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神様っぽい人に謝罪された
しおりを挟む「――すまぬ。こちらの手違いだった」
あーまだ夢の中かぁ。
今度は白い人が出てきたよ。
「夢ではないが、夢でもある」
は? 禅問答か?
「其方の夢の領域に干渉している。だから夢ではあるが、通常の夢とは違う」
ん? どういう事?
「……今の状態を説明しよう」
あ、スルーされた。まあいいけど。
「其方は地球世界で過労死した。そしてこのエリューシュカに転生する予定であった」
過労死!? は? え? わたし、死んだって、いつ!?
「其方の時間軸では昨日の深夜だ」
うそー!!!
いやー!! ちょっと待ってぇ!!!
あの汚部屋で死体発見とか!?
やばい物なかったかな。あの散らかった部屋以上にまずい物ってないか!?
うわぁ、もうちょっと片付けておけばよかったー!
「……死んだことより、部屋の心配か?」
だってぇ、変死だとニュースになったりするじゃない。
どんな状況で死んでいたかとか知られるんだよ? ネットならもうある事ない事面白おかしくネタにされるんだよ?
死んだ後まで貶されるって悲しいわよ。
「死んだ二日後、訪ねて来た同僚に発見された。部屋が散らかっている事は話題にはなっていない。
『一人暮らしの女性が自宅で死んでいるのが発見された。死因は司法解剖の結果“過労死”である事が判明した』――という報道がされた。因みに過労死した原因の職場は批難の的だ」
あははは。
まあ、ブラックと言えばブラックだったけど、わたしも渡りに船って感じだったから、一概には向こうの責任って言えないんだよねー。
残業時間に休日出勤はすごかったけど、手当はそこそこ出てたし。
「あちらでは次々と凶悪事件が続いて、其方のニュースはすぐにかき消えた」
むう。それはそれで寂しいもんですねぇ。
その程度の人間だったって事ですもんねぇ。
「まあ、それほど悲観する事もあるまい。ほとんどの者が何事もなさずに死んでいくのだから」
うぐっ、無情。
「さて、本来其方は赤子として転生するはずだった」
あ、ばっさり切り替えたわね。いいですよ。悲しい話はそれくらいで。
「しかし、こちらの手違いで、腹の赤子ではなく、母体に憑依してしまった」
……は?
「母体、リリシアは一時心神喪失、仮死状態に陥っていた。その時に転生処理が行われた為に、手違いで其方が母体にそのまま憑依してしまったのだ。そして、リリシアは腹の中の赤子に入れ替わった」
はぁぁぁ!?!?
「一度肉体に宿ると、死ぬまで変更が出来ない。すまぬが、リリシアとして生きてくれ。
詫びとして『ギフト』を授けた。先ほどのように、“真に願った事が実現する”能力だ。
更に衰弱していたので肉体を強化しておいた。後はこの世界の知識と、今までのリリシアの情報を与えよう。それでどうにか生きていって欲しい」
ええええええ!?!?
待ってぇ、色々待ってぇ。
なんで別の世界の妊婦になってるのぉ!?
輪廻転生って同じ世界じゃないの!?
これって所謂異世界転生! じゃなく、転移でもなく憑依ってぇぇぇ!?
「この世界に呼び寄せたのは、輪廻する魂が少ないからだ。魂が溢れている地球世界の管理者と協定を結び、一定の期間、一定数の魂をエリューシュカに召喚したのだ。其方はその内の一つ」
確かに人口が増えていってるもんねぇ。未来の食糧問題とか話題になってたっけ。
魂の数が減ると、人口も減っていくって事かしらね。
「そうだ。出産数が減って行き、緩やかに人口減少していくだろう。
こちらに転生した魂は、浄化処理されて、前世の世界の記憶は無くなっている。しかし其方は憑依。前世の記憶はそのまま残る事になった」
なるほどー。
「このような接触は本来ないのだが、そうした事情ゆえ夢の領域で干渉した。もう会う機会はないがギフトを活用し、健やかな子を産み育ててくれ」
えー? 赤の他人の子供を産むの?
男性経験もないのに妊婦だし! ハードル高いよぉ!
「時間切れだ。ではな」
待ってー! 貴方って神様ですかぁ!?
「こちらの世界の魂の管理者だ」
――それを最後に白い人は消えてしまった。
言い逃げしたな?
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