familyー幸せな花婿ー

夏瀬檸檬

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家族が1人消えた日

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第1話
家族が1人消えた日

全速力で家に向かって走る。
今日も暑い日だ。
太陽が勢いよく光って目が少し痛む。
家が見えてきた。
急いで鍵を開けて、二階にあるリビングに向かう。バタンッ扉を勢いよく開ける。
「茉莉乃っただいま~!」
ソファにもたれながら本を読む茉莉乃が私の方を見て「おかえり」と小さな声で言う。顔の表情は全く変わらない。
私は松谷 雪乃。
15歳で普通の公立中学に通う普通の女の子だ。
成績はまぁまぁいい。運動もまぁまぁ。
普通の多い中学生だ。
茉莉乃は私の妹だ。同じ中学の一年生。つまり13歳だ。全く笑わない。全く表情を変えない子。昔はとてもよく喋る明るい子だった。
だが、あの日を境に茉莉乃はこんな子になってしまった。
「ねぇ。茉莉乃??プリン買ってきたの!美味しい『ホワイトスウィート』っていう砂糖を中心にしている最近有名なお店で買ってきたのよ。さぁお皿出してー。」
「プリンじゃなくてパパを返してよ」
「茉莉乃…」
そう。つい4ヶ月前パパが死んだ。
事故だった。相手が居眠り運転という最低な事故だった。パパは、私たちの好きなお寿司を買って急いで車で帰るところだった。あと少しあと、2キロだったのに。あと、2キロでパパは事故にあった。でも、その犯人が急いで救急車を呼んだら助かったのに。ひき逃げして……あのあとすぐ犯人は捕まったのに。あと、5分早ければ助かったのに。なんで…
「茉莉乃。最近学校で孤立してるんだって?部活の後輩の。ほら、茉莉乃の同じクラスの山中実咲ちゃんよ。あの子が、教えてくれたの。なんで孤立してるの?」
「知らない、パパがいれば別だもん。」
「茉莉乃!わがままはやめてよ!」
私はプリンをそのまま冷蔵庫にしまうことにした。
ガチャ
扉が開く音がした。
「ただいまー!」
「ママ。早かったのね。」
「今日は早番だったからよ。」
そう言ってママは、冷蔵庫を開けてポットを取り出す。
「あら?プリンじゃない。どうしたの?これ」
「さっき買ってきたの。食べる?」
「わぁー!食べる食べるー!」
ママは手を洗いに行った。
茉莉乃は、相変わらず表情1つ変えずに本を読んでいる。こんな、明るいママと私と明るかった茉莉乃そして優しくて静かなパパ。
その、4人の頃がいかに幸せであったか思い知らされる。
明るく見せてはいるものの内心辛いだろうママと、笑わなくなった妹茉莉乃。この2人を支えていかなければならない。と思うのだ。
「今日は、グラタンよ。手を洗ってきなさい」
茉莉乃はまだ本を読んでいる。
私は部屋から出て洗面所に向かう。。
手を洗ってリビングに戻ろうとするところで、
茉莉乃とすれ違う。
「茉莉乃。ママ待ってるから早く洗ってきなよ」
「わかってる」

「おはよー!」
私の机の前に同じクラスの親友の牧田 莉央と、黒岩 南が、挨拶に来た。
「おはよう。莉央今日も元気だね」
牧田 莉央は、元気でいつも明るくて、そう。まるで昔の茉莉乃のような子。
黒岩 南は、優しくて、大人っぽい。クールなところもある。そんな子だ。
「ねー!聞いてよぉ~!今日、英語の小テストだよ?ほんとーにやだなぁ。まぁ、優等生の南は心配いらないんでしょうけど。きっと、雪乃も追試にならないでしょうし?ああー!また私だけ追試部屋かぁー。。」
「あははっ。莉央も勉強すればできるんじゃん?だから、ひたすら頑張りなよー」
「うわぁ。なにそれ!南ったらいやみぃ?」
「違うよーあははっ。ねー。雪乃最近口数少なくない?どしたの?」
「…え?そうかな??……まぁ、茉莉乃のことでね、。」
「茉莉乃って妹ちゃんだよね。」
莉央が聞いてくる。
「うん。」
「茉莉乃ちゃんって一年だよね。お父さんのことで笑わなくなっちゃったよね。」
今度は南。
「うん。茉莉乃…前はもっと笑う子だったのにね。南はあったことあるよね。莉央はないか」
「ねぇ。」
「なに?莉央。」
「今日お家言っちゃダメ?」
「いいよ。茉莉乃に会いたいの?」
「会ってみたいの。私の笑顔を見れば明るくなるよ。あはは」
莉央はにこやかに笑った。

「莉央ー。帰ろー」
「うん!」
「テニス部は?いいの?」
「休部届け出してきた。」
「そう。南は??」
私は莉央から南に顔を向きなおした。
「さっき、一緒に出しに行ったじゃん。忘れっぽいなぁ」
私と南は同じ部活。
医学部。名前の通り医学について学ぶ部活。
珍しいでしょ?
「じゃ、いこっか!」
「あの!」
聞こえなれたこの声。
「実咲ちゃん!!どうしたの?三年の教室まで来て」
「あの。茉莉乃のことなんですけど……。最近茉莉乃無視されてるんです。というか、いじめられているんです。」
「え?」
「あ、いえ。みんながいきなりいじめ始めたわけじゃなくて、」
「どういうこと?」

ガチャッ
扉をこれまでにないような激しい開け方をした。
「茉莉乃!」
さすがに、茉莉乃も私の心中を察したかのように本を読む手を止める。こんなこと茉莉乃はしたことがなかった。でも、私の心穏やかではないことを察したとあれば当たり前のこと。
「お姉ちゃん。え。友達連れてきたの?」
「茉莉乃!」
私は勢いよく手を大きく上げた。
そして、茉莉乃の左頬を殴った。
「あんたって子は!なんでこうなの?!なんで…そんなひどいことができるの!」
「雪乃!なにやってんの。妹叩いちゃダメだよ」
そう言って莉央が私の手を優しく取った。
「ごめん。莉央。いまは、あなたの言うことさえも聞けない。」
「お姉ちゃん。どうしたの?」
私は、妹が恐ろしい。
こんなことができるなんて…
「茉莉乃。あんた。実咲ちゃんを含めた前いた親友全員に嫌がらせしてたんだって?」
茉莉乃はハッとした顔になる。本が床に落ちた。顔が青ざめている。茉莉乃は爪を噛み始めた。「それは。」
「実咲ちゃん達の家にゴミを投げ込んだり、家に落書きしたり、実咲ちゃん達の荷物を燃やしたっていうのも聞いた。なにを考えてるの!!あんた。これ犯罪なのよ!。実咲ちゃん達は、
家に落書きをされたら、両親が帰ってくる前に協力して消して、ゴミは全て自分の部屋に置いてあるそうよ。だから、これまで家には何にも連絡がなかった。でも、ずっと嫌がらせをされるのに辛くなりすぎたのか、精神的に実咲ちゃん達は目の下にクマもできて……リストカットの後もあったわ。あなた。もし、私に実咲ちゃんが相談に来なかったら実咲ちゃん達はもしかしたら死んじゃってたかもしれないのよ?!その意味わかるでしょ?!13歳なんだから!!そのことを知った他のクラスの子からいじめられ始めたそうね。。あんたなんて子はとことん潰れちゃえばいいのよ!」
私は、本や、ティッシュ箱を茉莉乃にぶつけた。
「でてけ!この家から出て行け!!でていけぇー!わぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…」
私は大泣きだった。
涙が止まらなくて、辛くて悲しくて、そして、茉莉乃のことが憎くてたまらなかった。
その次の瞬間。
茉莉乃はいなくなった。
投げつけられたものが、ひっそりとそこにあるだけ。
茉莉乃はいなくなってしまった。
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