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第1話「事のはじまり」
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一日に木の実1つにあり付ければマシという状況に今の僕達は置かれている。何も、昔はこんなことはなかった。あの戦争が起きるまでは。
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僕達が生まれる前、世界情勢は非常に不安定な動きをしていた。過激な思想を持つ指導者に囚われた国、自国のみを優先し続け周りには全く目をやらない国、革命思想にすがる大勢の貧民を抱えた国などがそれぞれ暴発し、最終的に大規模な核戦争に至った。その戦後には何も残らず、皮肉にも国境すら無くなったらしい。
どうにかしないと、そんな風に思った人は大勢いただろう。しかし、戦後間もないこの世界には多発する食料強奪等のため気をゆっくり休められるような場所も無く皆疲弊しきっていたためにイタズラに時間だけが過ぎていった。
そんな状況下でも勇敢に行動する者達が各地域に極小数いた。そのもの達は各地域の同志と残された少ない機械とエネルギーを使用して連絡を取り合い、各地域ごとに1人の人間を18歳まで満足に育てられるだけの食料を集めた。そしてそのもの達を忘れられた島、南セルチネル島へ向かわせ、農業などを習得させ、この状況を将来的に打開しようとはかった。
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その1人が僕である。名はアダム。人類を再び繁栄させてくれという願いの元、そう名付けられたらしい。今日各地域を代表する18歳の少年少女達が集い、南セルチネル島へ出発する。
「名前、被ってないといいなぁ」
人類を代表するような者に付けられる名前なんだからアダム、だなんて、1人くらいは同じ名前のような人がいそうなものだ、等とくだらない悩みを抱えつつ他地域の集合を待った。
しばらくして遠くにこちらに向かって歩いてくる人間を2人視認できた。やせ細った男と少女だ。サバイバルと言うとやはり男性が向いているのでは、という疑問を一瞬抱いたが簡単に解決した。
なるほど、この少女は新たな人類の母となる訳だ。やせ細った男の方は僕の地域の案内人だった。
凛々しくもどこか淋しげに見える小さな少女は到着するやいなや、メイと名乗った。
イブ、ではないのかなどというくだらない失望を覚えながらメイと握手を交わす。
「全員揃ったみたいだな」
僕の地域の長老が2人を見てそう言った。僕は少し焦り疑問を投げかけた。
「地域っていうのはたった2つしか無かったのかい?」
僕の問いに対して長老が口を開く
「元々は3人が集まる予定だった。しかし、もうひとつの地域が強奪の被害を受けてしまってな、全員抵抗したために殺されてしまった」
どちらにしろ3人しかいなかったという事実に半ば絶望したが、ここまで満足に育ててもらった身の上、絶望の言葉を述べる訳にはいかず歯を食いしばり覚悟を決めた。メイもどうやら意表をつかれたらしく、目が泳いでいた。そんな混乱を察したのか長老がそのことを考えさせまいと説明をはじめる
「南センチネル島は未知の危険で溢れている。で、あるからここにある最低限の物資を船に積んでいくと、、」
そう言いかけたところで長老の頭は宙を舞った。強奪者達が訪れたのだ。動揺する僕とメイをやせ細った男が足早に船に乗せ南セルチネル島へと出航させた。自らは時間稼ぎのため陸地に積まれた物資から銃を取り出し強奪者に向けて抵抗を始めた。恐らく元々軍人だったであろう男は予想以上の孤軍奮闘ぶりを発揮した。僕達が遠い沖合に出たところでその男が倒れるのが見えた。
メイはあまりの出来事に先程より混乱しているようだった。
「大丈夫、俺たちなら出来るさ」
そんな言葉をかけることが出来たのはあのやせ細った男のお陰であろう。彼は船に僕らを乗せるその時、僕の耳元で、あとは頼んだぞ、という遺言を残していった。彼に勇猛な姿を見せられて僕が弱気になる訳にはいけない。そんな気がしたんだ。しかし事実は僕も右足の震えを止められずにいた。
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僕達が生まれる前、世界情勢は非常に不安定な動きをしていた。過激な思想を持つ指導者に囚われた国、自国のみを優先し続け周りには全く目をやらない国、革命思想にすがる大勢の貧民を抱えた国などがそれぞれ暴発し、最終的に大規模な核戦争に至った。その戦後には何も残らず、皮肉にも国境すら無くなったらしい。
どうにかしないと、そんな風に思った人は大勢いただろう。しかし、戦後間もないこの世界には多発する食料強奪等のため気をゆっくり休められるような場所も無く皆疲弊しきっていたためにイタズラに時間だけが過ぎていった。
そんな状況下でも勇敢に行動する者達が各地域に極小数いた。そのもの達は各地域の同志と残された少ない機械とエネルギーを使用して連絡を取り合い、各地域ごとに1人の人間を18歳まで満足に育てられるだけの食料を集めた。そしてそのもの達を忘れられた島、南セルチネル島へ向かわせ、農業などを習得させ、この状況を将来的に打開しようとはかった。
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その1人が僕である。名はアダム。人類を再び繁栄させてくれという願いの元、そう名付けられたらしい。今日各地域を代表する18歳の少年少女達が集い、南セルチネル島へ出発する。
「名前、被ってないといいなぁ」
人類を代表するような者に付けられる名前なんだからアダム、だなんて、1人くらいは同じ名前のような人がいそうなものだ、等とくだらない悩みを抱えつつ他地域の集合を待った。
しばらくして遠くにこちらに向かって歩いてくる人間を2人視認できた。やせ細った男と少女だ。サバイバルと言うとやはり男性が向いているのでは、という疑問を一瞬抱いたが簡単に解決した。
なるほど、この少女は新たな人類の母となる訳だ。やせ細った男の方は僕の地域の案内人だった。
凛々しくもどこか淋しげに見える小さな少女は到着するやいなや、メイと名乗った。
イブ、ではないのかなどというくだらない失望を覚えながらメイと握手を交わす。
「全員揃ったみたいだな」
僕の地域の長老が2人を見てそう言った。僕は少し焦り疑問を投げかけた。
「地域っていうのはたった2つしか無かったのかい?」
僕の問いに対して長老が口を開く
「元々は3人が集まる予定だった。しかし、もうひとつの地域が強奪の被害を受けてしまってな、全員抵抗したために殺されてしまった」
どちらにしろ3人しかいなかったという事実に半ば絶望したが、ここまで満足に育ててもらった身の上、絶望の言葉を述べる訳にはいかず歯を食いしばり覚悟を決めた。メイもどうやら意表をつかれたらしく、目が泳いでいた。そんな混乱を察したのか長老がそのことを考えさせまいと説明をはじめる
「南センチネル島は未知の危険で溢れている。で、あるからここにある最低限の物資を船に積んでいくと、、」
そう言いかけたところで長老の頭は宙を舞った。強奪者達が訪れたのだ。動揺する僕とメイをやせ細った男が足早に船に乗せ南セルチネル島へと出航させた。自らは時間稼ぎのため陸地に積まれた物資から銃を取り出し強奪者に向けて抵抗を始めた。恐らく元々軍人だったであろう男は予想以上の孤軍奮闘ぶりを発揮した。僕達が遠い沖合に出たところでその男が倒れるのが見えた。
メイはあまりの出来事に先程より混乱しているようだった。
「大丈夫、俺たちなら出来るさ」
そんな言葉をかけることが出来たのはあのやせ細った男のお陰であろう。彼は船に僕らを乗せるその時、僕の耳元で、あとは頼んだぞ、という遺言を残していった。彼に勇猛な姿を見せられて僕が弱気になる訳にはいけない。そんな気がしたんだ。しかし事実は僕も右足の震えを止められずにいた。
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