌。美しいナハト様のお顔とは違う、欲望に濡れて光る赤黒い怒張。
「ナハト様…」
ナハト様の漲った男性を見た瞬間、既に濡れてグチョグチョな私の花園から新たな蜜が溢れ出ました。
思わず揺らした私の腰の動きに気付いたナハト様が、ご自分の怒張を手で握ってニヤリと笑いました。
ああ、素敵です、ナハト様。酷薄そうな美貌で、そんなに悪そうに笑うなんて。
「ナハト様…私の全ては、ナハト様の物です」
体が熱くて、早くナハト様の欲望を体の奥で感じたくて堪りません。けれど、出産してから閉ざしたままの花園なので、ナハト様の大きくて長い男性を受け入れられるか不安になりました。久しぶりの閨事のせいか、ナハト様の男性は今までで一番の膨張率です。
「…ナハト様」
私はふにゃふにゃの体を起こして、目の前のナハト様の怒張にそっと口付けを落としました。
「…っ」
ビクンとナハト様の怒張が動き、愛しさが溢れて止まりません。
私は自分のお胸を持ち、ナハト様のお顔を見ながら怒張に舌を這わせました。誘うように、恥ずかしさを堪えていやらしく舐めます。
「…セラ…」
私の意図を察したナハト様が腰を少し落として下さいました。ああ、嬉しいです。やっとお胸を使ってナハト様を愛して差し上げられます。
「ん…熱い…」
「ああ…セラ…」
ナハト様の漲った男性を私のお胸で挟み、ゆっくりと擦ります。ローションを使用した方が良いそうですが、今はそのような余裕はございません。ただ、ナハト様の怒張の先端から溢れ出る粘液と私の汗で、摩擦してもそれほどお肌にダメージは無いのでこのままナハト様を愛したいと思います。
汗で濡れているからか、肌にナハト様の怒張が吸い付き、不思議な感触です。お胸の弾力をものともしないナハト様の硬さに、私のお腹の奥が反応します。
「はっ…セラ…っ…手で固定していてくれ」
「ん…っ…はい…こうですか…?」
お胸の外側の両サイドを手で支えてナハト様の欲望を挟み込みます。ナハト様はしなやかに腰を突き上げ、動きを速くしました。ああ、凄いです、熱いです。
「セラっ…はっ…出すよっ…」
「ああっ、ん、はい、下さいっ」
グジュグジュと胸元でいやらしい音がします。ナハト様の熱いミルクは、一滴たりとも無駄にいたしません。
「セラ…っ!?あっ、くっっ!」
「んむ、んん…っ」
お胸で挟み込んでいたナハト様の怒張を口に咥え、喉を締めてナハト様の欲望の飛沫を受け止めます。私の予想外の行動に、ナハト様は困惑しながらも快感に抗えずに私の後頭部を手で支えて引き寄せます。
「んぐっ、ん、ん…」
喉の奥が開いて粘度の濃いミルクが断続的に流れ込み、目を閉じて必死に飲み込みます。ああ、何て幸せなのでしょう。
「セラ…セラっ…愛してるっ」
「え、あ、ああっ!」
私の恍惚とした表情に、ナハト様のヤル気スイッチが入ってしまったようです。ナハト様らしからぬ性急な動きで、私はナハト様の漲った男性に花園を侵されました。
「あ、あ、ん、んふっ、ああっ」
一度達して、少し落ち着いたナハト様の怒張は、私を傷つける事無く最奥まで辿り着きました。自分でも分かりますが、私の中はまさに蛸壺のようです。襞という襞がナハト様に絡み付き、ぎゅうぎゅうと締め付けているのが分かります。
前戯など必要無いほど準備万端になっていた私の花園は蜜に溢れて、ナハト様の漲った男性を溶かしてしまいそうなほどに熟していました。
まるでラフレシアのようです。
犯されているかのように激しく抱かれている私ですが、私の方がナハト様を食んで溶かしているのです。
ヤンデレ属性のナハト様ですが、私こそが実はヤンデレなのかもしれません。それとも、夫婦は似てくるものだと申しますし、つまりは似た者夫婦と云う事なのでしょうか。これを慣用句で何と申しましたか。ああ、そうです、破れ鍋に綴じ蓋です。
「奥が好きだろ?ほら、セラっ」
「ああっ、好きぃ、そこが、あ、あ、奥ぅ!」
久しぶりの夫婦の営みは夜通し続き、朝日が登っても私達の営みは終わりませんでした。
ああ…ナハト様、愛しています。愛していますが、そろそろ限界なのです。お願いします、もう終わりにして下さいませぇ。
妊婦特有の所謂マタニティーブルーに陥り、ナハト様の不貞を疑って離婚覚悟の里帰りをした私は、そのおかげでナハト様が病む要因その一を知る事となりました。
家族の重すぎる愛情故に、セラフィナイト本人には秘匿された結婚の条件は、ヤンデレ気質のナハト様を病む方向へと進めさせるには十分な要因のように思えます。
もしかしたら、家族は最初から私とナハト様の婚姻は白い結婚にして、死ぬまで添い遂げさせるつもりなどなかったのかもしれません。それは何故なのか。はい、それはやはり、セラフィナイトが病弱過ぎたからではないでしょうか。
ゲームの設定では、詳しい年数は記されていませんでしたが、恐らくナハト様はセラフィナイトを手離したくなくて、三年のタイムリミットが有ったが故に様々な要因が重なってセラフィナイトを監禁凌辱する事になってしまったのかもしれません。
うふふふ。だがしかし、今の私は新生セラフィナイトなのです。設定上のセラフィナイトと違って、スーパー病弱から、ただの病弱にメタモルフォーゼしているのです。
設定上のセラフィナイトが閨に対してどれ程の積極性をみせていたのかは存じ上げませんが、新生セラフィナイトとなった私はナハト様限定ですが閨事大好きな小悪魔セラフィナイトとなっているのです。
清らかなまま死んだ前世とは違い、中々に充実した夫婦の営みライフを送っております。
場所も時間も、私達の熱い愛の前には障害にはなりません。いや、勿論、恥ずかしいのですよ?でも、ナハト様に求められて拒める私ではないのです。
妊娠中にも、挿入を含めた営みもあった程なのですから、如何に私達の夫婦関係が円満かお分かり頂けるかと思います。
そう、円満なのです!
私は勝ちを確信致しました。この設定からの卒業、でございます。うふふふ。何故なら、私、この度無事出産を終えまして、一児の母となりました。
何故卒業なのかと申しますと、生まれてきたのが男の子だったからです。
設定上では、ナハト様とセラフィナイトとの間に生まれたのはフローライトただ一人のみです。フローライトは女の子です。もうそれだけで、設定とは全く違っております。結婚三ヶ月で妊娠した事がそもそも既に設定から外れているのですから、最初の子が男の子であっても不思議ではないのです。
しかし、姉弟を作る気満々でしたが、まさか最初の子が男の子になるとは予想外でした。ですが、また次の子作りを頑張れば良いのですから、何の問題もございません。いつか必ず貴女にも逢える筈ですから、それまで待っていて下さいね、フローライト。
「リヒト・シャッツ・シルフィード」
「ハイ」
「この度、無事に一歳の生誕を迎えた褒美に、シュテアネ侯爵領をお前に生前譲渡する許可証が届けられた。今日、この日より、お前はリヒト・シャッツ・シュテアネ・シルフィードとなった。心して励むように」
「ハイ…シルフィード公爵閣下…ワタクシ、リヒト・シャッツ…シュテアネ侯爵領ヲ、ツツシンデハイリョウイタシマス」
いや~ん。うちの子凄くないですか?
お腹の中にいた時から賢いとは思っていましたが、本日一歳のお誕生日を迎えたばかりですのに、きちんと儀式に必要な言葉を暗記して、たった今やりきりました。
ナハト様は、ご自分も前シルフィード公爵から生前譲渡されたシュテアネ侯爵領を、自分の息子であるリヒトに生前譲渡致しました。
生前譲渡の申請は、最終的にはゾンネ王国の国王の許可が必要になるため、許可証が発行されるのに最短でも一年かかります。つまり、ナハト様は、お腹の中の子が男の子と分かった瞬間から、手続きしていたと云うわけです。
邸の祈りの間にて譲渡の儀式を行っている間は、父と子と云うより、当主とその後継者候補と云う立場で接する必要があり、例え一歳の幼子でも、領地を拝領するならば一人前に儀式に挑まなければならないと云う建前がございます。ええ、建前です。でも、うちの子は賢いので、建前ではなく、きちんとやりきりました。感涙ものです。涙が止まりません。
「セラ!?」
「おかあさま!?」
祈りの間の見届け人達が座る席で泣いている私に気付いたナハト様とリヒトは、儀式が終わった瞬間にいつもの二人に戻って、慌てて駆け付けて来てくれます。
艶々の濃い金の髪。理知的な淡青色の瞳。通った鼻梁に薄い唇。ナハト様の遺伝子を濃く受け継いだリヒトは、私が知らない幼かった頃のナハト様を見ているかのように、とにかくそっくりな美幼児です。二人が並ぶと美しさ二倍どころか、相乗効果でキラキラ度増し増しで鼻血が出そうです。
「ナハト様…リヒト…ありがとうございます…」
泣きながら拝む私を、二人は抱き締めてくれます。二人は心配してくれてありがとうと云う意味だと思ってくれたようです。私は二人の尊い存在に感謝の念が絶えず、暫く泣きながら拝み続けました。
そんな私達家族を家臣や使用人達は温かく見守ってくれて、譲渡の儀式は無事終了しました。
その後は大広間に移動して、一歳のお誕生日パーティーの始まりです。本来ならば、リヒトは公爵家の子息なのですから、高位貴族の家門の皆々様を招いてお披露目を兼ねた社交パーティーを催さねばならないのですが、ナハト様はヤンデレ属性を発揮して内輪だけのアットホームパーティーにするように指示を出されて本日に至りました。
パーティーの出席者は私達家族と私の実家であるプランツ候補家の親しい家門、そしてナハト様に忠誠を誓った家臣の面々とその家門の一部の者達です。
お父様とお兄様はご招待しておりません。だって、私に内緒で裏で画策してナハト様を追い詰めていたのですから、暫くはお手紙に返事もしてあげない事にしています。少しは反省して貰わなければなりません。
リヒトはまだ一歳ですから、側近候補の子供達を集める事もせず、本当に高位貴族としては信じられない程小規模なパーティーになりました。それはやはり、原因は私です。ナハト様は、私を親しくない方々に見せたくないからです。
相変わらず私は公爵邸の敷地から出ない生活を送っています。実は、まだ一度も領地を視察した事さえないのです。貴族の淑女たる者、慈善事業も行わなければならないのですが、孤児院や神殿にさえ行った事がございません。ナハト様が許可なさいません。まぁ、私としては変なフラグを立てたくはございませんので、引きこもる事は嬉しいのですが、公爵夫人として、そして母親としてはちょっとどうなの?と思わなくもないので、ちょっとしたジレンマを抱えていたりはします。
そんな私ですから、領民からの評判は悪いと思いますでしょ?それがそうでもないから驚きなのです。ここまで徹底して外に出ないと、本当に病弱なのだと思って頂けているようで、そんな中で結婚して直ぐに後継者候補を宿して無事出産を果たしたと云う事で、天晴れと誉められて中々の高評価らしいのです。
しかも、質素倹約で、無駄遣いせず、本人は現れずとも大量の刺繍物や縫い物等の寄付を定期的に行っていると云う実績で、私の評価は着々と上がっているそうです。
余り評価を上げすぎてしまうと、王族の方々のお耳に噂が届き、いらない興味を持たれてしまう恐れがございますので、気をつけなくてはなりません。
「…おかあさま」
パーティーに疲れたリヒトが、座る私の膝にしがみついて来ました。しっかりしていますが、まだ一歳になったばかりの幼子です。どうやら、そろそろオネムのようです。
本来、貴族の母親は実子を自分の母乳で育てず、乳母に養育を任せるのが主流ですが、前世の記憶がある私、新生セラフィナイトとしては、自分の手で育てたくて我が儘を通しました。
眠くなると私の母乳を欲しがるリヒトが、今も私に抱っこをせがみ両手を伸ばしてきます。
ああ、何て可愛いのでしょうか。
「リヒト…」
私がリヒトを抱き上げようと手を伸ばそうとした瞬間、ナハト様が何処からともなく現れて、リヒトを軽々と抱き上げてしまわれました。
「リヒト、お父様とした約束は覚えているか?」
「……ハイ…」
優しいけれど、断固とした態度のナハト様に気圧されたのか、リヒトは泣きそうな顔をしながらも健気に頷きました。
「ポリー」
「はい」
ナハト様が私の専属侍女の一人であるポリーを呼びました。ポリーはセーラが一から教育を施した侍女の一人です。赤みの強い髪と、明るい茶色のドングリ目が可愛らしくて、そばかすがチャームポイントの小柄なポリーは、準男爵家の次女でしたが傭兵出身の男性と恋に落ち、若くして子持ちになったシングルマザーです。夫とは死別してしまったのですが、残された一人息子を育てるために前向きに生きる働き者です。
どうやらナハト様はポリーをリヒトの世話係りになさるおつもりのようで、私から引き離す時に最近よくポリーを使います。
「さあ、お坊っちゃま、奥様はまだお仕事が終わっておりませんから、先にお部屋へ戻って寝台の中でお待ちしましょう」
ポリーに抱き上げられ、リヒトは縋るような目で私を見ました。
「おかあさま…」
「先に寝台で待っていて下さいね。お仕事が終わったら、貴方の元に直ぐ向かいますから」
可愛らしいリヒトの縋るような目に胸がキュンキュンしてしまいます。
まだ母乳育児を止めていないので、リヒトの顔を見れば母乳をあげたくて胸が張ってきてしまいました。
「…ハイ…」
リヒトは泣きそうな顔のまま渋々頷き、大人しくポリーに運ばれて大広間を後にしました。まだ夕方に差し掛かった時刻ですが、リヒトはまだ幼く、しかも今日は大変な儀式をやりきったのですから、早く休ませてあげなければなりません。
正直、私もいつもより大勢の方々と接したため、疲労が濃くなってきています。
悪阻が落ち着いてから再開したトレーニングのおかげで、なんとか出産に耐えられるギリギリの体力を維持してきましたが、乳母に頼らず母乳育児を選択実行した私の疲労度はかなりのモノとなっております。リヒトが生まれてから二度程、発作を起こしてナハト様のお薬に助けられました。
ナハト様からは、母乳育児を早々に止めるように言われてきましたが、泣き落としでその都度お許しをもぎ取りながらの日々でした。
前世の記憶があるからなのか、自分の子を自分の手で育てる事に固執している私に、ナハト様を含めた周囲の方々は理解に苦しむ事があるようですが、これだけは譲れません。
まかり間違って、リヒトがフローライトの代わりに悪役令息になる事がないように、時に厳しく時に誰よりも愛情深く接しなければならないのです。母の愛は海より深いのです。愛を知る人は、自分にも他人にも優しく出来るのです。
前世も今世も、私には愛情を注いで下さる家族がおりました。何も与えられず、貰うばかりの人生でしたが、だからこそ今の私は与えられる限りの私の全てを私の愛する方々に与えたいのです。
「セラ、貴女も部屋へ戻りなさい」
ナハト様が私に手を差し出して下さいます。
「…けれど、パーティーはこれからなのでは?今日くらいは私も、ナハト様の妻として社交を頑張りたいのですが…」
ナハト様の手に手を重ねた私に、ナハト様は優しい微笑みを送って下さいました。
「十分頑張ってくれた。これ以上は貴女の体に障る。社交よりも、セラには私の妻として頑張って貰わなければならない重要な事がある」
妻として社交より重要なお仕事とは何かしら?家政の管理は既にそれなりの成果は出しているし、出産もしたから、後は社交くらいしか思い浮かばないのだけれど。
もしかしたら、私の能力をもっと効率的に使う努力が必要と云う事かしら?
そうよね。確かに頑張らないとならないわ。
この世界は創造神ヴェルトラウムが創った世界で、ゲームはカオスと云う闇によって世界の秩序が乱れた事で様々な問題が起こる。その問題を解決するのが神の力を体に宿した、依り代と呼ばれる所謂勇者的な立ち位置のヒーローで、そのヒーローが力を使えるように協力するのがヒロインの、闇の乙女なのです。
ヒーローはヒロインが選んだ恋の相手で、最初はまだ自分の力に目覚めていない。互いの秘めた力が目覚めるには、様々なイベントをクリアして経験値を上げなければならない仕組みになっていた。
私が生きる今の時間軸は、ゲーム開始前の所謂過去。カオスと呼ばれる闇が濃くなる前の世界なのだけれど、最近徐々に秩序が乱れる予兆が現れ始めている。
今も私達の耳に不穏な話が届いてくる。
このようなアットホームなパーティー内でも、やれあそこの領地は干ばつが続いているとか、方やそちらの領地は雨が降り続いて洪水被害が酷いとか、ゾンネ王国だけではなく、他国の災害の話も聞こえてくる。
今のところシルフィード領は自然災害に見舞われておりませんが、備えあれば憂いなしです。私の能力を使って、農産物の育成を効率的にするお手伝いをしなければ。
幸いにも食物自給率は、ナハト様が始めた試験農場の成果が出て飛躍的に増加しております。けれど、完全自給にはまだ届かず、更なる努力が必要なところです。
設定的には、近い未来に今より更に世界規模で様々な問題が起こる筈ですから、今のうちに出来る備えはしておかなければなりません。
「…ナハト様、私、頑張りますね!」
むん、と拳を握ってみせた私を見たナハト様が、優しい苦笑を浮かべられました。
あら?苦笑?私、検討違いな事を言ったのかしら。
「是非、頑張って欲しい。セーラ、分かっているな?」
「はい。お任せ下さい。さ、セラフィナイト様、お手を失礼致します」
私の背後に控えていたセーラが、ナハト様の指示に俊敏に対応致します。セーラは実家から連れてきた私の専属なのですが、今やナハト様の忠実な従者のようです。
ナハト様に見送られながらセーラに支えられて私は広間を退出し、二階にある私室へ戻りました。
シルフィード公爵邸は中庭のあるロの字型をしていて、正門に面している方が客間や応接室等の社交を加味した役割のある部屋が集まっています。
家族が過ごすプライベートな部屋は裏門に面していて、リヒトの私室や夫婦の続き部屋があります。邸の主人の部屋は本来、高い階層にあるものですが、私の体調も考慮されて現在は二階にあるのです。階段の上り下りが辛い時がまだありますから、この配慮は正直助かっております。
「セラフィナイト様、湯浴みの準備が整いました」
「ありがとう」
私室に戻って直ぐ、セーラの指示で控えていたメイド達が私の着ていたドレスを脱がして行きます。脱がされている間に、違うメイドがお風呂の用意をしてくれます。
私専用のバスルームでメイド達に磨きあげられ、入浴後のマッサージも施され、何故か初夜に着るようなナイトドレスを着せられました。
初夜の時は純白スケスケな、ナイトドレスでしたが、今夜は艶冶な黒のスケスケナイトドレスです。
「…セーラ、質問があるのだけれど」
「はい、セラフィナイト様」
スケスケナイトドレスを着て、ソファに座って入浴後のハーブティーを飲みながら、傍らに控えているセーラを見ました。
「この後、リヒトのお部屋へ行く予定だと思っていたのだけれど、私の勘違いだったかしら」
「いいえ、その予定で間違いございません。しかし、ロビンソンから、リヒト様は既に就寝されたとの報告がきております」
ロビンソンは現在リヒトの専属従者です。元はナハト様の専属従者の一人で、私より二歳年齢が上なだけの若者ですが、ナハト様の従者をしていただけあってかなりの切れ者です。
無人島に漂流してもサバイバルを楽しんでタフに過ごせそうな雰囲気のワイルドマッチョ系ですが、目が優しくて性格の良さが滲み出ていて、リヒトも彼にとても懐いております。
「まぁ、そうなの?私がいなくても…寝られたのね…」
ナハト様と同じで、お胸の好きなリヒトは、眠る時は私のお胸が無いと寝られない子だったのですが、一歳になると急にお兄さんになってしまったのかしら。何だか寂しいです。
「リヒトの様子を見に行きたいけれど…行かない方が良いのかしら…」
スケスケナイトドレスで息子の寝顔を見に行くのは流石に恥ずかしいです。
「その方が良いかと」
セーラが頷いたのと同じタイミングで夫婦の寝室に繋がる扉がノックされ、ナハト様が扉を開けて入って来ました。
セーラやメイド達はまるで忍者のように素早く気配を消して部屋から出て行きます。その様子で、私はやっとスケスケナイトドレスの意味を理解しました。
「ナハト様…」
「セラ」
裏地にシルフィード公爵家当主の証しである深紅をあしらった深い青のマントに同色の詰め襟風の上衣に、黒のズボンとブーツ。腰に巻かれた帯は艶のある漆黒で、主役であるリヒトを意識して華美にならない色味を纏った今日のナハト様も素敵で、視界に入るだけで恋心が震えます。
「…パーティーは」
普段は理知的で冷静なナハト様の双眸が、今は酷く熱を持って私の姿を捕らえております。そう、捕らわれた獲物になったような気分になるほど、ナハト様の視線が熱いです。
「主役が抜けたんだ。早々に締めた。後は残っている者達で好きにやるだろう」
飲み会を早々に抜けてあげる上司のようなナハト様の言葉に、思わず口角が上がってしまいました。サラリーマン風のナハト様も、想像したらとても素敵です。
「セラ?」
ナハト様はソファから軽々と私を横に抱き上げながら、訝しげに私の目を覗き込みます。熱を宿したままの淡青色の瞳が私の劣情を刺激致します。
実はリヒトを出産してから、私達は一度も営んでおりませんでした。
今は回復しておりますが、やはり私の体で出産に挑むのは簡単ではなかったからです。
出産自体は想像よりもすんなり終えられたのですが、問題は後産からの悪露でした。中々回復せず、寝たきりが暫く続きました。その中で自分の母乳で育てる事に固執した私がいたので、夫であり主治医でもあるナハト様は頭が痛かった筈です。
振り返ればホルモンに支配されていたのだと思うのですが、リヒトを出産してから母性愛が大爆発して、最愛の夫であるナハト様を蔑ろにしてしまっていたように思います。
「…綺麗だ」
フワリと夫婦の広い寝台の上に下ろされた私は、瞬きする間も無く押し倒され、ナハト様に上から全身を視姦されました。
確かに今の私は妖艶で美しいのだと思います。だって、黒のスケスケです。母乳育児のため、以前より更に豊かになったお胸は仰向けになっても横に流れず、お胸の先端は吸われて色味が少し濃くなっていやらしい色になりました。相変わらずの華奢グラマーです。腰が出産したからか、少し張ってより女性らしいフォルムになり、その肢体を黒のスケスケが覆っているのです。しかも、紐パンツも黒のスケスケです。髪と同じ白金の薄い草むらがチラリズムです。
視線が指のように私の体を愛撫していきます。
唇から顎先を伝い、首筋から鎖骨に視線が這い、スケスケナイトドレスを既に尖りきった私のお胸の先端が押し上げ、微かな染みを作っています。
なんて事でしょう。迂闊でした。まだ母乳が出るのですから、刺激に反応して衣服を濡らす事を失念しておりました。
「あ…」
私は慌ててお胸を手で隠そうとしましたが、ナハト様が私の両手首を私の頭の上に手で押さえ付けてしまわれました。
「隠すな」
「あ、駄目…っ」
じわじわとお胸から溢れてくる白い液体を、ナハト様は衣服越しに舐め取り、口に咥えると強く吸い付いてきました。吸われた瞬間、私の体に信じられない感覚が起きました。
「あ、あ、あぁ……っ」
体がビクビクと痙攣し、下半身からも透明な液体が吹き出して呼吸を忘れました。
「…っ…はっ…セラっ」
珍しく興奮も露に、ナハト様は私のお胸を手と口で蹂躙しました。
指で先端を捩り、掌全体を使って揉みしだかれました。口では歯を使って先端を刺激した後は、たっぷりと舌で舐め上げ、口全体を使って吸われたり噛んだりされました。
私の母乳とナハト様の唾液で濡れに濡れたスケスケナイトドレスが肌に張り付き、違う快感が生まれて益々お胸の先端が硬く張り詰めて痛いくらいです。
「…一年待った…もうこれ以上は許さない。セラフィナイト、貴女は私の妻だ。この胸を私以外の者が触れる事は許さない」
ナハト様はスケスケナイトドレスのお胸のリボンを解き、既に何度も絶頂を感じている私の体から剥ぎ取るように全て脱がせた後は、私の腰を跨いだ状態で膝立ちになりました。
快感に痺れた私は、体を弛緩させた状態でご自分の衣服を脱ぐナハト様をうっとりと見上げました。
ああ、素敵。筋肉の綺麗な隆起。引き締まった筋肉の筋と滑らかな肌。美しいナハト様のお顔とは違う、欲望に濡れて光る赤黒い怒張。
「ナハト様…」
ナハト様の漲った男性を見た瞬間、既に濡れてグチョグチョな私の花園から新たな蜜が溢れ出ました。
思わず揺らした私の腰の動きに気付いたナハト様が、ご自分の怒張を手で握ってニヤリと笑いました。
ああ、素敵です、ナハト様。酷薄そうな美貌で、そんなに悪そうに笑うなんて。
「ナハト様…私の全ては、ナハト様の物です」
体が熱くて、早くナハト様の欲望を体の奥で感じたくて堪りません。けれど、出産してから閉ざしたままの花園なので、ナハト様の大きくて長い男性を受け入れられるか不安になりました。久しぶりの閨事のせいか、ナハト様の男性は今までで一番の膨張率です。
「…ナハト様」
私はふにゃふにゃの体を起こして、目の前のナハト様の怒張にそっと口付けを落としました。
「…っ」
ビクンとナハト様の怒張が動き、愛しさが溢れて止まりません。
私は自分のお胸を持ち、ナハト様のお顔を見ながら怒張に舌を這わせました。誘うように、恥ずかしさを堪えていやらしく舐めます。
「…セラ…」
私の意図を察したナハト様が腰を少し落として下さいました。ああ、嬉しいです。やっとお胸を使ってナハト様を愛して差し上げられます。
「ん…熱い…」
「ああ…セラ…」
ナハト様の漲った男性を私のお胸で挟み、ゆっくりと擦ります。ローションを使用した方が良いそうですが、今はそのような余裕はございません。ただ、ナハト様の怒張の先端から溢れ出る粘液と私の汗で、摩擦してもそれほどお肌にダメージは無いのでこのままナハト様を愛したいと思います。
汗で濡れているからか、肌にナハト様の怒張が吸い付き、不思議な感触です。お胸の弾力をものともしないナハト様の硬さに、私のお腹の奥が反応します。
「はっ…セラ…っ…手で固定していてくれ」
「ん…っ…はい…こうですか…?」
お胸の外側の両サイドを手で支えてナハト様の欲望を挟み込みます。ナハト様はしなやかに腰を突き上げ、動きを速くしました。ああ、凄いです、熱いです。
「セラっ…はっ…出すよっ…」
「ああっ、ん、はい、下さいっ」
グジュグジュと胸元でいやらしい音がします。ナハト様の熱いミルクは、一滴たりとも無駄にいたしません。
「セラ…っ!?あっ、くっっ!」
「んむ、んん…っ」
お胸で挟み込んでいたナハト様の怒張を口に咥え、喉を締めてナハト様の欲望の飛沫を受け止めます。私の予想外の行動に、ナハト様は困惑しながらも快感に抗えずに私の後頭部を手で支えて引き寄せます。
「んぐっ、ん、ん…」
喉の奥が開いて粘度の濃いミルクが断続的に流れ込み、目を閉じて必死に飲み込みます。ああ、何て幸せなのでしょう。
「セラ…セラっ…愛してるっ」
「え、あ、ああっ!」
私の恍惚とした表情に、ナハト様のヤル気スイッチが入ってしまったようです。ナハト様らしからぬ性急な動きで、私はナハト様の漲った男性に花園を侵されました。
「あ、あ、ん、んふっ、ああっ」
一度達して、少し落ち着いたナハト様の怒張は、私を傷つける事無く最奥まで辿り着きました。自分でも分かりますが、私の中はまさに蛸壺のようです。襞という襞がナハト様に絡み付き、ぎゅうぎゅうと締め付けているのが分かります。
前戯など必要無いほど準備万端になっていた私の花園は蜜に溢れて、ナハト様の漲った男性を溶かしてしまいそうなほどに熟していました。
まるでラフレシアのようです。
犯されているかのように激しく抱かれている私ですが、私の方がナハト様を食んで溶かしているのです。
ヤンデレ属性のナハト様ですが、私こそが実はヤンデレなのかもしれません。それとも、夫婦は似てくるものだと申しますし、つまりは似た者夫婦と云う事なのでしょうか。これを慣用句で何と申しましたか。ああ、そうです、破れ鍋に綴じ蓋です。
「奥が好きだろ?ほら、セラっ」
「ああっ、好きぃ、そこが、あ、あ、奥ぅ!」
久しぶりの夫婦の営みは夜通し続き、朝日が登っても私達の営みは終わりませんでした。
ああ…ナハト様、愛しています。愛していますが、そろそろ限界なのです。お願いします、もう終わりにして下さいませぇ。
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