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飛べない動物と武官
4 ノーニス③ その他現生生物とすべての共通の祖先を意味する。
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玉座の間の広間では炎と雷が錯綜していた。
小一小隊の賊とウィラビィが激しく力をぶつかり合わせている。
多勢の所為か決定的な打撃を与えられていないようだ。
舞台には指を翳している男がいた。
私は広間の手前で給仕の背中を掴むと、しずく状に上部を開いた柱の裏に引き倒した。叫ぼうとする彼女の口元を塞ぐと、強い力で押しのけられる。二人重なって倒れた状態で彼女の視線が舞台上を捉えて動かない。
「どうして彼があそこに……?」
舞台上の男は広間と地下を代わる代わる伺っている。親指を折った片手を地下室に向けて。今にも地下室を燃やし尽くそうとしている。
「あの男が新しい管理者が来る前にここを燃やした奴だね?」
給仕の瞳が舞い上がる火の粉の光を移して揺れた。
「彼が言ったのよ。カラ城の書物を守ろうって。歴史的に貴重だから、選定書官に力として使われてしまうって。自分なら柱を燃やして地下室の扉を隠すことができるからと提案してきたの。一緒に働いていたから信用していたのに」
「彼の目的は別にあったようだね」
ここにいろ、と小さく言って柱の陰から躍り出た。目の前の男の肩を後ろから突き刺す。ピックを引き抜いて相手を引き倒した目の前で光が弾ける。顔を庇って屈んだ瞬間、舞台上が火を噴いた。遅れて黒煙が階段から吹き上がる。ばらばらと地下に潜った賊も戻って来た。地下の書庫は燃やされたか。賊が広場に集まってくる。多勢に無勢だ。ここで私が使えるのは7の力。元の質を強化する火水の力を使おうか。いや、前みたいに自分ごと吹っ飛んだところを狙われるだけだ。
どうする?。
逡巡していると、広場の向こう側の柱の陰からすっ、と人影が現れた。
炎を纏ったようなドレスを着こなす長身。
火の粉と共に巻き上がる長い金髪。
赤く照らし出された幾何学模様の背景は彼女を際立たせた。
見とれた私の前で腕が伸ばされる。
6本の指。
轟音と共に光の柱が降りかかる。
視界の端から端まで光が弾けた。
これほどの規模の雷の力を見たのは始めてのことだった。
私は引き倒した男ごと柱の陰に隠れたまま、動くことが出来ない。
広場の賊達もだろう。
ウィラビィの攻撃は過たず敵を射た。
彼らの体が煙と火花に覆われた地面に沈んでいく。
この場に立っているのは一人だけ――ウィラビィだけだった。
煙の切れ間に彼女の美しい姿が確認できる。
嫌な汗が背中を伝った。
なぜ、今になってこれだけの力を解放したのだろう?
書庫が燃やされたこのタイミングで、
まるですでに無用だとでも言うように彼女は賊を薙ぎ払った。
私の横には私に肩を刺されて引きずられた為に電撃を免れた男が転がっていたが、信じられないと言った様子で顔を上げていた。
「なんで、あいつが…俺たちを?」
私の嫌な予感を肯定するような細い声が聞こえる。人を遠ざける為に交戦しているように見せるだけじゃなかったのか、と男の声が続いた。
どくん、どくんと自分の鼓動が耳元でする。
このまま、ここに隠れていても次の攻撃が来れば終わりだ。
私はゆっくりと立ち上がった。
足元で細かな電流が弾けるのも気にならない。
彼女から目を離せない。
ここに来た賊を指揮して、
私を裏切ったのか、
「ウィラビィ」
私は、どんな顔をしてその名前を呼んだのだろうか。彼女は私を見ると、その柳眉を少し寄せて困ったような表情をした。そして、普段なら口づけしたくなるような口元に慈愛を浮かべて笑んだ。
ドンッ!
轟音と閃光が走った。
私は顔を庇っていたが、体に衝撃はない。
その稲妻は横で転がった男に命中したようだ。
「言ったでしょう?
身の回りには気を付けるようにって」
彼女の声は、喧噪と電流が音を立てる中でぞっとする程、クリアに耳に届いた。
ゆっくりと一歩、近づいてくる。
こんな時でさえ、その所作は優美で、
ただの武官ではないということを教えて来る。
「ウィラビィ、君は初めからここの書物を燃やすことが目的だったのか?
その為に…」
「その為に貴女に近づいたんじゃないわ、リンネ。
カラ城の書庫を燃やすこと、そんな事は当然の予定よ。
貴女がここへ来ても、来なくてもね」
彼女が妖艶に笑う。
頭の中でこれまでの出来事が駆け巡った。
様々な施設からエナンティオに古文書が集められている。その後施設の経営は民間に委託される。言葉の祝福を贈ることが可能な力のある書物を保護したら、施設には用がないからだ。そして、なぜ緊急で書物が集められたか。
「ここ最近の図書館や書庫への放火事件は、君が計画したものなのか」
「やっと、気がついたのね。
地方ごとに有志を集めては書庫を襲わせたのよ。たくさんの書物を粉砕してきたわ。
…彼らは喜んで手伝ってくれた。政府に力を集めない為とか、歴史的本質を損なわない為とか、もっともな教義を説いたら簡単にね。
貴女の言う、エナンティオの回し者に奪われたくない者が私と言うことかしら」
「……書物はまだまだ世界中に点在する。どうしてそんなことをするのか分からないが、仲間を殲滅するには早かったんじゃないか?」
私は一向に収まらない動悸を抱えたまま、彼女を見つめた。その黒い瞳に赤い火花が映り込むのを感じる。彼女はそれを愛しいものを見るように目を細めた。
「こう考えたらどう?
私には消してしまいたい書物があって、片っ端から燃やしていたら、やっと見つかったと」
私は声を発しようとして、それが難しいことに気づく。口の中がからからに乾いている。
「それは、私が持っている書のことか?」
やっと出た声は掠れていた。
「そう、ジブリ―の書と言ったかしら。
アヴィスを解き明かした英知の結晶、と呼ばれているとか。
貴女は重要な部分を手帳に書き写していて、原書を持ち歩いていないことは分かってる。どこに隠したのか気になるところだけど、貴女は白状したりはしないでしょうし、貴女を消してしまえば当分の間はあの書の力を使う者はいなくなるんじゃないと思っているの」
「…その為に私に近づいた?
ずいぶん手が込んでるな。わざわざ私の恋人にまでなって、最後に裏切るなんてね」
私は皮肉を乗せた溜息を大げさに吐いた。彼女と過ごした数か月を思い返し、最期がこれかと思うと本当は喚き散らしたい。そんなことを考えていて、彼女の不敵な様子が変わったことに気づくのが遅れた。濃い茶色の瞳はちりちりと床のタイルを燃やす小さな炎を映して、深紅に近くなっていた。明らかな怒りを灯しているのに、声だけは優雅に響く。
「すべての秩序と美はどこから生じるのかしら?」
「さあ、星の運行の狭間かな?」
わたしは投げやりに答える。とたん、彼女の瞳が燃え上がったように感じた。
「まあ、教科書にでも載っているのかしら」
彼女は一つ嘲笑を返して、声の調子を落とした。
「貴女は理知的な官吏ね。選定書官としても優秀だわ。でも、私が欲しいのはそれじゃない。あなた自身の言葉はどこにあるの?」
彼女が、力でなくその言葉で私を射抜いた。
私はただただ驚いて目を見開く。
私自身の言葉。
それは私が探しまわっているものの本質と言えるものだ。私が口にする数々の言葉は他の誰かが語った薄っぺらいもの。選定書官としていくらでもくれてやろうと思っていた。他人の言葉や恋人では私が欲しいものに届かない。
彼女はそれを知ってしまうほど、私の近くにいたのだろうか。たったの数か月で見抜いてしまうほど、彼女も私に心を寄せていた?
私は明らかに揺れる瞳を向けた。
しかし、ウィラビィは形の良い唇を歪めて、裏切りですって?、と呟いたかと思うと、怒りを込めた情愛的な声で言い放った。
「貴女の心の大部分を占めているのが私以外だなんて許せないことよ」
彼女の腕が伸ばされる。
私はとっさに指を握り込んだ。
バンッッッ!
爆音と同時、ウィラビィの足元の床が盛り上がったかと思うと大量の水が噴き出した。
小一小隊の賊とウィラビィが激しく力をぶつかり合わせている。
多勢の所為か決定的な打撃を与えられていないようだ。
舞台には指を翳している男がいた。
私は広間の手前で給仕の背中を掴むと、しずく状に上部を開いた柱の裏に引き倒した。叫ぼうとする彼女の口元を塞ぐと、強い力で押しのけられる。二人重なって倒れた状態で彼女の視線が舞台上を捉えて動かない。
「どうして彼があそこに……?」
舞台上の男は広間と地下を代わる代わる伺っている。親指を折った片手を地下室に向けて。今にも地下室を燃やし尽くそうとしている。
「あの男が新しい管理者が来る前にここを燃やした奴だね?」
給仕の瞳が舞い上がる火の粉の光を移して揺れた。
「彼が言ったのよ。カラ城の書物を守ろうって。歴史的に貴重だから、選定書官に力として使われてしまうって。自分なら柱を燃やして地下室の扉を隠すことができるからと提案してきたの。一緒に働いていたから信用していたのに」
「彼の目的は別にあったようだね」
ここにいろ、と小さく言って柱の陰から躍り出た。目の前の男の肩を後ろから突き刺す。ピックを引き抜いて相手を引き倒した目の前で光が弾ける。顔を庇って屈んだ瞬間、舞台上が火を噴いた。遅れて黒煙が階段から吹き上がる。ばらばらと地下に潜った賊も戻って来た。地下の書庫は燃やされたか。賊が広場に集まってくる。多勢に無勢だ。ここで私が使えるのは7の力。元の質を強化する火水の力を使おうか。いや、前みたいに自分ごと吹っ飛んだところを狙われるだけだ。
どうする?。
逡巡していると、広場の向こう側の柱の陰からすっ、と人影が現れた。
炎を纏ったようなドレスを着こなす長身。
火の粉と共に巻き上がる長い金髪。
赤く照らし出された幾何学模様の背景は彼女を際立たせた。
見とれた私の前で腕が伸ばされる。
6本の指。
轟音と共に光の柱が降りかかる。
視界の端から端まで光が弾けた。
これほどの規模の雷の力を見たのは始めてのことだった。
私は引き倒した男ごと柱の陰に隠れたまま、動くことが出来ない。
広場の賊達もだろう。
ウィラビィの攻撃は過たず敵を射た。
彼らの体が煙と火花に覆われた地面に沈んでいく。
この場に立っているのは一人だけ――ウィラビィだけだった。
煙の切れ間に彼女の美しい姿が確認できる。
嫌な汗が背中を伝った。
なぜ、今になってこれだけの力を解放したのだろう?
書庫が燃やされたこのタイミングで、
まるですでに無用だとでも言うように彼女は賊を薙ぎ払った。
私の横には私に肩を刺されて引きずられた為に電撃を免れた男が転がっていたが、信じられないと言った様子で顔を上げていた。
「なんで、あいつが…俺たちを?」
私の嫌な予感を肯定するような細い声が聞こえる。人を遠ざける為に交戦しているように見せるだけじゃなかったのか、と男の声が続いた。
どくん、どくんと自分の鼓動が耳元でする。
このまま、ここに隠れていても次の攻撃が来れば終わりだ。
私はゆっくりと立ち上がった。
足元で細かな電流が弾けるのも気にならない。
彼女から目を離せない。
ここに来た賊を指揮して、
私を裏切ったのか、
「ウィラビィ」
私は、どんな顔をしてその名前を呼んだのだろうか。彼女は私を見ると、その柳眉を少し寄せて困ったような表情をした。そして、普段なら口づけしたくなるような口元に慈愛を浮かべて笑んだ。
ドンッ!
轟音と閃光が走った。
私は顔を庇っていたが、体に衝撃はない。
その稲妻は横で転がった男に命中したようだ。
「言ったでしょう?
身の回りには気を付けるようにって」
彼女の声は、喧噪と電流が音を立てる中でぞっとする程、クリアに耳に届いた。
ゆっくりと一歩、近づいてくる。
こんな時でさえ、その所作は優美で、
ただの武官ではないということを教えて来る。
「ウィラビィ、君は初めからここの書物を燃やすことが目的だったのか?
その為に…」
「その為に貴女に近づいたんじゃないわ、リンネ。
カラ城の書庫を燃やすこと、そんな事は当然の予定よ。
貴女がここへ来ても、来なくてもね」
彼女が妖艶に笑う。
頭の中でこれまでの出来事が駆け巡った。
様々な施設からエナンティオに古文書が集められている。その後施設の経営は民間に委託される。言葉の祝福を贈ることが可能な力のある書物を保護したら、施設には用がないからだ。そして、なぜ緊急で書物が集められたか。
「ここ最近の図書館や書庫への放火事件は、君が計画したものなのか」
「やっと、気がついたのね。
地方ごとに有志を集めては書庫を襲わせたのよ。たくさんの書物を粉砕してきたわ。
…彼らは喜んで手伝ってくれた。政府に力を集めない為とか、歴史的本質を損なわない為とか、もっともな教義を説いたら簡単にね。
貴女の言う、エナンティオの回し者に奪われたくない者が私と言うことかしら」
「……書物はまだまだ世界中に点在する。どうしてそんなことをするのか分からないが、仲間を殲滅するには早かったんじゃないか?」
私は一向に収まらない動悸を抱えたまま、彼女を見つめた。その黒い瞳に赤い火花が映り込むのを感じる。彼女はそれを愛しいものを見るように目を細めた。
「こう考えたらどう?
私には消してしまいたい書物があって、片っ端から燃やしていたら、やっと見つかったと」
私は声を発しようとして、それが難しいことに気づく。口の中がからからに乾いている。
「それは、私が持っている書のことか?」
やっと出た声は掠れていた。
「そう、ジブリ―の書と言ったかしら。
アヴィスを解き明かした英知の結晶、と呼ばれているとか。
貴女は重要な部分を手帳に書き写していて、原書を持ち歩いていないことは分かってる。どこに隠したのか気になるところだけど、貴女は白状したりはしないでしょうし、貴女を消してしまえば当分の間はあの書の力を使う者はいなくなるんじゃないと思っているの」
「…その為に私に近づいた?
ずいぶん手が込んでるな。わざわざ私の恋人にまでなって、最後に裏切るなんてね」
私は皮肉を乗せた溜息を大げさに吐いた。彼女と過ごした数か月を思い返し、最期がこれかと思うと本当は喚き散らしたい。そんなことを考えていて、彼女の不敵な様子が変わったことに気づくのが遅れた。濃い茶色の瞳はちりちりと床のタイルを燃やす小さな炎を映して、深紅に近くなっていた。明らかな怒りを灯しているのに、声だけは優雅に響く。
「すべての秩序と美はどこから生じるのかしら?」
「さあ、星の運行の狭間かな?」
わたしは投げやりに答える。とたん、彼女の瞳が燃え上がったように感じた。
「まあ、教科書にでも載っているのかしら」
彼女は一つ嘲笑を返して、声の調子を落とした。
「貴女は理知的な官吏ね。選定書官としても優秀だわ。でも、私が欲しいのはそれじゃない。あなた自身の言葉はどこにあるの?」
彼女が、力でなくその言葉で私を射抜いた。
私はただただ驚いて目を見開く。
私自身の言葉。
それは私が探しまわっているものの本質と言えるものだ。私が口にする数々の言葉は他の誰かが語った薄っぺらいもの。選定書官としていくらでもくれてやろうと思っていた。他人の言葉や恋人では私が欲しいものに届かない。
彼女はそれを知ってしまうほど、私の近くにいたのだろうか。たったの数か月で見抜いてしまうほど、彼女も私に心を寄せていた?
私は明らかに揺れる瞳を向けた。
しかし、ウィラビィは形の良い唇を歪めて、裏切りですって?、と呟いたかと思うと、怒りを込めた情愛的な声で言い放った。
「貴女の心の大部分を占めているのが私以外だなんて許せないことよ」
彼女の腕が伸ばされる。
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